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世界樹への道のり
どうも、どうやら最後の番人は仲間との絆のようです
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絶望の森の最奥。
穢れの合成獣(キメラ)の断末魔の咆哮が俺たちの鼓膜を突き刺す。
シルフィが生み出した風の渦に乗り天高く舞い上がった俺は、全ての力を込めた『天樹』をその元凶である狼の頭めがけて容赦なく振り下ろした。
「――お前たちの苦しみも、ここで終わりにしてやる!」
俺の剣が放つ蒼白い浄化の光が、キメラの禍々しい穢れのオーラと激突した。
凄まじい衝撃。俺の一撃は確かにその頭蓋を砕き、脳をかき乱したはずだった。
だが――。
『――オオオオオオオオオオオッッ!!』
キメラは倒れない。それどころかその狼の口が大きく開かれ、そこから放たれたのは物理的なブレスではなかった。
絶望。憎悪。苦痛。
穢れに囚われた無数の魂の叫び。それが音の塊となって俺の精神を直接殴りつけた。
「ぐっ……あ……!?」
頭が割れるように痛い。目の前が真っ暗になる。ガルドさんとの修行で鍛え上げたはずの精神が、そのあまりにも純粋な負の感情の奔流に耐えきれず悲鳴を上げた。
シルフィの風の渦が乱れ、俺の体はなすすべなく地面へと落下していく。
(……まずい、意識が……)
薄れゆく意識の中、俺は見た。
俺の動きが止まったのを好機と見たキメラが、その残された全ての力で俺にとどめを刺そうと、その巨大な熊の腕を振り上げるのを。
もう避けられない。
「――ショウさん!」
その絶望的な光景を切り裂いたのは、シュタの悲鳴のような声だった。
彼女は恐怖を振り切りその自慢の俊足で大地を蹴った。『夜風の革鎧』の加護を受けた彼女の動きはもはや一陣の風そのもの。
キメラが俺にその爪を振り下ろす、そのコンマ一秒前に彼女は俺とキメラの間へと滑り込んだ。
そして攻撃するのではない。ただその華奢な体で俺を庇うように立ち塞がった。
「――させません!」
そのあまりにも無謀でしかしあまりにも健気な覚悟。
その彼女の小さな背中を守るようにオリオンの黒曜石の槍が雷光となって飛来した。
「穢れの泥濘に堕ちた獣よ!その牙、若き希望に向けること、このオリオンが許さん!」
槍はキメラの熊の腕の関節を的確に貫き、その動きを一瞬だけ鈍らせる。
「キューッ!」
さらに地面から飛び出したリルが粘着性の高い体液をキメラの複数の顔面へと叩きつけた。視界を奪われキメラは苦しげに暴れ狂う。
仲間たちが命がけで俺のために時間を作ってくれている。
『ショウ!しっかり!』
その時、俺の脳内にシルフィの力強い声が直接響いた。
『共鳴感応』を通して彼女の純粋でそして汚れのない信頼の想いが、俺の穢れに蝕まれかけた精神を優しく洗い流していく。
『アナタは一人じゃない!ワタシたちがいる!シュタがいる!リルがいる!オリオンがいる!』
そうだ。
俺はもう一人じゃない。
俺にはこのかけがえのない仲間たちがいる。
俺が守るべき家族がいる。
「――うおおおおおおおおっっ!!」
俺は叫んだ。
それは奮起の雄叫び。
仲間たちの想いをその全てを力に変えるための魂の叫びだった。
俺の体から再び蒼白い光のオーラが溢れ出す。
「……すまないみんな。少し油断した」
俺はふらつく足で立ち上がると、シュタの肩をポンと叩いた。
「もう大丈夫だ。ありがとう」
「ショウさん……!」
俺は再び『天樹』を構え直す。
だがその瞳に宿る光は先ほどまでとは全く違っていた。
ただ敵を破壊するための鋭い光ではない。
目の前で苦しみもがいているこの哀れな魂たちを救済するための、どこまでも優しくそして温かい慈愛の光。
「オリオン、シュタ、リル、シルフィ。力を貸してくれ」
俺の言葉に仲間たちが力強く頷く。
オリオンの槍に森の古えの力が宿る。
シュタの手に生命を癒す光が灯る。
リルとシルフィの小さな体にありったけの自然のエネルギーが満ちていく。
そして俺は。
「――#自然操作__しぜんそうさ#・魂の解放」
俺は俺の持つ力の全てを仲間たちの力と一つに束ねた。
それはもはや俺一人の力ではない。
この森を愛しこの森に生きる全ての者たちの祈りそのものだった。
俺たちの中心から翠色と蒼白の巨大な光の奔流が生まれた。
その光はキメラのおぞましい体を破壊するのではない。
優しくどこまでも優しくその体を内側から包み込んでいく。
『……あ……あたたかい……』
キメラの複数の口から初めて苦痛ではない安らかな声が漏れた。
『……そうか……。これで、やっと……。眠れるのか……』
穢れに囚われていた無数の魔獣たちの魂が、その永い永い苦しみの呪縛から解き放たれていく。
キメラのおぞましい体はその形をゆっくりと失っていく。そして無数のきらきらと輝く光の粒子となって森の闇の中へと消えていった。
断末魔ではない。ただ安らかな感謝の歌声だけを残して。
戦いは終わった。
キメラがいた場所には穢れが完全に浄化された清らかな土と、いくつかの美しい魔石だけが静かに残されていた。
「……やった……。やったんですね、ショウさん!」
シュタが涙声で俺の胸に飛び込んできた。
俺はその体を強く抱きしめ返す。
「……君たちの、おかげだ」
オリオンが静かに俺たちへと歩み寄ってきた。その悲しみに満ちていた瞳には今、確かな尊敬の色が宿っている。
「……見事だった、ショウ・カンザキ。そしてその仲間たちよ。君たちはただの力だけではない。魂で戦う戦士だ。……私も君たちと出会えて本当に良かった」
俺たちは互いの健闘を称え合った。
そして目の前にぽっかりと口を開ける巨大な洞窟――『黒き星の祭壇』への最後の入り口を見据えた。
「ここから先はもはやこの世界の森ではない」
オリオンが警告する。
「あの『災厄』が自らのためだけに作り出した異界だ。何が待ち受けているか私にもわからん。……心して進め」
俺たちは覚悟を決め顔を見合わせる。そして力強く頷いた。
俺たちの最後の戦いの舞台。
その闇の中へと俺たちは一歩足を踏み出した。
穢れの合成獣(キメラ)の断末魔の咆哮が俺たちの鼓膜を突き刺す。
シルフィが生み出した風の渦に乗り天高く舞い上がった俺は、全ての力を込めた『天樹』をその元凶である狼の頭めがけて容赦なく振り下ろした。
「――お前たちの苦しみも、ここで終わりにしてやる!」
俺の剣が放つ蒼白い浄化の光が、キメラの禍々しい穢れのオーラと激突した。
凄まじい衝撃。俺の一撃は確かにその頭蓋を砕き、脳をかき乱したはずだった。
だが――。
『――オオオオオオオオオオオッッ!!』
キメラは倒れない。それどころかその狼の口が大きく開かれ、そこから放たれたのは物理的なブレスではなかった。
絶望。憎悪。苦痛。
穢れに囚われた無数の魂の叫び。それが音の塊となって俺の精神を直接殴りつけた。
「ぐっ……あ……!?」
頭が割れるように痛い。目の前が真っ暗になる。ガルドさんとの修行で鍛え上げたはずの精神が、そのあまりにも純粋な負の感情の奔流に耐えきれず悲鳴を上げた。
シルフィの風の渦が乱れ、俺の体はなすすべなく地面へと落下していく。
(……まずい、意識が……)
薄れゆく意識の中、俺は見た。
俺の動きが止まったのを好機と見たキメラが、その残された全ての力で俺にとどめを刺そうと、その巨大な熊の腕を振り上げるのを。
もう避けられない。
「――ショウさん!」
その絶望的な光景を切り裂いたのは、シュタの悲鳴のような声だった。
彼女は恐怖を振り切りその自慢の俊足で大地を蹴った。『夜風の革鎧』の加護を受けた彼女の動きはもはや一陣の風そのもの。
キメラが俺にその爪を振り下ろす、そのコンマ一秒前に彼女は俺とキメラの間へと滑り込んだ。
そして攻撃するのではない。ただその華奢な体で俺を庇うように立ち塞がった。
「――させません!」
そのあまりにも無謀でしかしあまりにも健気な覚悟。
その彼女の小さな背中を守るようにオリオンの黒曜石の槍が雷光となって飛来した。
「穢れの泥濘に堕ちた獣よ!その牙、若き希望に向けること、このオリオンが許さん!」
槍はキメラの熊の腕の関節を的確に貫き、その動きを一瞬だけ鈍らせる。
「キューッ!」
さらに地面から飛び出したリルが粘着性の高い体液をキメラの複数の顔面へと叩きつけた。視界を奪われキメラは苦しげに暴れ狂う。
仲間たちが命がけで俺のために時間を作ってくれている。
『ショウ!しっかり!』
その時、俺の脳内にシルフィの力強い声が直接響いた。
『共鳴感応』を通して彼女の純粋でそして汚れのない信頼の想いが、俺の穢れに蝕まれかけた精神を優しく洗い流していく。
『アナタは一人じゃない!ワタシたちがいる!シュタがいる!リルがいる!オリオンがいる!』
そうだ。
俺はもう一人じゃない。
俺にはこのかけがえのない仲間たちがいる。
俺が守るべき家族がいる。
「――うおおおおおおおおっっ!!」
俺は叫んだ。
それは奮起の雄叫び。
仲間たちの想いをその全てを力に変えるための魂の叫びだった。
俺の体から再び蒼白い光のオーラが溢れ出す。
「……すまないみんな。少し油断した」
俺はふらつく足で立ち上がると、シュタの肩をポンと叩いた。
「もう大丈夫だ。ありがとう」
「ショウさん……!」
俺は再び『天樹』を構え直す。
だがその瞳に宿る光は先ほどまでとは全く違っていた。
ただ敵を破壊するための鋭い光ではない。
目の前で苦しみもがいているこの哀れな魂たちを救済するための、どこまでも優しくそして温かい慈愛の光。
「オリオン、シュタ、リル、シルフィ。力を貸してくれ」
俺の言葉に仲間たちが力強く頷く。
オリオンの槍に森の古えの力が宿る。
シュタの手に生命を癒す光が灯る。
リルとシルフィの小さな体にありったけの自然のエネルギーが満ちていく。
そして俺は。
「――#自然操作__しぜんそうさ#・魂の解放」
俺は俺の持つ力の全てを仲間たちの力と一つに束ねた。
それはもはや俺一人の力ではない。
この森を愛しこの森に生きる全ての者たちの祈りそのものだった。
俺たちの中心から翠色と蒼白の巨大な光の奔流が生まれた。
その光はキメラのおぞましい体を破壊するのではない。
優しくどこまでも優しくその体を内側から包み込んでいく。
『……あ……あたたかい……』
キメラの複数の口から初めて苦痛ではない安らかな声が漏れた。
『……そうか……。これで、やっと……。眠れるのか……』
穢れに囚われていた無数の魔獣たちの魂が、その永い永い苦しみの呪縛から解き放たれていく。
キメラのおぞましい体はその形をゆっくりと失っていく。そして無数のきらきらと輝く光の粒子となって森の闇の中へと消えていった。
断末魔ではない。ただ安らかな感謝の歌声だけを残して。
戦いは終わった。
キメラがいた場所には穢れが完全に浄化された清らかな土と、いくつかの美しい魔石だけが静かに残されていた。
「……やった……。やったんですね、ショウさん!」
シュタが涙声で俺の胸に飛び込んできた。
俺はその体を強く抱きしめ返す。
「……君たちの、おかげだ」
オリオンが静かに俺たちへと歩み寄ってきた。その悲しみに満ちていた瞳には今、確かな尊敬の色が宿っている。
「……見事だった、ショウ・カンザキ。そしてその仲間たちよ。君たちはただの力だけではない。魂で戦う戦士だ。……私も君たちと出会えて本当に良かった」
俺たちは互いの健闘を称え合った。
そして目の前にぽっかりと口を開ける巨大な洞窟――『黒き星の祭壇』への最後の入り口を見据えた。
「ここから先はもはやこの世界の森ではない」
オリオンが警告する。
「あの『災厄』が自らのためだけに作り出した異界だ。何が待ち受けているか私にもわからん。……心して進め」
俺たちは覚悟を決め顔を見合わせる。そして力強く頷いた。
俺たちの最後の戦いの舞台。
その闇の中へと俺たちは一歩足を踏み出した。
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