DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?

破滅

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第一章 不遇職の拳士

第16話「鉱山の主」

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スケルトンとゾンビの混成部隊を退けた翔とリナは、その連携に確かな手応えを感じていた。翔が前衛で敵をコントロールし、リナが後衛から魔法で殲滅する。一見、無謀に思えた二人だけのパーティは、驚くほど効率的に機能していたのだ。

「あなたの動き、本当に人間離れしているわね。どうしてあんな風に、敵の攻撃を正確に予測できるの?」

坑道の奥へと進みながら、リナが感心したように尋ねる。

「予測じゃない。相手の視線、重心の移動、筋肉の収縮…そういう予備動作を読んで、次に来る攻撃を判断しているだけだ」

「…それが人間離れしてるって言ってるのよ」

リナは呆れたようにため息をついたが、その声には以前のような棘はなく、むしろ信頼の色が混じっていた。
彼らは道中、いくつかの罠も発見した。床に仕掛けられた圧力式の矢の発射装置や、魔力を感知して発動する呪いの罠。それらを翔の【探索】スキルと、リナの魔法知識で看破し、慎重に解除しながら進んでいく。戦闘だけでなく、探索においても、二人の相性は良かった。

やがて、二人は坑道の最深部と思われる、巨大な鉄の扉の前にたどり着いた。扉の向こう側から、邪悪で、濃密な魔力の気配が漏れ出してきている。

「この奥ね…ゴブリンシャーマンがいるのは」

「ああ。準備はいいか?」

翔は『ウルファのステーキ ☆4』を食べて再び自身を強化し、リナはMP回復ポーションを呷る。アイコンタクトを交わし、お互いの準備が整ったことを確認すると、翔は重い鉄の扉をゆっくりと押し開けた。

扉の先は、広大な儀式場のような空間だった。
中央には禍々しい文様の描かれた祭壇があり、その上で、一人の小柄なモンスターが何やら怪しげな詠唱を続けていた。醜悪な緑色の肌、狡猾そうな目を持ち、骨や羽で飾り付けた杖を握っている。あれが、この鉱山の主、ゴブリンシャーマンに違いない。

「グギャギャ…! ヨクキタナ、侵入者ドモ!」

ゴブリンシャーマンは二人を認めると、甲高い声で笑い、杖を掲げた。すると、その周囲の地面から、次々とスケルトンたちが這い出してくる。その数は、二十体以上。

「まずは、こいつらの相手からか…!」

「私が蹴散らす! あなたはシャーマンを!」

リナが広範囲魔法の詠唱を始める。だが、シャーマンはそれを見越していたかのように、杖を振るった。

弱体化の呪いウィークネス・カース!」

紫色の光がリナを襲う。彼女は咄嗟に【魔力障壁マジックバリア】を展開するが、呪いの力は強く、障壁にヒビが入った。

「くっ…!」

「リナ!」

翔は、シャーマンが魔法の使い手であるリナを優先的に狙っていること、そして、彼女が呪いの対処で動けないことを見て、即座に判断を切り替えた。

(こいつを先に潰す!)

彼は【隠密】スキルを発動させ、スケルトンの群れの中へと溶け込むように駆け出した。彼の目的は、雑魚を蹴散らすことではない。敵の大将の首、ただ一つ。
スケルトンたちの間をすり抜け、シャーマンの呪文の射線から巧みに身を隠しながら、一直線に祭壇へと迫る。

「ナニッ!?」

シャーマンが翔の接近に気づいた時には、すでに手遅れだった。翔は祭壇の上に跳躍し、詠唱中で無防備なシャーマンの懐へと潜り込んでいた。

「終わりだ」

「グギャッ!?」

翔の渾身の【正拳突き】が、ゴブリンシャーマンの小さな体に深々とめり込む。物理的な耐久力が皆無に等しい魔術師タイプのモンスターは、その一撃で抵抗する術もなく吹き飛び、祭壇の壁に叩きつけられて光の粒子となった。

主を失ったスケルトンたちは、動きを止め、やがて塵となって崩れ去っていく。
静寂が戻った儀式場に、翔とリナの息遣いだけが響いていた。

クエストを達成しました。冒険者ギルドで報酬を受け取ってください。

システムメッセージが、彼らの勝利を告げる。

「…助かったわ、ショウ。ありがとう」

「あんたの魔法がなけりゃ、俺も危なかった。礼を言うのはこっちの方だ」

シャーマンがドロップしたアイテムの中には、リナが探していたという、希少な魔法薬の調合に必要な『闇の結晶ダーククリスタル』があった。彼女はそれを手に取り、嬉しそうに微笑んだ。その笑顔は、これまでの彼女からは想像もできないほど、素直で、魅力的だった。

呪われた鉱山の攻略。
それは、翔がDランク冒険者として踏み出した最初の大きな一歩であり、そして、彼にとって初めてとなる「仲間」との絆が生まれた、記念すべき冒険となったのだった。
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