DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?

破滅

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第一章 不遇職の拳士

第11話「ギルドの震撼と新たな階梯」

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豚鬼の王オークキングが光の粒子となって消え去った後、翔はその場に座り込んだまま、目の前で起こった出来事を反芻していた。凄まじい疲労感と、それを上回る達成感。そして、視界を埋め尽くすシステムメッセージの奔流。彼は、自分がとんでもないことを成し遂げてしまったという事実を、少しずつ実感し始めていた。

「レベル30…称号…ユニークボス…」

一つ一つの単語が、彼の脳内で反響する。これは、ゲームの序盤で起こるようなイベントでは断じてない。彼は、偶然と実力によって、この世界の法則を大きく歪めてしまったのだ。
我に返った翔は、まずオークキングが遺したドロップアイテムを確認した。そこには、山のような素材や大量の通貨と共に、一際異彩を放つ一対の籠手が鎮座していた。

――――――――――――――――――――
豚鬼王の籠手オークキング・ガントレット
・レア度: Unique
・種別: 籠手
・装備条件: STR 80以上
・性能: DEF+50, STR+15
・特殊効果: 【王の咆哮キングス・ロア】…周囲の敵を短時間、恐怖状態にする。MPを消費。
・説明: 豚鬼の王の魂が宿った籠手。装備者自身の闘気を増幅させる力を持つ。
――――――――――――――――――――

「…ユニーク装備か。とんでもない性能だな」

現在の自分のステータスを確認するため、彼は改めてメニューを開いた。

Name: ショウ 種族: ドラゴヒューマン Lv: 30
職業: 【拳士】 職業Lv: 20
称号: 最速討伐者さいそくとうばつしゃ
HP: 102/102 MP: 60/60
主要ステータス
STR (筋力): 96 VIT (体力): 75
DEF (防御力): 80 AGI (敏捷性): 92
DEX (器用さ): 71 INT (知力): 68
MND (精神力): 55 LUK (幸運): 15
スキルポイント: 52


「…はは。笑うしかないな、これは」

全てのステータスが、先程までとは比べ物にならないほどに跳ね上がっている。これならば、新たな籠手を装備することも可能だ。彼は早速、そのユニークな籠手を装着した。ずっしりとした重みが、彼の新たな力を象徴しているかのようだった。

「さて、どうしたものか…」

オークの討伐依頼は達成したが、このオークキングの一件を、ギルドにどう報告すべきか。翔はひとしきり悩んだ末、正直に話すことを決めた。これだけの事態だ、下手に隠し通せるものではないだろう。彼は、オークキング討伐の証として、ひときわ巨大な牙をアイテムボックスにしまうと、王都への帰路についた。

――――――――――――――――――――

冒険者ギルドに戻ると、昼間よりもさらに多くの冒険者でごった返していた。翔はその喧騒を抜け、まっすぐに例のエルフの女性職員がいるカウンターへと向かう。

「すいません、依頼達成の報告にきました」

「はい、お疲れ様です。…ええと、オークの討伐依頼ですね。討伐の証のご提出をお願いします」

翔がオークの牙を10本カウンターに並べると、職員は手際よく確認作業を進めていく。ここまでは、いつも通りの手続きだ。問題は、この後だった。

「…それと、もう一つ報告があるんですが」

「はい、なんでしょうか?」

翔は少し逡巡した後、意を決して口を開いた。
「えーと…オークキングというモンスターを倒した、という報告です」

「はい、オーク…」
職員の言葉が、途中で止まる。彼女はゆっくりと顔を上げ、翔の顔をまじまじと見つめた。
「…え? すいません、お客様。今、オークキングと…おっしゃいましたか?」

「ああ。オークキングの討伐報告をしにきた」

「……! あ、お客様、冗談はおやめください! あなたは本日登録されたばかりのGランク冒険者のはずです。オークキングは、最低でもCランクのパーティでの討伐が推奨される高難易度モンスターですよ?」

彼女の声は、困惑と不信に満ちていた。周囲の冒険者たちも、そのやり取りに気づき、何事かとこちらに注目し始めている。

「証拠なら、これがある」

翔はアイテムボックスから、オークキングの巨大な牙を取り出し、カウンターに置いた。通常のオークの牙とは比べ物にならないその大きさと、微かに放たれる魔力の残滓に、職員は息を呑む。

「それに、これが今の俺のステータスだ」

翔はギルドカードを提示した。Lv.30という数字と、【最速討伐者】という見慣れない称号を目にした職員は、ついにその場で固まってしまった。

「…しょ、少々お待ちください! ギルドマスターに、報告してまいります!」

彼女はそう叫ぶと、慌てた様子でカウンターの奥へと消えていった。
やがて戻ってきた彼女は、緊張した面持ちで翔に告げた。

「冒険者ショウ様。ギルドマスターが、至急お会いしたいとのことです。こちらへ」

――――――――――――――――――――

通されたのは、ギルドの最奥にある、重厚な扉で閉ざされた部屋だった。ギルドマスター室。そこには、肩幅が広く、見事な白い髭を蓄えた、歴戦の猛者といった風体の男が待っていた。顔には大きな切り傷があり、厳つい風貌をしているが、その瞳の奥は豪快で、そして温厚そうに見えた。 

だが、彼が発する気圧きあつは、生半可なものではなかった。長年の戦闘と修羅場をくぐり抜けてきた者だけが持つ、覇気のようなもの。武術の心得がある翔でさえ、その気圧に当てられ、思わず身構えてしまうほどだった。 

「おぉ、お前さんがオークキングを討伐したという、ショウか! まあ、そう畏まらずに、楽にして座ってくれ」 

ギルドマスターは豪快に笑い、翔に椅子を勧めた。

「それでだ、単刀直入に聞く。本当に、お前さん一人であのオークキングを倒したのか?」

「ああ。間違いない」

「そうか…そうか! はっはっは! こいつはとんでもない新人が現れたものだ!」

ギルドマスターは翔のギルドカードと討伐の証を改めて確認し、満足げに頷いた。

「さて、本題だ。まず、お前さんが倒したオークキングだが、現在ギルドでは正式な討伐依頼が出ておらん。したがって、すぐに規定の報酬を支払うことができんのだ。そこで提案なんだが、この討伐部位を王都のオークションに出品してみんか? おそらく、とんでもない高値がつくだろう」 

「わかった。それで構わない」

「話が早くて助かる。そして、もう一つ。Gランクのお前さんが、Cランク推奨のモンスターを単独で討伐したとなれば、他の冒険者たちから要らぬ嫉妬しっとや批判が生まれるやもしれん。そこで、ギルドとして特例措置を取らせてもらう」

ギルドマスターは、真剣な眼差しで翔を見据えた。

「本日付で、お前さんをDランク冒険者に昇格させる! 本来の手順は踏まんが、実力はすでに証明済みだ。文句を言うやつは、おらんはずだ。おめでとう、これからも励んでくれ!」 

いきなりの、二階級特進。前代未聞の事態に、翔は驚きながらも、その申し出を確かに受け止めた。
彼のDPOでの冒険は、今、誰もが予想しなかった速度で、新たなステージへと突入したのだった。
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