マイルームから異世界転移?!二つの世界の力を使って成り上がる

破滅

文字の大きさ
21 / 46
新たなる仲間と深淵の影

第二十一話  遠征前夜、二人の覚悟

しおりを挟む
「……上等だ。そんな面白いこと、お前一人だけに独占させてたまるかよ」

瀧は俺の知る中で最高の挑戦的な笑みを浮かべて言った。その言葉を聞いて、俺の中で最後の覚悟が決まった。一人ではない。最強の軍師であり最高の親友であるこいつが隣にいる。ならばどんな厄災が待ち受けていようと乗り越えられないはずがない。

だが瀧の興奮は一瞬で、彼の本質である冷静な分析力へと切り替わった。
「待て、待て、待て。落ち着け翔。気持ちが逸るのは分かるが、いきなり飛び込むのは三流のやることだ。相手はクエストランクSの『厄災』なんだろ?俺たちはまだ傷も癒えてないし、何より俺はその『異世界』とやらの知識がゼロだ。丸腰で地獄に飛び込む趣味はねえ」

彼は不気味に渦巻くゲートと俺の顔を交互に見比べ、まるでチェスの盤面を評価するように状況を整理し始めた。
「まず情報だ。翔、お前が知っている異世界の情報を可能な限り正確に俺に伝えろ。常識、物理法則、敵の生態、使えるエネルギーの種類。何でもいい」
そして次に、と彼は自分の体と俺の体を指差した。
「装備だ。俺の『ヘキサ』はお前との戦いでボロボロだ。予備パーツもエネルギーも空に近い。それにこの世界の衣類や装備が向こうの環境で機能する保証もない。最高のパフォーマンスを発揮するには最高の準備が必要だ。違うか?」

……さすがと言うしかなかった。興奮と使命感で突っ走ろうとしていた俺の頭を、瀧は一瞬で冷静に引き戻した。
「……分かった。準備をしよう。幸い、今の俺たちには金もコネもある」

装備と戦略の準備
俺たちはすぐさま行動を開始した。向かった先はランキング戦の優勝特典として使用権を与えられたSクラスの個人工房。そこは最新鋭の工作機械やあらゆる物質を原子レベルから再構成できるマテリアル・シンセサイザーまで備えた、学園都市の科学技術の結晶のような場所だった。

「……はっ、すげえなここ。噂には聞いてたが国家予算レベルの研究施設じゃねえか」
工房の設備に舌を巻く瀧の横で、俺は早速管理コンソールを操作し、瀧の智慧武器『ヘキサ』の修復と強化を開始した。決勝戦で俺が破壊した起点ビットも希少な素材と俺の学園ポイントを惜しみなく投入することで、完全に復元、いや、以前よりも遥かに高い強度とエネルギー伝達効率を持つものとして再構築されていく。

その間、瀧は工房内の端末を使い猛烈な勢いで自分の装備を設計していた。
「いいか翔。俺の役割は前線で戦うお前のサポートだ。索敵、分析、戦術立案、そして攪乱。だから俺に必要なのは剣や鎧じゃない。これだ」

彼が画面に表示したのは軽量で隠密性の高い偵察用のボディスーツと、彼の戦術を拡張するための無数のガジェットだった。高感度センサーを搭載した自律飛行ドローン。敵のエネルギー属性を分析するマルチスペクトル・スキャナー。EMPグレネード、音響罠、高分子ワイヤー。さらに、数週間分の戦闘を想定した高容量のエネルギーパックと圧縮された高カロリーのレーション。
それはもはや学生の装備ではない。近未来の**特殊部隊員(オペレーター)**そのものだった。
俺は自分の持つ全ての学園ポイントを使い、瀧が設計したそれらの装備を一から十までシンセサイザーで製造した。

数時間後、俺たちの前には完璧な準備を整えた二人の〝戦士〟が立っていた。
智慧武器の修復を終え異世界の素材も組み込んで僅かな改良を施した俺。
そしてこの世界の最新技術の粋を集めた装備に身を包んだ瀧。
俺たちは互いの姿を見て満足げに頷いた。

結衣との約束
だが、出発の直前、俺の心に一つの引っかかりが生まれた。
「……なあ瀧。結衣にはなんて言えばいいと思う?」
俺たちの幼馴染。いつも俺たちのことを心配してくれていた彼女の顔が思い浮かぶ。何も言わずに消えるのはあまりにも不義理だ。
瀧も俺の気持ちを察したように少しだけ難しい顔をした。
「……本当のことは言えない。だがあいつを不安なまま置いていくのも違うだろ。お前から連絡してやれ」

俺は意を決して結衣に短いビデオコールを送った。画面の向こうで、パジャマ姿の結衣が眠そうな目をこすりながら「どうしたの、こんな夜中に?」と尋ねてくる。
俺はあらかじめ瀧と打ち合わせておいた嘘と真実を織り交ぜた説明を始めた。
「急な話で悪いんだが……俺と瀧、学園からの緊急招集で極秘の長期任務に就くことになった。かなり危険な任務で、しばらく連絡が取れなくなるかもしれない」
それはこの学園都市では決してあり得ない話ではなかった。
結衣の表情が一瞬で心配の色に染まる。「そんな……!翔君も瀧君もまだ怪我が治ってないのに……!」
「大丈夫だ。俺たちなら問題ない。……ただ帰ってくるまで心配かけると思ってな」
「……うん……」
結衣は何かを察したようにそれ以上は何も聞いてこなかった。ただ潤んだ瞳で俺と俺の隣に立つ瀧の姿を真っ直ぐに見つめた。
「……分かった。待ってる。だから絶対に二人で無事に帰ってきてね。約束だよ」
その言葉はどんな武器よりもどんな防具よりも俺の心を強くする最高の〝お守り〟になった。

異世界へ
再び自室に戻る。渦巻くゲートは依然として不吉な紫黒の光を放ち続けていた。
「シュタ、ゲートの状態は?」
『マスター、空間座標は極めて不安定です。通常転移と比較し、多大な負荷がかかることが予測されます。最悪の場合、転移先でマスターと瀧様が分離される可能性も……』
「上等だ。どんな状況になっても合流してやるべきことをやるだけだ」

俺はこの世界の最新装備を身に着けた瀧に改めて向き直った。
「準備はいいか瀧」
「ああ。いつでも行けるぜ〝マスター〟」
瀧が初めて俺をそう呼んだ。それはからかいのようでもあり、そして新たなパートナーとしての覚悟の表明のようでもあった。

俺たちは互いに頷き合うと決意を込めて目の前の混沌へと足を踏み出した。
瞬間、凄まじいGと光と闇が混じり合った嵐に全身が飲み込まれる。
時空がねじ切れ、引き伸ばされ、圧縮されるような筆舌に尽くしがたい感覚。

俺は遠のいていく意識の中で、ただ一つ、瀧の腕を固く掴んでいることだけを確かめていた。
厄災渦巻く異世界へ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

処理中です...