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お兄ちゃんの幸せを守りたい

5.ラブラブ兄妹

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 私がこの世界に転生して三年の月日が流れた。
 いつの間にかこの体に適合してしまい、精神年齢は年相応の子供にまで退化。今では頭脳と記憶だけが転生前の物だったりする。
 ドジ女神の言うとおり努力すれば報われるのは本当で、初級魔法と学力は習得している。
 まだその事実を両親は知らなくて、秀才の兄に似て秀才になりつつあるとしか思われていない。
 それよりも習っている体操でジュニアゼプト(五歳児まで)部で三位に入賞したから、両親はそっち方面で期待されているのかも?
 さすがにこの小さい体では、どう頑張っても限界はあるらしい。

 お兄ちゃんと私の関係は良好で最早相思相愛。
 長期休暇で家にいる時は朝から晩まで一緒に過ごし、寮生活で会えない時は毎日長電話。まるで恋人みたいと両親に言われている。
 まだ異性として好きと言う気持ちも多少あるけれども、自慢のお兄ちゃんと思う方が断然大きい。


「アカツキちゃん、久しぶり。オレのこと覚えてる?」
「うん。お兄ちゃんのお友達。写真でもよく見るよ」

 約一年ぶりに会うマイケルの問いに、私は子供らしく元気に答えた。
 王子様キャラがさらに磨きがかかり、私がよく知るマイケル誕生までもう少しだろうか?

 今日からマイケルんちの別荘に子供達だけで過ごすことになっている。
 マイケルの妹とは初対面なんだけれど、パッと見ても該当する子はいなさそう。

 マイケルの妹、カリーナ。
 マイケルそっくりでフランス人形並みの美少女で、主人公の親友となる重要人物でもある。
 なにも知らない主人公を暖かくサポートしてくれる礼儀正しいしっかり者。
 私の四つ上だから、今は七歳か。

「あれ、カリーナちゃんは?」
「それを聞くか? 相変わらずデリカシーないよな」
「え、あごめん」

 どうやらトイレらしく真相を知ったお兄ちゃんは顔を真っ赤に染め小さくなる。
 お兄ちゃんはまだ初恋も知らない(と思う)まだまだ純な少年なんだから、仕方がないと言えば仕方がない。
 それでもって私も聞きそうになったから、お兄ちゃんと同罪。
 確かに少し考えたら予想は付いたはず。


「お待たせしました。タスクさん、お久しぶりです」
「あ、カリーナちゃん久しぶり。ずいぶん大きくなったね」

 ようやくカリーナらしい可愛らしい少女がこちらに駆け寄ってきて礼儀正しく挨拶をすれば、面識のあるお兄ちゃんは笑顔で受け答え。

 予想以上に可愛くて、これを期に仲良くなりたい。

「初めまして私はアカツキです。仲良して下さい」
「カリーナです。こちらこそ宜しくね!」

 自分から自己紹介をし頭を下げるとカリーナは嬉しそうに、私をムギュッと抱き締める。
 一発で、好感度大だ。

「お兄様、私アカツキちゃんを妹にしたいです」
「ダメだよ。アカツキは僕の最愛の妹なんだから」

 幼児の無邪気な愛らしさは、あらゆる意味で無敵です。






「アカツキ、気持ちいいね」
「うん。たくさんのイルカがいるよ」
「お兄様……。私もアカツキちゃんと遊びたいです」
「別荘ではオレとタスクは課題をすることになってるから、その時カリーナはアカツキちゃんと遊びなさい」
「わかりました」

 別荘に向かう船の先端でお兄ちゃんに抱かれイルカの大群を楽しんで鑑賞中、背後から聞こえる悲しそうなカリーナに今回の趣旨を話すマイケルの声。
 どうもお兄ちゃんはカリーナに私を取られると思い込んでしまい、さっきから私をガードしているように見える。
 まだまだお兄ちゃんは子供なのか、それとも極度のシスコンなのかは不明。
 とにかくカリーナが可哀そうだなとは思っていたんだけれど、そう言うことなら私も遊びたかったから良かった。

 たまに本当にこの人が私が愛したミステリアスでダークなタスクと同一人物なのかと疑ってしまうんだよね?
 今はお兄ちゃんとしては最高で大好きなんだけれど、異性としては優しすぎてどこか頼りないいい人。
 十年の月日が解決してくれるんだろうか?

「アカツキはお兄ちゃんの研究を手伝ってくれるよね?」
「お兄様~」
「タスク、 アカツキちゃんだって同性の友達も必要だと思うけど」

 これは絶対にシスコン末期だという台詞を本気で言い出せばカリーナの泣き声が聞こえ、見兼ねたマイケルは溜め息を吐き仲裁に入る。
 ごもっとも過ぎてマイケルの意見に一票を入れたくなるけれど、んなことしたらお兄ちゃんが落ち込んでしまうから私は何も言わない。
 それに私だって同世代同性の友達ぐらいいる。
 ……遊ぶだけなら楽しい。

「そうだよね。二人ともごめん。カリーナちゃん、アカツキと仲良くしてね」
「もちろんです。アカツキちゃん、仲良くしてね」
「あい」

 しかしそれは言わなくてもお兄ちゃんもよく分かっているらしく、自分に非があることを認め謝罪し私の交流を広めてくれる。
 表情は浮かない顔をしているからして、内心は面白くないんだろう。
 もちろんそんなことを知るよしもないカリーナは、一瞬でパッと笑顔を浮かばせ私に握手を求めるから握手した。

「本当にタスクはシスコンだね? だから女子にモテないんだよ」
「僕別に女子なんかにモテたくないもん。アカツキと二人で生きていくんだから」
「おいおい、それは将来アカツキちゃんに嫌われる要因だぞ?」

 もちろんそれはマイケルにもまる分かり冗談っぽくそう言うけれど、お兄ちゃんはいじけてしまいあんまりよろしくないことを言い返す。
 これにはマイケルであってもドン引きらしくお兄ちゃんにとって何よりも恐ろしい将来を助言。お兄ちゃんは血の気がさっと引き青ざめ魂が抜けてしまいそうだった。

 これは究極にまずい。

「私はお兄ちゃん大好き。大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになるの」
「アカツキ、ありがとう」

 幼児だから許されるありがちな台詞をはっきり言ってお兄ちゃんに抱きつけば、すぐにお兄ちゃんは復活してくれ再び私をだっこしてくれる。

 半分冗談で半分本気。

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