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交差する世界とランキング戦
第十四話 七つの学園、災厄の魔弾
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黒宮瀧との死闘から三日が過ぎた。俺の体は未だ悲鳴を上げており、医務室のベッドでシュタによる精密な治癒を受けながら、決勝戦へ向けたコンディション調整を行う日々が続いていた。あの『星穿つ一撃』の代償は大きく、特に異世界の魔石のエネルギーを無理やり引き出した反動で、体内の氣の流れがひどく乱れている。
「翔君、はい、これ。お母さんがお見舞いにって、特製の栄養ドリンク作ってくれたの」
「おお、サンキュ、結衣。助かる」
毎日かいがいしく見舞いに来てくれる結衣からドリンクを受け取り、一口飲む。薬草のような苦味と果物のような甘さが混じった不思議な味だが、乱れた氣が少しだけ落ち着くのを感じた。
「それで、決勝戦の相手、もう聞いた?」
結衣が少し心配そうな顔で切り出した。「いや、まだだ。どうせ瀧が負かした相手だろ?三年の誰かか?」俺が気楽に言うと、結衣は静かに首を横に振った。「ううん……違うの。決勝の相手は、最峰学園の生徒じゃないんだ」
「……は?どういうことだ?」
七大学園と九重ルリ
俺の疑問に、結衣はこの学園都市の、そしてランキング戦の本当の姿について説明を始めた。俺たちが住むこの巨大な学園都市は、実は俺たちの通う『最峰(さいほう)学園』だけではない。それぞれが全く異なる特色を持つ七つの巨大な学園によって構成されているのだという。
第一学園 最峰(さいほう)学園。俺たちが通う、総合力とバランスを重視する王道の進学校。
第二学園 皇國(こうこく)館。剣術や槍術など、古来からの伝統的な近接戦闘術に特化した、質実剛健を旨とする武門の学園。由縁先輩のような剣の天才は、本来ならこちらの学園が性に合っていたかもしれない。
第三学園 機巧(きこう)院。智慧武器そのものの研究・開発や、ドローン、AIといった科学技術との連携を専門とするテクニカルな学園。瀧の戦術はここの生徒たちの思想に近いものがある。
第四学園 六花(りっか)女学院。その名の通り女子校で、幻術や精神干渉、支援・回復系の能力に長けた生徒が多く在籍している。準々決勝で戦った雨宮先輩は、まさにこの学園の申し子のようなタイプだった。
第五学園 獣王(じゅうおう)アカデミー。野性的な戦闘スタイルや、身体能力そのものを極限まで強化する智慧武器を持つ肉体派の生徒が集う。ギデオン先輩の圧倒的なパワーは、ここの生徒たちとしばしば比較されるという。
第六学園 天楼(てんろう)閣。情報戦、諜報活動、暗殺技術。裏の戦いに特化した最も謎の多い秘密主義の学園。
そして――。
「翔君の決勝の相手は、第七学園 不知火(しらぬい)兵廠のトップ、三年生の九重(ここのえ)ルリ先輩だよ」
不知火兵廠。銃火器や爆薬、近代兵器の扱いに特化した、七大学園の中で最も実戦的で危険な学園。そのトップである九重ルリは、二丁の大型拳銃型智慧武器を操り、その圧倒的な火力と精密射撃であらゆる敵を近づくことすらさせずに殲滅することから、こう呼ばれているという。
〝災厄の魔弾(カラミティ・バレット)〟と。
「……最悪の相手だな」
松葉杖をつきながら医務室に入ってきた瀧が苦々しく言った。彼もまた、準決勝で俺に敗れたとはいえ、その実力は学園都市全体でもトップクラスだ。
「九重ルリはただの射撃手じゃねえ。あいつの智慧武器が放つ弾丸は、着弾時に炸裂したり、電撃を撒き散らしたり、様々な追加効果を発動する特殊弾だ。シールドで防いでも爆風と衝撃波で体力を削られる。お前のスピードと近接戦闘能力とは、文字通り、最悪の相性だぞ」
遠距離からの弾幕の雨。近づくことすらままならない。俺の脳裏に絶望的な戦場のイメージが浮かび上がった。
鋼鉄亀討伐へ
その日の夜、俺は自室のベッドにはいなかった。決勝戦までの残り時間はあと四日。ただ治療に専念しているだけでは九重先輩には勝てない。俺は新たな力のヒントと、瀧との戦いで消耗してしまった『魔石』の補充を求め、再び異世界の拠点「岩壁亭」の部屋に立っていた。
翌日、俺は冒険者ギルドへ向かった。初依頼を完璧にこなしたおかげか、以前のような好奇の視線ではなく、畏怖や実力を認めるような視線を感じる。
「あら、噂の新人さん。もう次の依頼?」
カウンターのメリッサさんが少し楽しそうに声をかけてきた。「ええ。少し相談が。強力な遠距離攻撃を持ってて、かつ防御がめちゃくちゃ硬い魔物なんていませんか?」俺の突拍子もない質問に、メリッサは一瞬きょとんとしたが、すぐに何かを思い出したように依頼書の束を探し始めた。「……あんたみたいな物好きに、ちょうどいい依頼があるわよ」
彼女が差し出してきたのは、Cランクの討伐依頼書だった。
依頼内容:『鉄錆の渓谷』に巣食う、『鋼鉄亀(アイアン・トータス)』の甲羅の調達
ランク:C
報酬:金貨15枚
詳細:鋼鉄亀は、あらゆる物理・魔法攻撃を弾き返す超硬度の甲羅を持つ巨大な亀。普段は温厚だが、縄張りに侵入した者には、口から高圧の**水流弾(ウォーターカッター)**を連射してくる。
これだ。圧倒的な防御力と強力な遠距離攻撃。まさに九重先輩を想定した訓練にうってつけの相手だ。甲羅の破片だけでも手に入れば、シュタの新たな防御形態の参考になるかもしれない。
「この依頼、受けます」
俺が依頼書を受け取ろうとしたその時だった。
「へえ、面白そうな依頼じゃん!ねぇ、あんたが噂のDランク新人、ショウだろ?その依頼、この私(ウチ)も混ぜてくんない?」
快活な声と共に、カウンターの横からひょっこりと顔を出したのは、猫の耳と尻尾を生やした快活な印象の少女だった。歳は俺と同じくらいか。その身に纏っているのは見慣れない制服。だがそのエンブレムには見覚えがあった。第五学園、獣王アカデミーのものだ。
「……獣王アカデミーの生徒が、なぜここに?」
「あ、バレた?学園の特別実地訓練プログラムで来てるんだ。私はネコ科獣人のミコ。よろしくな!」
ミコと名乗った彼女は、人懐っこい笑みを浮かべた。どうやら異世界と繋がっているのは、俺の部屋だけというわけではないらしい。あるいは、他の学園は別の手段でこの世界への渡航を可能にしているのか。
「悪いが、俺は単独(ソロ)でやる」
「つれないこと言うなよー。見ての通り、私はスピードと索敵が得意なんだ。あんたみたいなパワータイプ(仮)と組めば、絶対効率いいって!」
パワータイプ(仮)……まあ、ギデオン先輩を倒したからそう見られても仕方ないか。
一人の方が気楽だが、獣人である彼女の野生の勘や、獣王アカデミーならではの戦闘スタイルには興味があった。何より、この底抜けに明るい雰囲気が、決勝前の今の俺には少しだけ心地よく感じられた。
「……分かった。ただし、足手まといになったら、置いていくぞ」
「やった!任せとけって!」
こうして俺は獣王アカデミーの獣人、ミコという予期せぬ相棒と共に新たな依頼へと挑むことになった。
決勝戦の相手、〝災厄の魔弾〟。そして異世界の強敵、〝鋼鉄亀〟。
二つの困難な課題を前に、俺の心は不思議な充実感で満たされていた。
「翔君、はい、これ。お母さんがお見舞いにって、特製の栄養ドリンク作ってくれたの」
「おお、サンキュ、結衣。助かる」
毎日かいがいしく見舞いに来てくれる結衣からドリンクを受け取り、一口飲む。薬草のような苦味と果物のような甘さが混じった不思議な味だが、乱れた氣が少しだけ落ち着くのを感じた。
「それで、決勝戦の相手、もう聞いた?」
結衣が少し心配そうな顔で切り出した。「いや、まだだ。どうせ瀧が負かした相手だろ?三年の誰かか?」俺が気楽に言うと、結衣は静かに首を横に振った。「ううん……違うの。決勝の相手は、最峰学園の生徒じゃないんだ」
「……は?どういうことだ?」
七大学園と九重ルリ
俺の疑問に、結衣はこの学園都市の、そしてランキング戦の本当の姿について説明を始めた。俺たちが住むこの巨大な学園都市は、実は俺たちの通う『最峰(さいほう)学園』だけではない。それぞれが全く異なる特色を持つ七つの巨大な学園によって構成されているのだという。
第一学園 最峰(さいほう)学園。俺たちが通う、総合力とバランスを重視する王道の進学校。
第二学園 皇國(こうこく)館。剣術や槍術など、古来からの伝統的な近接戦闘術に特化した、質実剛健を旨とする武門の学園。由縁先輩のような剣の天才は、本来ならこちらの学園が性に合っていたかもしれない。
第三学園 機巧(きこう)院。智慧武器そのものの研究・開発や、ドローン、AIといった科学技術との連携を専門とするテクニカルな学園。瀧の戦術はここの生徒たちの思想に近いものがある。
第四学園 六花(りっか)女学院。その名の通り女子校で、幻術や精神干渉、支援・回復系の能力に長けた生徒が多く在籍している。準々決勝で戦った雨宮先輩は、まさにこの学園の申し子のようなタイプだった。
第五学園 獣王(じゅうおう)アカデミー。野性的な戦闘スタイルや、身体能力そのものを極限まで強化する智慧武器を持つ肉体派の生徒が集う。ギデオン先輩の圧倒的なパワーは、ここの生徒たちとしばしば比較されるという。
第六学園 天楼(てんろう)閣。情報戦、諜報活動、暗殺技術。裏の戦いに特化した最も謎の多い秘密主義の学園。
そして――。
「翔君の決勝の相手は、第七学園 不知火(しらぬい)兵廠のトップ、三年生の九重(ここのえ)ルリ先輩だよ」
不知火兵廠。銃火器や爆薬、近代兵器の扱いに特化した、七大学園の中で最も実戦的で危険な学園。そのトップである九重ルリは、二丁の大型拳銃型智慧武器を操り、その圧倒的な火力と精密射撃であらゆる敵を近づくことすらさせずに殲滅することから、こう呼ばれているという。
〝災厄の魔弾(カラミティ・バレット)〟と。
「……最悪の相手だな」
松葉杖をつきながら医務室に入ってきた瀧が苦々しく言った。彼もまた、準決勝で俺に敗れたとはいえ、その実力は学園都市全体でもトップクラスだ。
「九重ルリはただの射撃手じゃねえ。あいつの智慧武器が放つ弾丸は、着弾時に炸裂したり、電撃を撒き散らしたり、様々な追加効果を発動する特殊弾だ。シールドで防いでも爆風と衝撃波で体力を削られる。お前のスピードと近接戦闘能力とは、文字通り、最悪の相性だぞ」
遠距離からの弾幕の雨。近づくことすらままならない。俺の脳裏に絶望的な戦場のイメージが浮かび上がった。
鋼鉄亀討伐へ
その日の夜、俺は自室のベッドにはいなかった。決勝戦までの残り時間はあと四日。ただ治療に専念しているだけでは九重先輩には勝てない。俺は新たな力のヒントと、瀧との戦いで消耗してしまった『魔石』の補充を求め、再び異世界の拠点「岩壁亭」の部屋に立っていた。
翌日、俺は冒険者ギルドへ向かった。初依頼を完璧にこなしたおかげか、以前のような好奇の視線ではなく、畏怖や実力を認めるような視線を感じる。
「あら、噂の新人さん。もう次の依頼?」
カウンターのメリッサさんが少し楽しそうに声をかけてきた。「ええ。少し相談が。強力な遠距離攻撃を持ってて、かつ防御がめちゃくちゃ硬い魔物なんていませんか?」俺の突拍子もない質問に、メリッサは一瞬きょとんとしたが、すぐに何かを思い出したように依頼書の束を探し始めた。「……あんたみたいな物好きに、ちょうどいい依頼があるわよ」
彼女が差し出してきたのは、Cランクの討伐依頼書だった。
依頼内容:『鉄錆の渓谷』に巣食う、『鋼鉄亀(アイアン・トータス)』の甲羅の調達
ランク:C
報酬:金貨15枚
詳細:鋼鉄亀は、あらゆる物理・魔法攻撃を弾き返す超硬度の甲羅を持つ巨大な亀。普段は温厚だが、縄張りに侵入した者には、口から高圧の**水流弾(ウォーターカッター)**を連射してくる。
これだ。圧倒的な防御力と強力な遠距離攻撃。まさに九重先輩を想定した訓練にうってつけの相手だ。甲羅の破片だけでも手に入れば、シュタの新たな防御形態の参考になるかもしれない。
「この依頼、受けます」
俺が依頼書を受け取ろうとしたその時だった。
「へえ、面白そうな依頼じゃん!ねぇ、あんたが噂のDランク新人、ショウだろ?その依頼、この私(ウチ)も混ぜてくんない?」
快活な声と共に、カウンターの横からひょっこりと顔を出したのは、猫の耳と尻尾を生やした快活な印象の少女だった。歳は俺と同じくらいか。その身に纏っているのは見慣れない制服。だがそのエンブレムには見覚えがあった。第五学園、獣王アカデミーのものだ。
「……獣王アカデミーの生徒が、なぜここに?」
「あ、バレた?学園の特別実地訓練プログラムで来てるんだ。私はネコ科獣人のミコ。よろしくな!」
ミコと名乗った彼女は、人懐っこい笑みを浮かべた。どうやら異世界と繋がっているのは、俺の部屋だけというわけではないらしい。あるいは、他の学園は別の手段でこの世界への渡航を可能にしているのか。
「悪いが、俺は単独(ソロ)でやる」
「つれないこと言うなよー。見ての通り、私はスピードと索敵が得意なんだ。あんたみたいなパワータイプ(仮)と組めば、絶対効率いいって!」
パワータイプ(仮)……まあ、ギデオン先輩を倒したからそう見られても仕方ないか。
一人の方が気楽だが、獣人である彼女の野生の勘や、獣王アカデミーならではの戦闘スタイルには興味があった。何より、この底抜けに明るい雰囲気が、決勝前の今の俺には少しだけ心地よく感じられた。
「……分かった。ただし、足手まといになったら、置いていくぞ」
「やった!任せとけって!」
こうして俺は獣王アカデミーの獣人、ミコという予期せぬ相棒と共に新たな依頼へと挑むことになった。
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