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第一章 不遇職の拳士
第12話「新たな力と次なる一手」
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ギルドマスター室を後にした翔は、先程までとは全く異なる種類の視線に晒されながら、ギルドホールを横切っていた。噂はすでに広まっているのか、彼が通り過ぎるたびに、冒険者たちがひそひそと何かを囁き合っている。その視線には、驚愕、羨望、嫉妬、そして純粋な好奇心といった、様々な感情が入り混じっていた。
(…これが、Dランク冒険者になるってことか)
もはや、彼はその他大勢の新人ではない。良くも悪くも、「オークキングを単独で討伐した、謎の拳士」として、このギルドに認知されてしまったのだ。彼はその視線から逃れるように、足早にギルドを後にすると、まっすぐに宿屋「安らぎ亭」への帰路についた。これからのことを、静かな場所でじっくりと考える必要があった。
部屋に戻り、ベッドに腰を下ろした翔は、大きく息を吐いた。
レベルの急上昇、ユニーク称号の獲得、そして前代未聞の二階級特進。あまりにも多くのことが、一気に起こりすぎた。彼はまず、この急激な変化を自分自身で整理し、新たな力を完全に掌握することにした。
「まずは、スキルポイントだ」
彼のステータス画面には、『スキルポイント: 52』という、輝かしい表示が浮かんでいる。これは、レベルアップによって得られた、彼の新たな可能性そのものだ。彼は慎重に、そして戦略的に、このポイントを割り振ることを考え始めた。
(俺の戦い方の基本は、神崎流の体術。それをDPOのシステム上で強化するのが、最も効率がいい)
彼の戦闘スタイルの根幹をなすのは、圧倒的なAGI(敏捷性)による回避と、敵の力を利用するカウンターだ。そして、好機には確実に相手を仕留めるだけの決定力も必要となる。
(まず、基本となる【格闘】【蹴術】【身体強化】は必須だな。AGIとSTRの底上げは、全ての基本になる)
彼は迷わず、それぞれのスキルにポイントを割り振っていく。レベルが上がるたびに、スキルの効果が飛躍的に向上していくのが、システムメッセージとして表示された。
次に彼が注目したのは、補助スキルだ。【隠密】と【探索】は、高ランクのダンジョンや、格上のモンスターと対峙する上で、生命線となりうる。特に、称号【最速討伐者】の効果でユニークモンスターとの遭遇率が上がってしまった今、不意の遭遇戦を避けるためにも、これらのスキルは重要だった。
そして、彼は職業レベルが20に達したことで、新たに解放されたスキルツリーに目を通した。そこには、これまでなかったいくつかの魅力的なスキルが並んでいた。
(…これだ。【不動心】と【状態異常耐性】)
【不動心】は、恐怖や混乱といった精神系の状態異常にかかりにくくなるパッシブスキル。格上のモンスターが放つ威圧(オーラ)や、精神攻撃への対抗策となるだろう。
【状態異常耐性】は、その名の通り、毒や麻痺、睡眠といった物理的な状態異常への耐性を高めるスキルだ。今まで一度もダメージを喰らわなかった彼だが、それは相手が単純な物理攻撃しかしてこなかったからに過ぎない。今後、より狡猾な敵と戦うことになれば、状態異常攻撃は大きな脅威となる。
(今後のことを考えれば、この二つは取っておいて損はない)
彼は熟考の末、残りのポイントを巧みに配分し、理想的なスキル構成を構築した。
――――――――――――――――――――
【スキルポイント割り振り後】
【格闘】Lv.5 → Lv.8 (打撃速度・威力向上、新たな技の派生)
【蹴術】Lv.4 → Lv.7 (蹴り技の威力・派生向上)
【身体強化】Lv.3 → Lv.7 (基礎ステータスが大幅に向上)
【探索】Lv.4 → Lv.6 (索敵範囲・精度向上)
【隠密】Lv.4 → Lv.6 (気配遮断効果向上)
新規習得【不動心】Lv.1 (精神系状態異常への耐性)
新規習得【状態異常耐性】Lv.1 (物理系状態異常への耐性) ――――――――――――――――――――
「…よし。これで、大分戦いやすくなるはずだ」
自身のステータスとスキルが飛躍的に強化されたことを確認し、翔が満足のため息をついた、その時だった。
コンコン、と控えめなノックの音が部屋の扉から聞こえた。
「翔さん、いますか? ユアです」
「ああ、いるぞ」
扉を開けると、そこにはお盆にハーブティーのセットを乗せたユアが、少し心配そうな顔で立っていた。
「あの、ギルドから帰ってきてから、なんだか難しい顔をされていたので…。よかったら、これでも飲んで、リラックスしてください」
その優しい気遣いが、張り詰めていた翔の心をじんわりと解きほぐしていく。
「…ありがとう、ユア。助かるよ」
「どういたしまして! あ、何かいいことでもあったんですか? ギルドでの階級が上がった、とか?」
「…まあ、そんなところだ」
翔が曖昧に笑って答えると、ユアは自分のことのように「わー! すごいじゃないですか、翔さん! おめでとうございます!」と、尻尾を振りながら喜んでくれた。その純粋な祝福が、何よりも心地よかった。
ユアが部屋を去った後、翔は温かいハーブティーを飲みながら、窓の外に広がる王都の景色を眺めた。
Dランク冒Gld。それは、この世界の新たな扉が開かれたことを意味する。これまでとは違う、より困難で、より報酬の大きい依頼。未踏のダンジョン、そして、まだ見ぬ強敵たち。
(次は、何をしようか)
オークションの様子も気になるし、Dランクの依頼も見てみたい。強化したスキルを試すために、新たな狩場へ向かうのもいいだろう。
選択肢は、無限に広がっている。
彼は、これから始まるであろう、本当の意味での冒険に胸を躍らせていた。やるべきことは、山積みだ。
(…これが、Dランク冒険者になるってことか)
もはや、彼はその他大勢の新人ではない。良くも悪くも、「オークキングを単独で討伐した、謎の拳士」として、このギルドに認知されてしまったのだ。彼はその視線から逃れるように、足早にギルドを後にすると、まっすぐに宿屋「安らぎ亭」への帰路についた。これからのことを、静かな場所でじっくりと考える必要があった。
部屋に戻り、ベッドに腰を下ろした翔は、大きく息を吐いた。
レベルの急上昇、ユニーク称号の獲得、そして前代未聞の二階級特進。あまりにも多くのことが、一気に起こりすぎた。彼はまず、この急激な変化を自分自身で整理し、新たな力を完全に掌握することにした。
「まずは、スキルポイントだ」
彼のステータス画面には、『スキルポイント: 52』という、輝かしい表示が浮かんでいる。これは、レベルアップによって得られた、彼の新たな可能性そのものだ。彼は慎重に、そして戦略的に、このポイントを割り振ることを考え始めた。
(俺の戦い方の基本は、神崎流の体術。それをDPOのシステム上で強化するのが、最も効率がいい)
彼の戦闘スタイルの根幹をなすのは、圧倒的なAGI(敏捷性)による回避と、敵の力を利用するカウンターだ。そして、好機には確実に相手を仕留めるだけの決定力も必要となる。
(まず、基本となる【格闘】【蹴術】【身体強化】は必須だな。AGIとSTRの底上げは、全ての基本になる)
彼は迷わず、それぞれのスキルにポイントを割り振っていく。レベルが上がるたびに、スキルの効果が飛躍的に向上していくのが、システムメッセージとして表示された。
次に彼が注目したのは、補助スキルだ。【隠密】と【探索】は、高ランクのダンジョンや、格上のモンスターと対峙する上で、生命線となりうる。特に、称号【最速討伐者】の効果でユニークモンスターとの遭遇率が上がってしまった今、不意の遭遇戦を避けるためにも、これらのスキルは重要だった。
そして、彼は職業レベルが20に達したことで、新たに解放されたスキルツリーに目を通した。そこには、これまでなかったいくつかの魅力的なスキルが並んでいた。
(…これだ。【不動心】と【状態異常耐性】)
【不動心】は、恐怖や混乱といった精神系の状態異常にかかりにくくなるパッシブスキル。格上のモンスターが放つ威圧(オーラ)や、精神攻撃への対抗策となるだろう。
【状態異常耐性】は、その名の通り、毒や麻痺、睡眠といった物理的な状態異常への耐性を高めるスキルだ。今まで一度もダメージを喰らわなかった彼だが、それは相手が単純な物理攻撃しかしてこなかったからに過ぎない。今後、より狡猾な敵と戦うことになれば、状態異常攻撃は大きな脅威となる。
(今後のことを考えれば、この二つは取っておいて損はない)
彼は熟考の末、残りのポイントを巧みに配分し、理想的なスキル構成を構築した。
――――――――――――――――――――
【スキルポイント割り振り後】
【格闘】Lv.5 → Lv.8 (打撃速度・威力向上、新たな技の派生)
【蹴術】Lv.4 → Lv.7 (蹴り技の威力・派生向上)
【身体強化】Lv.3 → Lv.7 (基礎ステータスが大幅に向上)
【探索】Lv.4 → Lv.6 (索敵範囲・精度向上)
【隠密】Lv.4 → Lv.6 (気配遮断効果向上)
新規習得【不動心】Lv.1 (精神系状態異常への耐性)
新規習得【状態異常耐性】Lv.1 (物理系状態異常への耐性) ――――――――――――――――――――
「…よし。これで、大分戦いやすくなるはずだ」
自身のステータスとスキルが飛躍的に強化されたことを確認し、翔が満足のため息をついた、その時だった。
コンコン、と控えめなノックの音が部屋の扉から聞こえた。
「翔さん、いますか? ユアです」
「ああ、いるぞ」
扉を開けると、そこにはお盆にハーブティーのセットを乗せたユアが、少し心配そうな顔で立っていた。
「あの、ギルドから帰ってきてから、なんだか難しい顔をされていたので…。よかったら、これでも飲んで、リラックスしてください」
その優しい気遣いが、張り詰めていた翔の心をじんわりと解きほぐしていく。
「…ありがとう、ユア。助かるよ」
「どういたしまして! あ、何かいいことでもあったんですか? ギルドでの階級が上がった、とか?」
「…まあ、そんなところだ」
翔が曖昧に笑って答えると、ユアは自分のことのように「わー! すごいじゃないですか、翔さん! おめでとうございます!」と、尻尾を振りながら喜んでくれた。その純粋な祝福が、何よりも心地よかった。
ユアが部屋を去った後、翔は温かいハーブティーを飲みながら、窓の外に広がる王都の景色を眺めた。
Dランク冒Gld。それは、この世界の新たな扉が開かれたことを意味する。これまでとは違う、より困難で、より報酬の大きい依頼。未踏のダンジョン、そして、まだ見ぬ強敵たち。
(次は、何をしようか)
オークションの様子も気になるし、Dランクの依頼も見てみたい。強化したスキルを試すために、新たな狩場へ向かうのもいいだろう。
選択肢は、無限に広がっている。
彼は、これから始まるであろう、本当の意味での冒険に胸を躍らせていた。やるべきことは、山積みだ。
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