隠れジョブ【自然の支配者】で脱ボッチな異世界生活

世界樹への道のり

どうも、どうやら相棒は進化を遂げるようです

大変申し訳ございません。
ご指摘の通り、第四十五話の修正版においても読点の使用が不自然なままであり、ご期待に応えられておりませんでした。私の文体修正能力が不足しており、度々ご不快な思いをさせてしまいましたこと、重ねてお詫び申し上げます。

これより、**第四十五話『どうも、どうやら相棒は進化を遂げるようです』**の文章を、今度こそ、物語の内容を一切変更することなく、完全に自然でテンポの良い文体へと修正し、再執筆いたします。

第45話 どうも、どうやら相棒は進化を遂げるようです（再修正版）
ジュッテルでの激闘が終わり、師であるガルドとの別れを経てから数日が過ぎた。
俺たちの周りには嵐が過ぎ去った後のような、穏やかでしかしどこか新しい始まりを予感させる静かな時間が流れていた。

俺たちはフィンステイン商会の計らいでジュッテルでの滞在を数日延長し、次なる旅への最後の準備を整えていた。そしてその最終日、俺たちはエルマの『頑固一徹鍛冶工房』を訪れていた。

「……待ってたよ。さあ、入りな。お前さんたちの新しい魂（いのち）が、産声を上げたところさ」

工房の扉を開けると、そこにはいつも以上に濃密な鉄の匂いと凄まじい熱気が満ちていた。エルマの顔には深い疲労の色が浮かんでいる。だがその瞳は、最高の仕事を成し遂げた職人だけが持つ誇りと満足感に爛々と輝いていた。

工房の中央には二つの布で覆われた台が置かれている。シュタとリルのための新しい防具だ。エルマはそれらを誇らしげに披露してくれた。ワイバーンの革と鱗を使い、彼女の持てる技術の粋を集めて作られた『夜風の革鎧よかぜのかくがい』と『変幻の守護ポーチ』。その完璧な仕上がりに、シュタもリルも大喜びだった。

そして、最後に。俺はエルマに向き直った。

「エルマ。俺からも最後の、そして一番大事な頼みがある」
「……なんだい。言ってみな」

俺はシャルテンの雑貨屋で手に入れて以来、ずっと俺の腰にあり続けた相棒を静かに抜き放った。
「――この、『世界樹の木刀せかいじゅのぼくとう』を、もっと強くしてほしい」

俺は新しい剣を作ってくれとは言わなかった。
この木刀こそが俺の力の根源であり、この世界で俺が最初に手に入れた運命の武器だ。手放す気など毛頭ない。俺が求めているのは、この相棒の秘められた力を最大限に引き出すための、最高の『調整』だった。

俺の言葉を聞いたエルマは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにその口の端をニヤリと吊り上げた。

「……へっ。てっきりピカピカの新しい剣でも欲しがるかと思ってたよ。……気に入った。あんた、本当にわかってるじゃないか」

彼女は俺から世界樹の木刀を恭しく受け取ると、その神聖な気を帯びた刀身を愛おしそうに撫でた。

「新しい剣をゼロから打つのも鍛冶師の仕事だ。だがな、ショウ。こういう神の御業みてぇなアーティファクトに、人の手でさらなる魂を吹き込む。……これこそが、あたしたちドワーフの鍛冶師にとって最高の誉れなのさ！」

エルマの職人としての魂に火がついた。

「いいだろう。その依頼、謹んで受けさせてもらうよ。ワイバーンの最高級の素材とあたしのありったけの技術で、あんたのその相棒を真の姿へと生まれ変わらせてやる！」

それから丸一日。俺たちは工房で、エルマの神業のような作業をただ息を呑んで見守っていた。
彼女は木刀そのものを炉に入れることはしない。
まず彼女はワイバーンの強靭な牙と爪を、フィンステイン商会から取り寄せたオリハルコンとミスリルと共に溶解させ、一つの青白い輝きを放つ特殊な合金を作り上げた。
そしてその合金を何千回、何万回と叩き折り返し、世界樹の木刀のそのシンプルな柄の形に合わせて、一つの精巧な鍔と柄頭を打ち出していく。

カン、カン、カン、と。工房にリズミカルな槌の音が響き渡る。

そして作業は最終段階へと入った。
エルマはワイバーンの心臓から採取された『飛竜の魔石』をその手に取った。ドクン、ドクンと脈打つその魔力の塊を、彼女は寸分の狂いもなく新しく打ち出した柄の中心へと埋め込んでいく。それはもはや鍛冶というより、神聖な儀式に近い光景だった。

全ての部品が組み上がり、エルマがその新しい柄を世界樹の木刀の中心（なかご）へと装着した、その瞬間。
ズクンッ！と工房全体が揺れた。
木刀から凄まじい、しかしどこまでも清浄な蒼白い光の奔流が溢れ出したのだ。

「……できたよ。あんたの新しい相棒だ」

汗だくの、しかし満面の笑みを浮かべたエルマが、その生まれ変わった剣を俺に差し出した。
俺はそれを受け取る。
その瞬間、俺の魂と剣の魂が完全に一つになったのを感じた。

それはもはやただの木刀ではなかった。
ワイバーンの魔石が埋め込まれた柄は俺の魔力を吸い上げるように脈打ち、爪と牙から作られた鍔と柄頭はその木刀に恐るべき戦闘力を与えている。そして何よりも世界樹の木刀そのものが持つ神聖な気配が、その全てのパーツを完璧な調和をもって一つに束ね上げていた。

「……お前の本当の名は、『天樹あまぎ』だ」

俺がそう呟くと、剣は応えるようにひときわ強く、優しい光を放った。

最高の仲間と、最高の進化した相棒。
俺たちのジュッテルでの準備は整った。

ジュッテルの東門。俺たちはリアちゃんとアルバードさんに見送られ、シャルテンを出た時とは比べ物にならないほど立派な、フィンステイン商会が用意してくれた最新式の魔力駆動の馬車に乗り込んだ。

「ショウ様……。どうかご無事で。必ずまたお会いできると信じております」
「ああ、約束だ。必ず帰ってくる」

リアちゃんの潤んだ瞳に別れを告げ、俺たちの馬車は東へと滑るように走り出した。
目指すは遥か東のエルフの国、『迷わずの森まよわずのもり』。

数週間の旅路は穏やかだった。
新しい最高の装備と進化した相棒。もはや道中の魔物など俺たちの敵ではなかった。
やがて俺たちの目の前に、目的地の入り口となる街がその姿を現した。

「……あれが、リーフエンド……」

森と調和した美しい街。だがその向こうに聳え立つ『迷わずの森』は、俺の『自然の心得』スキルを通して、明らかに異様なそして禍々しい気配を放っていた。
それはまるで巨大な生命体が重い病に苦しみ、呻いているかのようだった。

俺たちは街の宿屋に荷を解くと、早速情報収集のために冒険者ギルドへと向かった。そこで俺たちは街の冒険者たちから、森に関する不穏な噂を耳にすることになる。

「森から黒い瘴気が漏れ出している」
「森の魔物が凶暴化している」
「森に入った者は二度と帰ってこない」

そしてその日の夕方。
俺たちが宿屋の窓から不気味な森を見つめていた、その時だった。
街の入り口の方から人々の悲鳴が上がった。
俺たちが窓から身を乗り出すと、そこには森の方角から一人のエルフの少女がボロボロの姿で、こちらへ向かって駆け出してくる姿があった。

「――助け……て……！」

少女はそう叫ぶと、俺たちの目の前で力なく崩れ落ちた。
俺はすぐさま部屋を飛び出した。