マイルームから異世界転移?!二つの世界の力を使って成り上がる

破滅

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交差する世界とランキング戦

第十六話 決戦前夜、それぞれの想い

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決勝戦までの残り二日間、俺は学園の個人用工房(プライベートワークショップ)でほとんどの時間を過ごした。瀧との激戦で負った傷はシュタの治癒機能と医務室の最新医療機器のおかげで回復しつつあったが、問題はそこではなかった。〝災厄の魔弾〟九重ルリの弾幕をどう潜り抜け、どう懐に飛び込むか。その答えを見つけなければ、俺に勝ち目はなかった。

「シュタ、シミュレーションNo.73を開始。甲羅のエネルギー伝達減衰率を、対エネルギー弾に最適化して再計算しろ」
「了解、マスター。再計算を実行します。……完了。仮想空間に、新防御形態『亀甲盾・遍く護るものアダマンタス』の設計データを展開します」

工房の仮想ディスプレイに、無数のデータと数式が流れ、巨大な盾の設計図が浮かび上がる。異世界で手に入れた**鋼鉄亀(アイアン・トータス)**の甲羅のデータは、単なる硬さ以上の防御システムだった。衝撃を受けた瞬間に分子構造を変化させる多層装甲、エネルギー攻撃を熱に変換し、内部の冷却媒体で霧散させるハニカム構造。俺とシュタは、この異世界のオーパーツとも言える防御理論を解析し、シュタの変幻能力で再現しようと試みていた。

だが、この〝アダマンタス〟の構築と維持には莫大なエネルギーが必要となる。鋼鉄亀から得た「水の魔石(大)」をコアとして組み込んでも、決勝戦の試合中におそらく一度しか完全な形で展開できない。まさに一回きりの、究極の盾。俺の全てを懸けた、たった一つの切り札だった。

決勝戦前日。開発に没頭する俺の元に、音もなく結衣がやってきた。湯気の立つスープポットを手に。「……翔君、すごい集中力だね。邪魔しちゃ悪いから、これ、ここに置いておくね」彼女は俺の真剣な横顔に声をかけるのをためらい、工房の隅のテーブルに差し入れを置いた。その瞳には、心配と信頼の色が浮かんでいる。俺は、その無言のエールに背中を押されるような気持ちになった。

しばらくして、工房のドアが再び開いた。今度は、もう杖なしで歩けるまでに回復した瀧だった。「よう、まだやってんのか。根を詰めるのもいいが、本番でガス欠すんじゃねえぞ」軽口を叩きながら、彼は一つのデータチップを俺に差し出した。「ほらよ。九重ルリの過去三年間の全試合データと、俺なりの分析レポートだ。お前の対策の足しにでもなればいいが」

データチップを受け取り、ディスプレイに表示させる。そこには、常人では気づかないような九重ルリの僅かな射撃の癖、リロードのタイミング、使用する特殊弾の効果と軌道パターンまでが、異常なほどの精度で分析され、まとめられていた。「……瀧、お前……」「お前が負けたら、お前に負けた俺が笑いもんだからな。それに、あんな銃使いに、俺たちの代のトップを明け渡すのは気分が悪い。……絶対に、勝てよ」

瀧はそう言うと、不器用な笑顔を見せて工房を後にした。最高の親友(とも)がくれた、最高の援護。俺は瀧のデータと、異世界で得たウォーターカッターの弾幕を回避した経験を組み合わせ、脳内で何度も九重ルリとの戦いをシミュレートした。

その頃、第七学園不知火兵廠の地下射撃場では、一人の少女が静かに智慧武器の手入れをしていた。腰まで届く滑らかな黒髪を機能的な一本のポニーテールに結んだ、九重ルリ。彼女は能面のような無表情で、愛銃である黒と白の二丁の大型拳銃――『災厄の双星カラミティ・ツインズ』――を、ミリ単位の狂いもなく分解し、清掃し、再び組み上げていく。その瞳は、勝利以外何ものも映してはいない。だが、その背中は、何か重い宿命を背負っているかのようにひどく孤独に見えた。

決勝戦:開幕
そして、決勝戦当日。
学園都市全体が年に一度の祭りの最終日を迎えたかのような、凄まじい熱気に包まれていた。七つの学園の校旗が風にたなびき、それぞれの制服に身を包んだ生徒や関係者が極大闘技場へと集結してくる。全ての席は埋め尽くされ、通路まで人で溢れかえっていた。

選手控室で、俺は静かに目を閉じ、精神を統一する。隣には、いつものように少女の姿のシュタが寄り添っていた。「シュタ、今日でこの長いようで短かった戦いも、終わりだ。お前の力を、もう一度貸してくれ」「いつでも、マスターの望むままに。私の全ては、マスターのためにあります」俺たちは、言葉少なげに、しかしこれまでで最も強く、互いの絆を再確認した。

やがて、決勝戦への呼び出しがかかる。ステージへと続く長い通路を歩いていると、観客席の中に、見知った顔がいくつも見えた。鋭い視線で俺を射抜くように見つめる、第二学園の制服を着た由縁先輩。人混みの中で静かに手を合わせ、祈るように俺を見守る、第四学園の制服の雨宮先輩。腕を組み、仁王立ちで俺を見下ろす、第五学園のギデオン先輩。そして、最前列で、結衣の隣でニヤリと口の端を上げて俺を見ている、親友の瀧。彼らとの戦いが、今の俺を創り上げた。その視線が、エールが、プレッシャーが、全て俺の力になる。

『さあ、皆様、お待たせいたしました!いよいよ、本年度ランキング戦、決勝の時を迎えました!』

アナウンサーの絶叫のような声援に迎えられ、俺は光溢れるステージへと足を踏み出した。地鳴りのような大歓声。その全てが、俺と、もう一人の決勝進出者のために送られている。

『まずはブルーコーナー!並みいる上級生を次々と打ち破り、一年生にしてこの決勝の舞台まで駆け上がってきた、最峰学園の超新星!その変幻自在の智慧武器は、まさに予測不能!神崎ィィィ!ショウ!』

そして、俺の対面のゲートがゆっくりと開かれた。そこから現れたのは、第七学園不知火兵廠の深紅の制服に身を包んだ一人の少女。九重ルリ。小柄で華奢な体つき。だが、その身から放たれる存在感は、ギデオン先輩の威圧感とも、瀧の支配力とも違う、絶対的な〝死〟を予感させる、冷たく鋭利なオーラだった。

『対するはレッドコーナー!昨年度の覇者にして、今年もまた、その圧倒的な火力で全ての敵を沈黙させてきた、第七学園が誇る〝災厄の魔弾〟!彼女の二丁の銃が奏でるは、勝利の凱歌か、あるいは破滅の鎮魂歌か!九重ゥゥゥ!ルリ!』

俺と彼女は、ステージの中央で静かに視線を交わす。彼女の瞳は、凪いだ湖面のように、一切の感情を映していなかった。

審判が、俺たちの間に入り、最終的なルールを確認する。「試合は、どちらかの智慧武器の完全な機能停止、または、降参の意思表示によって決着する!両者、用意!」

俺とルリは、ゆっくりと距離を取り、構えた。闘技場全体が、先程までの喧騒が嘘のように、水を打ったように静まり返る。全ての観客が、固唾を呑んで、その瞬間を待っていた。

俺は、この瞬間のために創り上げた究極の盾のことを思う。瀧がくれた、膨大なデータのことを思う。ミコと共に戦った、あの鉄錆の渓谷を思う。そして、俺を信じ、支えてくれた、シュタのことを思う。

九重ルリは、ただ静かに、その黒と白の二丁拳銃の銃口を、真っ直ぐに俺の心臓へと向ける。

『決勝戦――始めっ!!』

審判が高らかに試合開始を告げた。その言葉が終わるか終わらないかの刹那、ルリの銃口から一筋の閃光が迸った。決勝戦の火蓋は、今、まさに切って落とされた。

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