マイルームから異世界転移?!二つの世界の力を使って成り上がる

破滅

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交差する世界とランキング戦

第十九話  勝敗の彼方、始まりの君

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九重ルリの最強の矛が、俺の仕掛けた最大の罠――『重力レンズグラビティ・レンズ』へと吸い込まれていく。彼女の顔に今日初めて、焦りと驚愕の色が浮かんだ。「なっ……!自分の攻撃を、捻じ曲げて……!?」

だが彼女もまた、七つの学園の頂点を争う傑物。ただ呆然と自らの破滅を見ているだけではなかった。絶望的な状況に陥ったそのコンマ数秒の間に、彼女は思考を完了させ行動を起こしていた。彼女は残った白の拳銃を、増幅され自身に跳ね返ってくる光線へと向けた。そして残ったエネルギーの全てをその光線を相殺するためだけの弾丸へと注ぎ込み連射する。さらに、その射撃の反動を利用して自身の体を後方へと弾き飛ばす。完全な防御や回避は不可能。ならばその威力を少しでも減衰させ、致命傷だけは避ける。それが彼女が導き出した、絶望の中での唯一の正解だった。

そして――二つの光が衝突した。

凄まじい轟音と閃光が極大闘技場を支配する。ステージは爆心地から砕け散り、観客席を覆う防御バリアが激しく明滅した。やがて爆風が収まり、もうもうと立ち込めていた煙がゆっくりと晴れていく。そこに広がっていたのは、壮絶な戦いの結末だった。

俺の切り札であった要塞、『アダマンタス』はその役目を終え、光の粒子となって消滅していた。そしてステージの両端には二人の満身創痍の挑戦者がかろうじて立っていた。

九重ルリ。彼女はステージの端に吹き飛ばされ、肩で激しく息をしていた。身に纏う不知火兵廠の制服はところどころが焼け焦げ、彼女の最強の矛であった黒の拳銃は無惨に砕け散っている。しかしその手にはまだ白の拳銃が固く握られていた。その瞳にはもはや凪いだ湖面のような静けさはない。悔しさと痛みと、それでもなお消えない熾火のような闘志が燃え盛っていた。

そして俺。アダマンタスと重力レンズの展開は、コアとしていた魔石のエネルギーだけでなく俺自身の氣力と体力をも根こそぎ奪い去っていた。脇腹の傷が再び開き、意識が朦朧とする。シュタはエネルギーを使い果たし、俺の腕で淡い光を放つブレスレットの形をかろうじて維持しているだけ。もう変幻する力は残っていない。

戦いは最終局面を迎えていた。
もはや高度な戦術も派手な大技もない。残された最後の気力と意志の力をぶつけ合うだけの、あまりにも原始的で、あまりにも純粋な最後の決闘だ。

最後の意志の弾丸
「……まだ、終わらない」

ルリが絞り出すような声で言った。彼女は残された白の拳銃を震える腕でゆっくりと俺に向ける。そして自身の生命力、勝利への渇望、背負ってきたもの、その全てをたった一発の弾丸へと注ぎ込み始めた。銃口に小さな星のような、しかしどこまでも深く重い光が宿る。それは速度や威力ではない。撃ち手の〝意志〟そのものが、目標をどこまでも追尾し、喰らい尽くすまで消えることのない執念の弾丸。

彼女は、その最後の弾丸を静かに放った。

弾丸はこれまでの彼女の攻撃とは違い、驚くほどゆっくりと、しかし絶対に逸れることのない確かな軌道を描いて俺の心臓へと向かってくる。逃げられない。今の俺の体力では回避は不可能だ。シュタに防御する力も残ってはいない。
万策、尽きた。

――本当に、そうか?

俺の脳裏にこれまでの戦いの記憶が走馬灯のように駆け巡る。
親父に叩きこまれた力の受け流し方。
異世界でモンスターの殺気を肌で感じたあの瞬間。
由縁先輩の一点に全てを懸けた剣。
雨宮先輩の人間の心を映す幻。
ギデオン先輩の絶対的な力の奔流。
そして瀧が教えてくれた、盤面を支配するということの意味。

全ての経験が俺の中で一つになる。
俺は最後の力を振り絞った。だがそれは攻撃のためでも防御のためでもない。ただ心を静め、研ぎ澄ませるため。全ての雑念を捨て去り、意識を〝ゼロ〟の状態へと持っていく。

目の前にルリの意志を乗せた弾丸が迫る。
俺はそれを避けようとも防ごうともしなかった。ただその弾丸の持つエネルギーの流れを、その弾丸が辿ろうとする〝道〟を見据える。

そして弾丸が俺の胸に触れる寸前。俺の右手がまるで水面に触れるかのように静かに、柔らかく弾丸の側面に触れた。これは技ではない。ただ力の流れをほんの少しだけ変えてやるだけ。親父の体術の極意。そして異世界で学んだ、気配と魔力の流れを読む感覚の究極の応用。

俺の手に導かれた弾丸は、その軌道をわずかに逸らし、俺の肩を深く抉りながら背後へと通り過ぎていった。激痛が走る。だが心臓は貫かれていない。

ゴオッと音を立てて俺を通り過ぎた弾丸が、背後の闘技場の壁に突き刺さり大穴を開けた。それを見届けることなく九重ルリは全ての力を使い果たし、ゆっくりとその場に崩れ落ちた。カランと乾いた音を立てて最後の拳銃が手から滑り落ちる。
彼女の智慧武器は完全に沈黙した。

俺もまた立っているのがやっとだった。肩からの出血がひどい。視界が白く染まっていく。俺はその場に崩れ落ちるように膝をついた。

静寂。
闘技場を支配していた熱狂が嘘のように消え去っていた。誰もが目の前で起きた、あまりにも壮絶な決着に言葉を失っていた。
やがて審判が我に返り、震える声で高らかに叫んだ。

「……智慧武器の機能停止を確認!よって、勝者、神崎ィィィ!ショウ!!」

その言葉が引き金となり、一瞬の静寂は闘技場全体を揺るがす歴史的な大歓声へと変わった。

勝利のその先へ
俺は、おぼつかない足取りで倒れているルリの元へと歩み寄った。そして何も言わずに手を差し伸べる。ルリはその手を取ろうとはしなかった。ただ悔しさと、しかしどこか解放されたような複雑な表情で俺を見上げた。
「……なぜ、勝たねばならなかった」彼女は誰に言うでもなくそう呟いた。「第七学園はいつだって〝兵器〟だと、他の学園から蔑まれてきた……。だから私が勝って、私たちの価値を、力を……証明しなければ、ならなかった……」

俺は彼女に掛ける言葉を見つけられなかった。ただ差し伸べた手はそのままにしておいた。

表彰台の一番高い場所で俺は黄金のトロフィーを掲げた。学園都市、七大学園の頂点。その称号を俺は手に入れた。
だが俺の心はもうここにはなかった。
この力の意味を、この力の使い方を、俺はまだ本当の意味では知らない。
その答えはきっと、あの窓の向こうに広がる果てしない異世界にある。

瀧の「今度は俺も混ぜろよ」という言葉が頭に響く。
そうだ、俺たちの本当の冒険はまだ始まったばかりなのだ。
俺はトロフィーの重みを感じながら遠い異世界へと想いを馳せていた。
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