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5章 私が目指す聖女とは
86.父の本音
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聖女の泉の時と同じように泉も光柱も輝き始め、空から光りが降りそそぐ。
何度見ても幻想的な光景だ。
「確かツヨシと言う少年はセイカのことが好きなんだろう?」
「ああ。それがどうかしたか?」
「それじゃぁどうして二人は付き合わない? あたしと君と違ってなんの障害もないのだろう?」
そんな光景などスピカには興味がないのか、なぜか星歌と太くんの話になる。首を傾げ二人の気持ちを本気で理解してないのは、いかにも自分に正直なスピカらしい。
もしスピカが魔王の娘じゃなかったら、スピカから告白されていたのだろうか? しかも結構早い段階で。
そう思うと今さらながらなんか照れる。
「あの二人は友達以上の恋人未満の関係だから、もし振られてその関係が崩れるぐらいなら現状維持で良いと思ってるんだよ」
「揃いも揃って臆病なんだな」
「でも星歌は太くんの洗脳を解いたら告白すると言ってるから、俺達はただ温かく見守ろう」
訳を話してもスピカには理解出来ず、冷めた口調でバッサリ言われるだけ。
確実に何かちょっかい出しそうな気配だったため、星歌に告白予定であることを告げちょっかいを出さないよう釘を刺しておく。
こう言うのはデリケートな問題は助言を求められるまで、そっと見守るのが親の役目だと俺は思う。良いと思って助言したら余計に話がややっこしくなる可能性がある。
「言われなくてもそうするつもりだ。セイカにも同じことを言われたよ。大体そう言う余計なちょっかいを出すのは、ヨハンかリュウノスケの専売特許だろう?」
「アハハ……」
ふて腐れてムキになり否定しにくいことを言われてしまい、何も言えなくなった俺は苦笑する。
確かにあの二人には度々ちょっかいを出され振り回されもしたのだが、それは俺達の時のだけでセイカと太くんのことは俺同様温かく見守っているはずだ。
まぁ龍ノ介は他でちょっかい出して大事になりかけるも、星歌の方が大人になりどうにか元の鞘に収まりはしたが。
そう言えばヨハンはすっかり頼りになるお姉さんのポジションを獲得している。
「? ひょっとして何かやらかしたのか?」
「龍ノ介が星歌に女たらしの本性を曝け出し激怒されたんだよ。地球は一夫一妻制で不倫や浮気は御法度だからな」
「自業自得だな。あたしにはそれでもいいが、リュウノスケにはさぞ行きにくい世の中だろう?」
「いいや。あいつ曰く結婚と婚約されしなければ、何股掛けようが問題ないと言っている。地球でも結構好き放題やってるよ」
以前龍ノ介に戻りたいかと聞いた時、笑いながらそんな答えが返ってきた。
最初は俺に気を使って答えたんじゃないかと思いもしたが、本当に龍ノ介は楽しくやっているようで心配する必要はなかった。
つい先日もトゥーランに残るかと聞いて見れば、即答で結婚したくないから残らないと言われた。
多夫多妻制でも結婚したくない理由
年老いたら恋愛感情がなくなる。その度イチイチ離婚するのが面倒。
ゲス過ぎる理由に、一発殴ったのは言うまでもない。
歳老いるのは自分も同じはずなのに、あのクソは一体何を考えているんだろうか?
…………。
…………。
スピカと離婚。
ついさっきまでは離婚と言う文字は俺には無縁だと思っていたのに、突然スピカから冷たく言い渡されてしまった。もちろんそれは俺体調を心配してのことで本気ではないと思う物の、それでもショックは大きく考えると怖ろしい。
「本当にリュウノスケはトゥーラン向きだな。……ん? セイヤ?」
「俺はスピカと離婚したくない」
「あ、そのことか。だったらこれ以上無理はしないでくれ。体調万全にしないといざと言う時、愛する者を護れないだろう?」
途端にスピカが愛しくて愛しくてたまらなくなりギュッと抱きしめ祈る思いで囁けば、ケロッとごもっともな答えが返ってきた後唇は塞がれる。今までと変わらぬスピカの甘い味。
そんなの言われなくても分かっている。分かっているが、それでも今のままでは忍に勝てる自信がまったくない。
やるべきことは休息ではなく、強いモンスターと戦い少しでも力をつける。俺なら無理をしても大丈夫。
そう思ってしまう自分がいる。その思い込みが駄目なんだろう。
「君の悪い所はなんでも一人で背負い込むとこだ。どうして仲間の協力を求めない?」
「そうだよな。龍ノ介にも同じことを言われたよ。今度はちゃんとする」
龍ノ介には言えた邪魔をされたくなかったとは、死んでも言えない。
真実を知られれば、雷が落ち嫌われ……やっぱり離婚される。
「約束だ。そして出来ることならツヨシに華を持たせろ。星歌を護る騎士は君ではなくツヨシの役目だろう?」
「なぁ? それは……まだ譲りたくはない……」
なぜかこれ以上ない追い打ちを掛けられ、激しい動揺を隠せず本音をさらす。手の震えが止まらず嫌な汗が流れ出す。
いずれ太くんに譲るつもりでいるとは言え、それは今ではなくこの件が終わり地球へ戻ってから。ここでの役目はまだ俺でありたい。格好いい父親の姿を見せたいんだ。
するとスピカは俺の懐でクスクスと笑う。
「やっぱり君にもそう言う醜い感情があるんだな。娘を異常にまでも熱愛している癖に、ツヨシをやたら押しているらしいじゃないか?」
「あるに決まってるだろう? 本当は星歌を誰にも渡したくないが、そんな事を言ったら星歌に嫌われる。太くんなら俺と星歌の仲を理解してくれているから良いと思っただけだ」
「なるほど。それは一理あるな」
どんなに俺の醜い本性を晒しても、スピカは理解してくれ受け止めてくれる。思いもよらぬ反応に少々戸惑うが、俺を理解しているスピカだからかも知れない。
それともただ呆れただけ?
そう言えば星歌が結婚しても同居すると意気込んで話したら、眉を曲げられ変な顔をされてた。反論はされなかったが、今思えば反対なのか?
「呆れたか?」
「いいや。あ、同居のことならセイカも乗り気のようだから、それならあたしも大賛成だよ」
こないだと違いにっこり笑顔で俺が知らない星歌の教えてくれる。スピカも賛成してくれたから不安はなくなり笑顔に変わった。
その時聞き覚えがある透き通った歌声が響き渡り蝶達は可憐に舞う。
どうやら聖女のみそぎが終わったようだ。
何度見ても幻想的な光景だ。
「確かツヨシと言う少年はセイカのことが好きなんだろう?」
「ああ。それがどうかしたか?」
「それじゃぁどうして二人は付き合わない? あたしと君と違ってなんの障害もないのだろう?」
そんな光景などスピカには興味がないのか、なぜか星歌と太くんの話になる。首を傾げ二人の気持ちを本気で理解してないのは、いかにも自分に正直なスピカらしい。
もしスピカが魔王の娘じゃなかったら、スピカから告白されていたのだろうか? しかも結構早い段階で。
そう思うと今さらながらなんか照れる。
「あの二人は友達以上の恋人未満の関係だから、もし振られてその関係が崩れるぐらいなら現状維持で良いと思ってるんだよ」
「揃いも揃って臆病なんだな」
「でも星歌は太くんの洗脳を解いたら告白すると言ってるから、俺達はただ温かく見守ろう」
訳を話してもスピカには理解出来ず、冷めた口調でバッサリ言われるだけ。
確実に何かちょっかい出しそうな気配だったため、星歌に告白予定であることを告げちょっかいを出さないよう釘を刺しておく。
こう言うのはデリケートな問題は助言を求められるまで、そっと見守るのが親の役目だと俺は思う。良いと思って助言したら余計に話がややっこしくなる可能性がある。
「言われなくてもそうするつもりだ。セイカにも同じことを言われたよ。大体そう言う余計なちょっかいを出すのは、ヨハンかリュウノスケの専売特許だろう?」
「アハハ……」
ふて腐れてムキになり否定しにくいことを言われてしまい、何も言えなくなった俺は苦笑する。
確かにあの二人には度々ちょっかいを出され振り回されもしたのだが、それは俺達の時のだけでセイカと太くんのことは俺同様温かく見守っているはずだ。
まぁ龍ノ介は他でちょっかい出して大事になりかけるも、星歌の方が大人になりどうにか元の鞘に収まりはしたが。
そう言えばヨハンはすっかり頼りになるお姉さんのポジションを獲得している。
「? ひょっとして何かやらかしたのか?」
「龍ノ介が星歌に女たらしの本性を曝け出し激怒されたんだよ。地球は一夫一妻制で不倫や浮気は御法度だからな」
「自業自得だな。あたしにはそれでもいいが、リュウノスケにはさぞ行きにくい世の中だろう?」
「いいや。あいつ曰く結婚と婚約されしなければ、何股掛けようが問題ないと言っている。地球でも結構好き放題やってるよ」
以前龍ノ介に戻りたいかと聞いた時、笑いながらそんな答えが返ってきた。
最初は俺に気を使って答えたんじゃないかと思いもしたが、本当に龍ノ介は楽しくやっているようで心配する必要はなかった。
つい先日もトゥーランに残るかと聞いて見れば、即答で結婚したくないから残らないと言われた。
多夫多妻制でも結婚したくない理由
年老いたら恋愛感情がなくなる。その度イチイチ離婚するのが面倒。
ゲス過ぎる理由に、一発殴ったのは言うまでもない。
歳老いるのは自分も同じはずなのに、あのクソは一体何を考えているんだろうか?
…………。
…………。
スピカと離婚。
ついさっきまでは離婚と言う文字は俺には無縁だと思っていたのに、突然スピカから冷たく言い渡されてしまった。もちろんそれは俺体調を心配してのことで本気ではないと思う物の、それでもショックは大きく考えると怖ろしい。
「本当にリュウノスケはトゥーラン向きだな。……ん? セイヤ?」
「俺はスピカと離婚したくない」
「あ、そのことか。だったらこれ以上無理はしないでくれ。体調万全にしないといざと言う時、愛する者を護れないだろう?」
途端にスピカが愛しくて愛しくてたまらなくなりギュッと抱きしめ祈る思いで囁けば、ケロッとごもっともな答えが返ってきた後唇は塞がれる。今までと変わらぬスピカの甘い味。
そんなの言われなくても分かっている。分かっているが、それでも今のままでは忍に勝てる自信がまったくない。
やるべきことは休息ではなく、強いモンスターと戦い少しでも力をつける。俺なら無理をしても大丈夫。
そう思ってしまう自分がいる。その思い込みが駄目なんだろう。
「君の悪い所はなんでも一人で背負い込むとこだ。どうして仲間の協力を求めない?」
「そうだよな。龍ノ介にも同じことを言われたよ。今度はちゃんとする」
龍ノ介には言えた邪魔をされたくなかったとは、死んでも言えない。
真実を知られれば、雷が落ち嫌われ……やっぱり離婚される。
「約束だ。そして出来ることならツヨシに華を持たせろ。星歌を護る騎士は君ではなくツヨシの役目だろう?」
「なぁ? それは……まだ譲りたくはない……」
なぜかこれ以上ない追い打ちを掛けられ、激しい動揺を隠せず本音をさらす。手の震えが止まらず嫌な汗が流れ出す。
いずれ太くんに譲るつもりでいるとは言え、それは今ではなくこの件が終わり地球へ戻ってから。ここでの役目はまだ俺でありたい。格好いい父親の姿を見せたいんだ。
するとスピカは俺の懐でクスクスと笑う。
「やっぱり君にもそう言う醜い感情があるんだな。娘を異常にまでも熱愛している癖に、ツヨシをやたら押しているらしいじゃないか?」
「あるに決まってるだろう? 本当は星歌を誰にも渡したくないが、そんな事を言ったら星歌に嫌われる。太くんなら俺と星歌の仲を理解してくれているから良いと思っただけだ」
「なるほど。それは一理あるな」
どんなに俺の醜い本性を晒しても、スピカは理解してくれ受け止めてくれる。思いもよらぬ反応に少々戸惑うが、俺を理解しているスピカだからかも知れない。
それともただ呆れただけ?
そう言えば星歌が結婚しても同居すると意気込んで話したら、眉を曲げられ変な顔をされてた。反論はされなかったが、今思えば反対なのか?
「呆れたか?」
「いいや。あ、同居のことならセイカも乗り気のようだから、それならあたしも大賛成だよ」
こないだと違いにっこり笑顔で俺が知らない星歌の教えてくれる。スピカも賛成してくれたから不安はなくなり笑顔に変わった。
その時聞き覚えがある透き通った歌声が響き渡り蝶達は可憐に舞う。
どうやら聖女のみそぎが終わったようだ。
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