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お兄ちゃんの幸せを守りたい

17.前世の記憶

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 そして前世の記憶の夢を久しぶりに見た。
 それは映画を観ているような、第三者目線の夢。



 タスクのぬいぐると一緒に行った旅行先で、痛い人目を気にせず記念撮影しまくり満喫。
 スチルのモデルとなった場所が分かれば、国内であれば迷わず足を運び。録音したボイスを流し景色を眺め幸せに浸っていた。
 
 誰もいない夜の静かな浜辺で、日の出を今か今かと待っている。
 私がタスクの恋愛イベントの中で、一番好きなシーンを再現するべく。


 オレは暁が好きなんだ。
 一番暗闇が深くなり不気味だが、何があったとしても光は照らす。
 人生もどんな絶望が訪れても必ず希望が埋もれていて、その希望を掴み取れるのは本人次第。だとお前から学んだ。
 だから今日はそのお礼だ。
 暁から東雲になる瞬間を。


 再現した瞬間あまりにも美しい光景に胸の奥が暖かくなり、涙が自然と溢れこぼれ落ちる。
 タスクのことがますます愛しくなった瞬間。
 完全に太陽が昇りきるまで、幸せに酔いしれていた。

 本当に本当にタスクを愛していた。


「アカツキ、どうしたの? さっきから元気ないけれど」
「ん? やっぱり私タスクを愛してる見たい。だからこれからどうしたら良いか考えてたの」

 適性検査が終わり詳しい結果が出るのは明日なので、別荘への帰り道。
 何も喋らない私を心配そうに問うフレディに、明るく正直に考えた末の結論を話す。
 凹んで悩んでいてもどうせ答えは同じなんだから、開き直って受け入れた方が気は楽なんだと思う。
 それに私が凹んでいてお兄ちゃんと距離を取ったりしたら、三年前のように悲しみ傷つくだろうから悩んでいられない。

「ボクは昨日言った通り、兄妹の禁断の恋だとしても応援するよ。だけどいくらなんでも今はまだ早すぎるんじゃない?」
「うん、それは分かってる。だからフレディと似たような感じかな? 当分はシスコン・ブラコン末期の似た者兄妹を楽しむつもり」
「そうか。お互い気長に頑張るしかないね?」
「そうだね」

 昨日と同じ台詞を返してくれ、最終的にはまだまだ時間が必要なことになる。

 まだフレディと知り合って一日ぐらいなのに、昔からの知り合いのように思えてしまう。
 空を何気なく見上げると太陽はいつの間にか空高く昇りきっていた。耳を澄ませば鳥のさえずりや自然の様々な音に人々の声が聞こえのどかな午後のひととき。

 気長に頑張る。

 フレディとカリーナにはさまざまな試練があったとしても、きっと最後はハッピーエンドが待っているはず。
 だけどブラコンシスコン兄妹は、その先には何が待ってるんだろう?
 そう考えると流石に怖い。

「それにしてもいきなりどうしたの?」
「さっき夢でどんなに私がタスクを愛しているのかを思い知らされたんだ。ほら暁イベント」
「あれは良いよね? スチルもきれいだったし、それとバッドエンド突入選択もいろんな意味で名言だったと思うよ」
「確かにあれは不名誉な迷言で爆笑ものだけれど、タスクのバッドエンドは残虐死たから私はトラウマなんだよね」

 きっかけの話になりこれも素直に打ち明ければすぐに分かってはくれるけれど、思わぬ方向に行ってしまう。私は泣きそうになり、遠い目をして言葉を濁らせる。

 確かに暁は必ず明けるけれど、黄昏だって必ず宵になるよね? つまり希望もまた絶望になるかもと言うこと?

 主人公は男勝りのおてんば娘。勉強は苦手だけれど、頭の回転が速い子。いつも突拍子のない作戦を立てて周囲を圧倒させてしまう。
 彼女らしい珍回答が正解な時もあり、多くのプレイヤーを迷わせるほどだった。

 流石に上記の選択はありえなく、最悪エンドのフラグが立つ。
 タスクの回答は鼻で笑われ頭をポンポンするスチルがあるから、これはこれで美味しいイベントではあるのは認めても良い。
 でも最後主人公を庇って残虐死。

 その後主人公は使命を終え暁イベントの浜辺に人影があるんだけど、
 
 ねぇタスク。
 私は暁だけでいい。
 その後なんて欲しくない。

 と台詞が流れ、世が明けた瞬間人影はなくなる。

 公式ではその意味に触れたことがないため
 使命を終えたのだから、元の世界に強制送還された。
 時間を止めたくて、死を選んだ。
 などとファン達は色々と仮説を立てていた。

 私はトラウマになり数日寝込んで、移植版では強制スキップで終わらせた。

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