マイルームから異世界転移?!二つの世界の力を使って成り上がる

破滅

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新たなる仲間と深淵の影

第二十話 祝勝の宴と、厄災の兆し

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ランキング戦の熱狂が嘘のように、学園都市には穏やかな日常が戻りつつあった。決勝戦から5日が経過し、俺と瀧はまだ完治ではないものの、医務室のベッドから解放されるまでには回復していた。俺の脇腹と肩に残った傷跡は、あの死闘の激しさを物語る勲章のようでもあり、戒めのようでもあった。

優勝者となった俺には、学園から破格の報酬が与えられた。天文学的な額の学園ポイント、シュタの能力を拡張するための希少な素材群、そして、普段は教員や一部の上級生しか使用を許されないSクラスの**個人工房(プライベートワークショップ)**の使用権。だが、そんな栄誉よりも、俺にとっては医務室で交わした瀧との言葉の方が、遥かに価値のあるものに思えた。

「よお、翔。まだ生きてたか」
工房でシュタのメンテナンスと、異世界で得た素材の分析をしていた俺の元に、ひょっこりと瀧が顔を出した。「お前こそ。その様子だと、もうピンピンしてるみたいだな」「まあな。お前と違って、俺は負けた方だからな。ダメージも少なくて済んだのさ」軽口を叩きながらも、その表情は晴れやかだった。彼は俺との戦いに満足し、その上で次のステージを見据えている。

「それで?見つけたんだろ、お前の〝異世界〟で、次の〝面白いこと〟は」
瀧は核心を突くように尋ねてきた。彼の瞳はただの好奇心ではない。俺がこれから進むであろう道を、共に見たい、共に歩みたいという強い意志の色をしていた。「……ああ。いくつか、やりたいことはある。だが、その前に、やらなきゃいけないことがある」俺は決勝戦で九重ルリを打ち破るヒントをくれた、あの巨大な亀――鋼鉄亀のことを思い出していた。あの甲羅の構造を完全に解析し、シュタの新しい能力として実装する。それが今の俺の最優先事項だった。

異世界からの救難信号
その日の夜、俺は久しぶりに自室のベッドに横になっていた。壁に立てかけてあるランキング戦優勝の黄金のトロフィーが、月明かりを反射して鈍く輝いている。学園都市の頂点。その称号は今の俺にはひどく空虚なものに感じられた。俺の心はすでに窓の向こう側、剣と魔法の世界へと飛んでいた。ミコとの再会、冒険者ギルドでの新たな依頼、そしてまだ見ぬ強敵との戦い。考えるだけで胸が高鳴る。

「さて、シュタ。そろそろ向こうに戻って、〝アダマンタス〟の本格的な実装準備を……」
俺がそう呟き、いつものように窓に手をかけた、その時だった。

――世界が、軋んだ。

窓の外の景色がぐにゃりと歪む。見慣れた学園都市の夜景が、まるで水面に落とされた絵の具のように乱れ混ざり合う。「なんだ……これは……!?」これまで二つの世界を繋ぐゲートは常に安定していた。こんな異常な現象は初めてだ。部屋の空気が急速に冷え、肌を刺すような不吉な圧力が全身を包み込む。これはただの空間の揺らぎではない。もっと根源的な、世界の悲鳴のようなものだ。

『マスター!ゲートの向こう側から高密度の未知の魔力パターンを感知!危険です、離れて!』
シュタが警告を発するのと、ゲートが眩い紫黒の光を放ったのはほぼ同時だった。光の中から一羽の鳥が飛び出してきた。それは肉体を持つ鳥ではない。純粋な魔力だけで構成された青白い光の鳥だった。光の鳥は部屋を一周すると俺の目の前でその体を霧散させた。そしてその体があった場所には一枚の羊皮紙がひらりと舞い落ちた。

俺はゴクリと唾を飲み込み、その羊皮紙を手に取った。そこには異世界の文字で、焦燥と緊急性を物語る走り書きのような文章が記されていた。

“王都近郊、『大森林』深部にて、大規模な『深淵の裂け目(アビス・リフト)』を確認。”
“未知の瘴気が噴出し、周辺の生態系が異常変異。高ランクの魔物ですら、その領域から逃げ出している模様。”
“これは、王都フォルダルテの存亡に関わる、未曾有の『厄災』である。”
“ギルドは、これを緊急事態『クエストランクS』と認定。王都に滞在する全てのCランク以上の冒険者は、至急ギルド本部へ参集されたし。”

差出人は王都フォルダルテ冒険者ギルド、ギルドマスター。これはただの依頼(クエスト)じゃない。一つの世界からの、悲鳴にも似た救難信号だ。

俺はどうすべきか?ランキング戦を終え体はまだ万全ではない。学園都市では優勝者として様々な行事や責任が待っているだろう。だが脳裏に浮かぶのは異世界の風景。人の良い宿屋の主人、快活な獣人の少女ミコ、そしてまだ見ぬ冒険。あの世界は俺に新しい力を、新しい視点をくれた、俺にとってのもう一つの〝故郷〟になりつつある場所だ。見捨てるなんて選択肢は最初から存在しなかった。

瀧との再出発
俺はすぐにタブレットを取り出し、ただ一人の男に短いメッセージを送った。『瀧、緊急事態だ。今すぐ俺の部屋に来てくれ。パスワードは知ってるだろ』

数分後、息を切らして駆け込んできた瀧は、部屋の異常な雰囲気と俺のただならぬ表情にすぐに事態を察した。俺は何も言わずにギルドからの羊皮紙を彼に手渡した。もちろん瀧には異世界の文字は読めない。だがそこに込められた切迫した魔力の残滓は、彼にも感じ取れたはずだ。

「……翔、これは……」
「お前の出番だぜ、軍師殿」

俺は窓に手をかけた。その向こう側はもはや安定した夜景ではなく、不吉な紫黒の光が渦巻く嵐の海へと変貌していた。

「お前、言ったよな。『今度は俺も混ぜろ』って。どうやら、退屈してる暇はなさそうだ」
俺は不敵に笑って見せた。「どうする?リアルで死ぬかもしれない、クエストランクSの冒険だ。今ならまだ、引き返せるぜ」

瀧は一瞬だけ息を呑んだ。だがすぐにその瞳に恐怖と、それを遥かに上回る歓喜と興奮の光を宿らせた。

「……上等だ」
彼は俺の知る中で最高の笑顔で言った。「そんな面白いこと、お前一人に独占させてたまるかよ」

こうして、俺たちの本当の冒険が今、始まろうとしていた。それはもはや個人のランキングを競うゲームではない。一つの世界の運命を懸けた、過酷な戦いの始まりだった。

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