マイルームから異世界転移?!二つの世界の力を使って成り上がる

破滅

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静かなる日常と、新たな絆

第三十七話  奈落の脱出、百二十秒の賭け

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「――警告。セクター・タルタロスにて、クラスSのセキュリティ侵害を確認。全施設を完全封鎖。及び内部の滅菌プロトコルを開始します。全職員は120秒以内に退避してください」

冷たい合成音声のアナウンスが、俺たちの絶望を高らかに宣言した。直後、命からがら潜り抜けてきた巨大な防爆扉が、地獄の顎が閉じるかのように重々しい音を立てて完全にロックダウンされた。赤い非常灯が狂ったように明滅し、俺たちの顔を不気味に照らし出す。

「……嘘、でしょ……」テスラの震える声が通信機から聞こえる。『……まずいな。完全に閉じ込められた』瀧の声もいつもの冷静さを失っていた。『不知火の滅菌プロトコルは二種類ある。高濃度の神経ガスを散布するか、区画全体を超高温のプラズマで焼き尽くすかだ。どちらにしろ俺たちは助からない』

120秒後に訪れる確実な死。その理不尽なカウントダウンに、俺は崩れ落ちそうになる膝を叱咤し、思考を巡らせた。何か、この完全な袋小路から脱出する道はないのか。

その時、俺の視線は部屋の中央、磁場発生装置の上に静かに鎮座する〝それ〟に釘付けになった。俺たちが命を懸けて手に入れようとした希望。渦巻く不安定なエネルギーの球体、『Z粒子反応炉』だ。

決死の脱出作戦
「……なあ瀧、テスラ」俺は狂気の沙汰としか思えない可能性に賭けることにした。「このリアクターを今、ここで使えないか?」
『……はあ!?』テスラが素っ頓狂な声を上げた。『あんた、正気!?あれはまだ安定稼働すらままならない実験用の超危険物だよ!下手にエネルギーを引き出そうとしたら、それこそこの施設ごと吹き飛ぶ!』
「吹き飛ぶ前に、目の前の扉だけを吹き飛ばせばいいんだろ?」

俺は床にスクラップとなって転がっているケルベロスの残骸を指差した。「こいつのメインウェポン、プラズマキャノンはまだ使えるはずだ。このZ粒子反応炉をこいつの動力源として直結させ、オーバーロードさせる。そして扉ごと出口を作り出すんだ!」

『……無茶苦茶だ』瀧が呻いた。『だが、確かにそれしか道はないかもしれん。……テスラ、やれるか!?ケルベロスの兵装システムに外部リアクターを強制的に認識させるパッチプログラムを今すぐ作れ!』
『……分かった、やってやるよ!この私の天才的な頭脳で不可能を可能にしてみせる!』テスラの声が再び力強さを取り戻した。

俺たちは残されたわずかな時間の中で最後の共同作業を開始した。「ルリ、ケルベロスの内部構造は分かるな!」
「ああ。任せろ」ルリは迷っている暇はないと覚悟を決めたようだった。彼女はケルベロスの装甲版を手慣れた様子で剥がしていく。その下から複雑なエネルギーケーブルと制御基盤が姿を現した。

俺はケルベロスの肩部に装備されていた巨大なプラズマキャノンを力任せに引き剥がした。そしてそれを防爆扉へと向けて構える。
『ルリ、キャノンの主電源ケーブルを引き抜け!そしてテスラが今転送したバイパス回路の設計図通りにリアクターの出力ポートと直結させろ!』瀧の的確な指示が飛んだ。ルリは寸分の狂いもなくその作業をこなしていく。

一筋の光
天井のスプリンクラーのような噴射口から、シューという不吉な音が聞こえ始めた。滅菌プロトコルが最終段階に入ろうとしている。
カウントダウンは残り20秒。

「……終わった!」ルリが叫ぶ。
俺は震える手で、不安定に、しかし凄まじいエネルギーを放ちながら脈動するZ粒子反応炉のコアを、プラズマキャノンに接続されたバイパス回路へとセットした。瞬間、キャノン全体がギシギシと悲鳴のような音を立て、その銃口に直視できないほどの白い光が収束していく。

『エネルギー出力、危険領域(レッドゾーン)を突破!暴走するぞ!翔、早く、撃て!』

俺はキャノンのトリガーとなる最後のエネルギー伝達回路に、自らの氣をほんのわずかだけ流し込んだ。それが引き金となった。

「――いっけええええええええっ!!」

俺の絶叫と共にプラズマキャノンから白い〝光〟が放たれた。いや、それはもはや光ではなかった。空間そのものを消滅させながら突き進む、純粋な破壊の奔流。

轟音はなかった。ただ一瞬の完全な静寂。そして俺たちの目の前にあった厚さ数メートルのチタン合金製の巨大な防爆扉が、まるで最初からそこには何もなかったかのように綺麗さっぱりと〝消滅〟していた。扉だけでなく、その向こうの廊下の壁も天井も全てが抉り取られ、溶けた鉄の匂いが立ち込める一本の灼熱のトンネルが生まれていた。

「……行くぞ!」

俺はリアクターのコアを特殊な遮断ケースに素早く収納すると、仲間たちに叫んだ。その灼熱のトンネルを俺たちは駆け抜ける。そして地上へと続く階段を駆け上がった。

新たな地獄
俺たちが再び不知火兵廠の夜のキャンパスに姿を現したその時。
俺たちは見た。

カシャカシャカシャという無数の機械音。俺たちを取り囲むように展開する数十体の警備ドローンと自動追尾式のセントリーガン。そしてその向こう側に立つ百人を超える完全武装の警備兵たち。その全ての銃口が寸分の狂いもなく俺たち四人へと向けられていた。

俺たちは確かに地獄の奈落からは脱出した。だがその先に待っていたのは地上の兵士たちが作り出す新たな地獄だった。通信機から聞こえてくる瀧の呆れたような声。『……やれやれ。どうやら本当の鬼ごっこはここからみたいだな』

隣でルリが忌々しげに、しかしどこか楽しそうに呟いた。「……さてと。ここからは第2ラウンドね」

俺は手に確かに握りしめたZ粒子反応炉のケースの重みを感じながら、覚悟を決めた。

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