マイルームから異世界転移?!二つの世界の力を使って成り上がる

破滅

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交差する世界とランキング戦

第十五話 鋼鉄の巨亀と獣人の爪

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「よろしくな、ショウ!私のことはミコって呼んでくれ!」
「……ああ。よろしく、ミコ」

冒険者ギルドのカウンター前で俺は目の前の少女――ミコに若干のペースを乱されていた。第五学園、獣王アカデミーから来たという彼女は、好奇心旺盛な猫のようにキラキラした目で俺を見つめている。その背中ではふさふさの尻尾が嬉しそうに左右に揺れていた。こうして俺のCランク初依頼は、予期せぬ獣人の少女との臨時パーティ任務となった。

王都の西門を出て、目的地である『鉄錆の渓谷』へと向かう道中、ミコは休むことなく喋り続けた。
「いやー、それにしても驚いたぜ!あんた、最峰学園の生徒なんだろ?あそこの連中って、もっとこう、スカしたエリート様ばっかりだと思ってたけど、あんたは違うな!なんか、血の匂いがする!」
「……鼻が利くんだな」
「当たり前だろ!獣人(ウチら)の五感、なめんなよ!特にこの鼻と耳は、そこらの魔道具より高性能なんだからな!」

ミコはそう言って、ぴこぴこと動く猫耳を自慢げに指差した。彼女の話によると、獣王アカデミーの生徒が異世界に来る手段は、学園の敷地内の特定の場所に、ごく稀に空間が不安定になる『獣道(けものみち)』と呼ばれる現象が発生し、そこを通ることで、この世界に繋がるのだという。
「最峰みたいな頭のいい学園は、もっとこう、科学の力でカッコよくワープとかしてんのかと思ってたぜ」
「……まあ、似たようなもんだ」

俺の部屋の窓がなんて説明できるはずもなく、適当に話を濁しておく。どうやらこの世界へのアクセス方法は、学園によって様々らしい。

他愛のない会話を続けながら歩くこと半日。やがて俺たちの目の前に、その名の通り、鉄が錆びたような赤茶けた岩肌が延々と続く、荒涼とした渓谷が姿を現した。

鋼鉄亀との遭遇
「よし、着いたな。ここからは慎重に……」
俺が索敵の準備をしようとしたその時だった。ミコが大きく息を吸い込むと、ふんふんと鼻を鳴らし始めた。
「……見つけた。この先にいるぜ。デカくて、硬くて、鉄臭くて……あと、ちょっとだけカビ臭い匂いがする!」

俺の制止を聞く前に、ミコは「うぉっしゃー!いっくぜー!」と雄叫びを上げ、渓谷の奥へと突っ走ってしまった。「おい、待て!作戦もなしに突っ込むな!」慌てて後を追いかける。あの猪突猛進な性格、いつか命を落とすぞ。

渓谷の開けた場所にたどり着くと俺は息を呑んだ。そこにいたのは家ほどの大きさを持つ巨大な亀だった。長年の風雨に晒された古代の金属のような、鈍い光を放つ甲羅。それはもはや生物というよりは、天然の要塞と呼ぶべき威容を誇っていた。**鋼鉄亀(アイアン・トータス)**だ。

そしてその巨大な甲羅の上にはすでにミコの姿があった。
「くらえっ!」
彼女の両手両足には智慧武器であろう、獣の爪を模した鋭いクローが装着されていた。身体能力を極限まで高める『百獣爪牙ビースト・クロウ』。それが彼女の智慧武器の名だろう。
ミコは目にも留まらぬ速さで甲羅の上を駆け抜け、その爪を何度も叩きつける。

ガキンッ!ギャリリッ!

凄まじい音が響き渡るが、鋼鉄亀の甲羅には擦り傷一つ付いていない。逆にミコの爪から火花が散るだけだった。「硬ってぇー!なんだよコレ、オリハルコンかよ!」
ミコが甲羅の上で悪態をついたその時だった。

ゴゴゴゴゴ……。
それまで岩のように沈黙していた鋼鉄亀がゆっくりと目を覚ました。巨大な頭部が持ち上がり、その爬虫類然とした冷たい瞳が甲羅の上の小さな侵入者を捉える。
そしてその口が大きく開かれ――高圧の**水流弾(ウォーターカッター)**が、弾丸の雨となってミコへと襲いかかった。

「うおっと!」
ミコはその獣のような勘と、智慧武器で強化された驚異的な俊敏さで、降り注ぐウォーターカッターを紙一重で回避し続ける。だが攻撃は一向に止む気配がなく、彼女は甲羅の上で踊り続けるしかなく、反撃の隙を全く見出せないでいた。

連携と勝利
「馬鹿野郎!だから言わんこっちゃない!」
俺は悪態をつきながらミコの前へと躍り出た。
「シュタ!『城壁の盾ウォール・シールド』!」

シュタが瞬時に巨大なタワーシールドへと変幻し、俺たちの前に鉄壁の防御を形成する。
ズガガガガガッ!
ウォーターカッターが盾に叩きつけられ、凄まじい衝撃と水飛沫が巻き起こる。並の防御なら一瞬で貫通されていただろう。だがシュタの盾は、その猛攻にびくともしない。

「お、お前、すげーな!サンキュ!」
盾の影に隠れたミコが感心したように言う。「おしゃべりは後だ!ヤツの攻撃パターンを読む!」

俺は盾を構えながら鋼鉄亀の動きを冷静に分析する。強力無比なウォーターカッターだが、弱点もある。首の可動域には限界があり、真横や真後ろといった極端な角度には攻撃が届いていない。そして何より、十数発連射するごとに必ず数秒間の、冷却ともチャージとも取れるインターバルが存在する。

俺は学園都市製の無線インカムをミコに投げ渡した。「これを使え!俺が正面でこいつの注意(ヘイト)を引きつける!お前は、そのスピードで奴の背後に回り込め!狙うは、首の付け根、甲羅とのわずかな隙間だ!ヤツの攻撃が止まった、数秒のインターバルだけがチャンスだ!」
「へへっ、面白くなってきた!任せとけ!」

ミコはインカムを装着すると、再びその瞳に闘志の火を灯した。作戦開始だ。俺は盾を構え、わざと派手な音を立てて鋼鉄亀を挑発する。狙い通り、ヤツの攻撃は全て俺に集中した。
その隙にミコは獣王アカデミー仕込みの超人的な身体能力で、渓谷の垂直な壁を駆け上がり、まるで重力を無視するかのように鋼鉄亀の死角である背後へと回り込んでいく。

「翔!今だ、合図をくれ!」
インカムからミコの切羽詰まった声が聞こえる。
俺はウォーターカッターの弾数を数え、衝撃に耐えながらその瞬間を待つ。
……八、九、十!
連射が止み、鋼鉄亀の口から蒸気が漏れる。インターバルだ。

「今だ!やれええええっ!」

俺の絶叫が合図だった。鋼鉄亀の真後ろに張り付いていたミコが、その全身のバネを使って目標ポイント――首の付け根のわずか数センチの隙間――へと突進する。「喰らいやがれぇっ!私の全力!『獅子王裂爪レグルス・ストライク』!!」

彼女の智慧武器『百獣爪牙』に、ありったけのエネルギーが集中し、その爪が眩い光を放つ。そしてその一撃が、鋼鉄亀の唯一の弱点へと深々と突き刺さった。

――グギャアアアアアアアアッ!

鋼鉄亀はこれまでとは比べ物にならない、断末魔の叫びを上げた。ミコの一撃は分厚い皮膚と筋肉を切り裂き、その中枢神経を完全に断ち切っていた。やがて巨体はゆっくりと傾き、地響きを立ててその動きを完全に止めた。

「……はぁ、はぁ……やった……ぜ……」
ミコがその場にへたり込む。
俺も盾の変形を解き、大きく息をついた。見事な連携勝利だった。

「あんた、意外と頼りになるじゃん!頭も切れるし!」
「お前こそ、無茶苦茶な動きしやがって。だが、まあ……見事な一撃だった」

俺たちは互いの健闘を称え合った。依頼の品である「甲羅の破片」を採取しながら、俺はその断面のハニカム構造と複数の金属層が重なったような複雑な構造を、シュタに徹底的にスキャンさせた。
「この構造……このエネルギー伝達の減衰率……。これを応用すれば、対物理弾、対エネルギー弾の両方に対応できる、全く新しい防御形態が作れるかもしれない……」

決勝戦で〝災厄の魔弾〟の弾幕を防ぐための確かなヒントを得た。さらに討伐の証として、鋼鉄亀の体内からこれまで手に入れたものより遥かに大きい「水の魔石」を手に入れた。これも決勝戦の切り札、『星穿つ一撃』の新たなエネルギー源になるだろう。

王都への帰り道、ミコは「また面白そうな依頼があったら絶対誘えよな!」と何度も念を押して自分の拠点へと帰っていった。
一人宿屋に戻った俺は、手に入れた甲羅のデータと水の魔石をテーブルに広げた。
「シュタ。決勝戦まで、残り三日。お前と俺で、九重ルリを倒すための〝最高の盾〟を創り出すぞ」
シュタは黙って、しかし力強く、こくりと頷いた。
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