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静かなる日常と、新たな絆
第三十八話 光の道、要塞からの脱出
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「――警告。クラスSのセキュリティ侵害を確認……」
けたたましい警報音と無機質な合成音声が、不知火兵廠の夜を切り裂いた。地上へ脱出した俺たちを待っていたのは希望の光ではなく、サーチライトに照らされ、数百の銃口が向けられる新たな地獄だった。
「――九重ルリ三等特尉!及び所属不明の協力者一名!」
拡声器から響く警備部隊指揮官の威圧的な声。「国家反逆罪に相当する第一級機密窃盗の現行犯として、お前たちを拘束する!即座に武器とケースを地面に置け!抵抗は許さん!」
絶体絶命の包囲網。この殺意に満ちた状況からの脱出は不可能に思えた。
ルリの機転と瀧の脱出プラン
しかし、隣のルリは絶望するどころか、その瞳に冷たい闘志を燃やしていた。彼女は俺の前に進み出ると、拡声器の主を真っ直ぐに睨みつけた。
「――私は第七学園不知火兵廠三年、九重ルリ。本年度ランキング戦準優勝者である。これは反逆行為ではない。学園都市緊急事態特別条項第七条に基づく〝正当な職務執行〟である。この者は最峰学園からの協力者。我々は学園都市全体を脅かす未曾有の危機を阻止するために行動している」
彼女の堂々とした態度に、警備部隊の指揮官は一瞬怯んだ。「……特別条項だと……?そんなものは聞いたことがない!」
「貴官の権限レベルでは閲覧できないだけの話だ。今すぐ学園長に確認を取るがいい。だがその確認に時間をかけている間に取り返しのつかない事態となっても私は一切関知しない」
これは完璧なはったりだったが、俺たちに貴重な時間をもたらした。指揮官が部下に確認を急がせる数十秒。その黄金の時間に、俺の耳に親友の声が響いた。
『――よくやったルリ!天才的な時間稼ぎだ!テスラ、準備はいいな!』
『いつでも!こっちのメインフレームへのハッキングはとっくに終わってるよ!』
『よし!翔、ルリ、よく聞け!今から俺の人生で最大で、最高にイカれた脱出プランを開始する!』
瀧の声は、追い詰められているはずなのにどこまでも楽しそうだった。
『まずテスラが不知火兵廠のメイン送電網に過負荷をかける。キャンパス全体が数秒間だけ完全なブラックアウトに陥るはずだ』
「その暗闇の中でどうやって逃げるんだ!」俺は心の中で叫んだ。
『そこで第二段階だ。ブラックアウトの直前、俺がキャンパス内の全てのホログラフィック広告のプロジェクターをジャックする。そしてお前たちが進むべき〝道〟を光で描いてやる』
「光の道……!」
『ああ。それはお前たちがいる場所からこの鉄壁の包囲網をすり抜けて、キャンパスの地下へと繋がる古いメンテナンス用のマンホールまでを繋ぐたった10秒間だけの脱出ルートだ。……いいか、その光の道を一歩も踏み外すな。そこ以外は全て地獄だと思え』
指揮官が再び拡声器で怒鳴った。「――九重ルリ!学園長からの返答だ!そのような条項は存在しない!貴様、やはり……!」
『――今だ、テスラ!やれ!』瀧の絶叫が響いた。
闇の中の光の道
その瞬間、世界から全ての光が消えた。サーチライトも、セントリーガンの赤いセンサー光も、警備兵たちのヘルメットのライトも、何もかもが漆黒の闇に飲み込まれた。警備兵たちの混乱した怒声があちこちから聞こえる。
そしてその完全な闇の中に、一筋の青い光の道がまるで天からの啓示のように地面に描き出された。それは混乱する警備兵たちの足元を縫うように、機能を停止したセントリーガンの死角を正確に貫いて伸びていた。
「――行くぞルリ!」
俺はZ粒子反応炉のケースを固く抱え直し、その光の道を全力で疾走した。ルリも俺のすぐ後ろを続く。俺たちはただひたすらに走った。闇の中、唯一の希望の光を信じて。
やがて光の道の終着点、古いマンホールの蓋が見えた。その時だった。背後で非常用電源が起動する低い唸り声が聞こえ始め、闇の終わりが近いことを告げた。
俺は最後の力を振り絞り自らの氣を両腕に集中させた。そして錆びついた重い鉄の蓋をまるで紙切れのように引き剥がした。開かれた暗い穴の中へ俺とルリは飛び込む。俺たちが完全にその姿を消した直後、キャンパスの照明が一斉に復活した。そして俺たちがさっきまで立っていたその場所に、数百の銃口から放たれたレーザーの雨が降り注いだ。
新たな冒険の始まり
俺たちは暗く湿った地下水路の底にいた。下水の不快な匂いと、北見の6月の夜の冷たい空気が混じり合っている。だがその場所は俺たちにとって何よりも安全な聖域だった。通信機からノイズ混じりの、しかし勝利に満ちた瀧の声が聞こえる。
『……第一段階、完了。お前たちは完全に奴らの監視網から消えた。……ルリ、ここからはお前の出番だぜ』
ルリは濡れた髪をかき上げながら立ち上がった。「……ああ。この地下水路は七つの学園全ての地区に繋がっている。ここを使えば一度も地上に出ることなく機巧院のテスラとかいう変人の工房までたどり着ける」
彼女は俺の方を見て不敵に笑った。「……さてと。ここからは私たちの本当の秘密の冒険の始まりね」
俺たちはシュタを救うための最後の希望を手に入れた。だがその代償として、俺たちはこの学園都市全ての秩序から追われる逃亡者(フュージティブ)となった。
けたたましい警報音と無機質な合成音声が、不知火兵廠の夜を切り裂いた。地上へ脱出した俺たちを待っていたのは希望の光ではなく、サーチライトに照らされ、数百の銃口が向けられる新たな地獄だった。
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拡声器から響く警備部隊指揮官の威圧的な声。「国家反逆罪に相当する第一級機密窃盗の現行犯として、お前たちを拘束する!即座に武器とケースを地面に置け!抵抗は許さん!」
絶体絶命の包囲網。この殺意に満ちた状況からの脱出は不可能に思えた。
ルリの機転と瀧の脱出プラン
しかし、隣のルリは絶望するどころか、その瞳に冷たい闘志を燃やしていた。彼女は俺の前に進み出ると、拡声器の主を真っ直ぐに睨みつけた。
「――私は第七学園不知火兵廠三年、九重ルリ。本年度ランキング戦準優勝者である。これは反逆行為ではない。学園都市緊急事態特別条項第七条に基づく〝正当な職務執行〟である。この者は最峰学園からの協力者。我々は学園都市全体を脅かす未曾有の危機を阻止するために行動している」
彼女の堂々とした態度に、警備部隊の指揮官は一瞬怯んだ。「……特別条項だと……?そんなものは聞いたことがない!」
「貴官の権限レベルでは閲覧できないだけの話だ。今すぐ学園長に確認を取るがいい。だがその確認に時間をかけている間に取り返しのつかない事態となっても私は一切関知しない」
これは完璧なはったりだったが、俺たちに貴重な時間をもたらした。指揮官が部下に確認を急がせる数十秒。その黄金の時間に、俺の耳に親友の声が響いた。
『――よくやったルリ!天才的な時間稼ぎだ!テスラ、準備はいいな!』
『いつでも!こっちのメインフレームへのハッキングはとっくに終わってるよ!』
『よし!翔、ルリ、よく聞け!今から俺の人生で最大で、最高にイカれた脱出プランを開始する!』
瀧の声は、追い詰められているはずなのにどこまでも楽しそうだった。
『まずテスラが不知火兵廠のメイン送電網に過負荷をかける。キャンパス全体が数秒間だけ完全なブラックアウトに陥るはずだ』
「その暗闇の中でどうやって逃げるんだ!」俺は心の中で叫んだ。
『そこで第二段階だ。ブラックアウトの直前、俺がキャンパス内の全てのホログラフィック広告のプロジェクターをジャックする。そしてお前たちが進むべき〝道〟を光で描いてやる』
「光の道……!」
『ああ。それはお前たちがいる場所からこの鉄壁の包囲網をすり抜けて、キャンパスの地下へと繋がる古いメンテナンス用のマンホールまでを繋ぐたった10秒間だけの脱出ルートだ。……いいか、その光の道を一歩も踏み外すな。そこ以外は全て地獄だと思え』
指揮官が再び拡声器で怒鳴った。「――九重ルリ!学園長からの返答だ!そのような条項は存在しない!貴様、やはり……!」
『――今だ、テスラ!やれ!』瀧の絶叫が響いた。
闇の中の光の道
その瞬間、世界から全ての光が消えた。サーチライトも、セントリーガンの赤いセンサー光も、警備兵たちのヘルメットのライトも、何もかもが漆黒の闇に飲み込まれた。警備兵たちの混乱した怒声があちこちから聞こえる。
そしてその完全な闇の中に、一筋の青い光の道がまるで天からの啓示のように地面に描き出された。それは混乱する警備兵たちの足元を縫うように、機能を停止したセントリーガンの死角を正確に貫いて伸びていた。
「――行くぞルリ!」
俺はZ粒子反応炉のケースを固く抱え直し、その光の道を全力で疾走した。ルリも俺のすぐ後ろを続く。俺たちはただひたすらに走った。闇の中、唯一の希望の光を信じて。
やがて光の道の終着点、古いマンホールの蓋が見えた。その時だった。背後で非常用電源が起動する低い唸り声が聞こえ始め、闇の終わりが近いことを告げた。
俺は最後の力を振り絞り自らの氣を両腕に集中させた。そして錆びついた重い鉄の蓋をまるで紙切れのように引き剥がした。開かれた暗い穴の中へ俺とルリは飛び込む。俺たちが完全にその姿を消した直後、キャンパスの照明が一斉に復活した。そして俺たちがさっきまで立っていたその場所に、数百の銃口から放たれたレーザーの雨が降り注いだ。
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