マイルームから異世界転移?!二つの世界の力を使って成り上がる

破滅

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新たなる仲間と深淵の影

第二十三話  瘴気の巨王、二人の初陣

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ドローンの最後の映像が俺たちの網膜に焼き付いていた。木々の間を支配するように闊歩する巨大で禍々しい異形の影。俺たちが進むべき道を地獄の番犬のように塞ぐ、あの怪物。

「……嘘だろ。あんなのがこの森をうろついてるのかよ」
俺は乾いた喉で呟いた。遠くにいるはずなのにその存在が放つ、濃密で邪悪なプレッシャーがビリビリと伝わってくる。あれは昨日までに相手にした**瘴気獣(ミアズマ・ビースト)**とは格が違う。

「……落ち着け翔。データを分析する」
隣の瀧はすでに冷静さを取り戻していた。彼は残ったステルス・ドローンを怪物の周囲に展開し、その生態と能力の分析を開始する。多機能端末のディスプレイに次々と情報が表示された。

「……対象を仮に『瘴気の巨王(ミアズマ・タイラント)』と呼称する。元になった生物はおそらく大森林のフォレスト・ベアロードだろう。だが瘴気による異常変異で原型を留めていない。全長推定10メートル。複数の腕を持ち全身が攻撃性の高い瘴気を放出する膿疱に覆われている。動きは鈍重に見えるが突進力と腕の一撃はギデオン先輩のガイアブレイカーに匹敵、あるいはそれ以上と予測される」

瀧の分析を聞きながら俺は感覚を研ぎ澄ます。彼がデータで読み解く脅威を俺は魔力と氣の流れで肌で感じ取っていた。(……力が不安定だ)瘴気の巨王のエネルギーは強大だが、ただ荒れ狂うだけの制御されていない暴力の塊だった。九重ルリや瀧が見せた洗練された戦術や意志の力はそこにはない。そして巨体の中心、胸部あたりにひときわ大きく禍々しい瘴気を脈動させる〝核〟のようなものがあるのも感じ取れた。弱点はある。問題はどうやってあの巨体に致命傷を与えられるかだ。

「……なあ瀧。あいつを殺す必要はない。俺たちの目的は王都へたどり着くことだ。あいつをどうにかして〝やり過ごす〟ことはできないか?」
「無理だ」と瀧は即答した。「ドローンの広域スキャンによればこの先の街道は一本道。左右は切り立った崖とさらに瘴気の濃い沼地だ。あいつを突破しない限り俺たちに道はない。つまりやるしかないんだ。……だが真正面から戦うのは自殺行為だ」

瀧は俺の方を向いた。その瞳には恐怖ではなく、複雑なパズルを前にした天才軍師の獰猛な光が宿っていた。「だから策を弄する。翔、お前と俺の持てる全てを組み合わせた最高のコンビネーションをな」

即席の作戦と奇襲
俺たちは即席の作戦を立てた。まず瀧が彼の持つ全てのガジェットを駆使して陽動と攪乱を行う。ドローンを囮にし音響グレネードとフラッシュバンで巨王の感覚を麻痺させ完璧な好機(チャンス)を作り出す。そしてその一瞬の隙を突き俺が浄化のエネルギーを乗せた最大の一撃を奴の〝核〟に叩き込む。学園の科学技術(テクノロジー)が作り出す一点の好機。異世界の力(パワー)が穿つ必殺の一撃。二つの世界の力が融合した俺たちの初陣だ。

「……準備はいいな翔」
「ああ。お前の完璧な采配、期待してるぜ」
俺たちは岩陰から飛び出した。作戦開始だ。

「まずはご挨拶だ!行け!」
瀧の号令で三機のドローンが異なる角度から巨王へと突っ込んでいく。「グオオオオオオオッ!」巨王はその単純な挑発に乗り、鬱陶しい羽虫を叩き潰すかのように巨腕を振り回した。ドローンは巧みに回避するが巨王の注意は完全にそちらへと向けられている。

「今だ!『サウンドショック』!『フラッシュボム』!」
瀧が手元の端末からコマンドを打ち込む。ドローンが巨王の頭上で同時に自爆した。一つは鼓膜を破るほどの強烈な不協和音を発生させ、もう一つは網膜を焼き切るほどの閃光を放つ。「グギィィィィアアアアアッ!!」感覚器官を直接攻撃され巨王は苦悶の絶叫を上げた。その巨体がよろめき無防備な背中をこちらに晒す。完璧な一瞬の隙。

「翔、行けぇぇぇぇっ!!」
瀧の叫びが俺の背中を押した。俺はランキング戦で鍛え上げた脚力を最大限に使い瘴気に汚された大地を疾走する。「シュタ!あの核を貫くための最高の一撃を!」

シュタが俺の右腕でその姿を変える。もはや剣ではない。全てのエネルギーをただ前へ一点へと突き出すためだけの白銀に輝く鋭利な杭(パイルバンカー)。異世界で得た水の魔石のエネルギーがその先端に蒼く清らかな光となって収束していく。『浄化の穿杭ピュリファイ・パイル』!

俺は巨王の無防備な背後へと回り込みその胸にある禍々しい瘴気の〝核〟へと狙いを定めた。

予測不能な展開と勝利
だが――世の中には完璧な作戦など存在しない。
俺が渾身の一撃を叩き込もうとしたその瞬間。苦悶に喘いでいたはずの巨王が無数にある目の一つをギョロリと動かし、俺の姿を捉えたのだ。奴は本能だけで俺の殺気を察知した。「しまっ――!」

巨王は絶叫を上げながら巨体を無理やり反転させ、口から致死性の高い瘴気の液体を至近距離で俺へと吐き出した。回避不能。全てが終わる。そう思ったその時。

「翔、伏せろぉっ!」
瀧の絶叫と同時に彼の腕から一本のワイヤーが射出された。ワイヤーは正確に俺の足首に絡みつき、問答無用で俺の体を横方向へと引っ張った。「うおっ!?」俺の体は地面を転がるようにして瘴気のブレスの直撃コースからわずかに逸れる。肩のアーマーがブレスに触れジュウッと音を立てて溶けていくが致命傷は避けた。

瀧の最後のバックアップ。そしてそのおかげで俺の体勢は崩れたが、逆に新たな好機が生まれていた。ワイヤーに引かれた遠心力を利用し、俺は回転しながら空中で体勢を立て直す。そしてがら空きになった巨王の脇腹、その中心にある〝核〟へと力の限り浄化の穿杭を突き立てた。

ズブッと肉を貫く鈍い感触。そして訪れる一瞬の静寂。

次の瞬間、巨王の体内から凄まじい蒼い光が溢れ出した。「―――ッッ!!!」それはもはや声にならない魂そのものの断末魔。純粋な浄化のエネルギーが瘴気の塊である核と激しく反応し、その存在そのものを内側から消滅させていく。巨王の体はまるで陽光に晒された闇のように、端から端から美しい光の粒子となって霧散していった。

やがて巨王がいた場所には不気味な脈動を繰り返す人の頭ほどの大きさの紫黒の水晶だけが残されていた。「……はぁ、はぁ……」「……ぜぇ……ぜぇ……」俺と瀧はその場にへたり込み荒い息を繰り返していた。俺たちの初めての共同作業。それはお互いの全てを出し切った、ギリギリの勝利だった。

俺は残された紫黒の水晶――おそらくは『瘴気の核(ミアズマ・コア)』とでも呼ぶべきものだろう――を慎重に回収した。これはこの厄災の正体を解明するための重要な手がかりになるかもしれない。

「……行くぞ瀧。王都はまだ遠い」
「……ああ。分かってる」

俺たちは互いに肩を貸し合いよろよろと立ち上がった。最初の関門は突破した。

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