16 / 35
第一章 不遇職の拳士
第17話「祝杯と新たな約束」
しおりを挟む
鉱山の主であったゴブリンシャーマンを討ち滅ぼし、二人は静寂を取り戻した儀式場にいた。クエスト達成を告げるシステムメッセージが、彼らの初仕事を祝福しているかのようだった。
「…助かったわ、ショウ。ありがとう」
リナは、討伐の証であるシャーマンの杖を拾い上げながら、素直な感謝の言葉を口にした。
「あんたの魔法がなけりゃ、俺も危なかった。礼を言うのはこっちの方だ」
翔の言葉に嘘はなかった。ゴブリンシャーマンが放った弱体化の呪い。あれをリナが防いでくれなければ、いくらステータスが高いとはいえ、無傷では済まなかっただろう。
二人はドロップ品を回収し、呪われた鉱山を後にした。
王都アグウェーへの帰り道、二人の間の空気は、行きとは比べ物にならないほど和やかなものになっていた。
「それにしても、あなたの戦闘スタイル、本当に独特よね。拳士っていうより、なんていうか…舞踏家みたい。全ての動きに無駄がないもの」
リナが、純粋な好奇心から尋ねる。
「親父に、無理やり叩き込まれただけだ。おかげで、この世界では役に立ってるがな」
翔は少しだけ自嘲気味に笑った。まさか、あれほど嫌っていた神崎流武術が、こんなにも美しいエルフの少女から称賛される日が来るとは、夢にも思わなかった。
冒険者ギルドに戻った二人は、カウンターで依頼達成の報告を行った。例のエルフの女性職員は、二人が無事に帰還し、さらには依頼書に書かれた討伐推奨時間を大幅に短縮していることに、驚きを隠せない様子だった。
「呪われた鉱山を踏破、確かに確認いたしました…。素晴らしい成果です。こちらが報酬になります」
二人は報酬の金貨と、素材の買い取り分をきっちりと折半する。その手際の良さは、まるで長年連れ添ったパーティのようだった。
「さて、どうする?」
ギルドを出たところで、翔が尋ねる。
「そうね…一度宿に戻って、今日の戦いを復習しないと」
「その前に、腹ごしらえだ。付き合えよ。いい店がある」
翔はそう言うと、リナを連れて、馴染みの宿屋「安らぎ亭」へと向かった。
リナは、ギルド地区の喧騒とは違う、穏やかな空気が流れる宿屋の雰囲気に少し驚いているようだった。
「おかえりなさい、ショウさん!」
宿に入ると、ユアが元気よく出迎えてくれた。そして、翔の後ろにいるリナの姿を見つけると、きょとんとした顔で小首を傾げる。
「こんにちは! あなた、ショウさんのお友達ですか?」
「え、ええと…パーティを組んでる、リナよ」
「わー! ショウさんにお仲間が! よろしくお願いします、私、ここで働いてるユアって言います!」
ユアとリナ、二人の少女はすぐに打ち解けたようだった。その光景を微笑ましく思いながら、翔は食堂のテーブルについた。
「腹、減ってるだろ。これ、食ってみろよ」
翔はアイテムボックスから、先日作った『ウルファのステーキ ☆4』を取り出し、軽く温め直してリナの前に置いた。
「え? なにこれ、あなた料理もできるの…?」
驚くリナをよそに、ステーキの芳醇な香りがふわりと広がる。リナはおそるおそる、その肉を一口食べた。
その瞬間、彼女の翠色の瞳が、驚きと感動で見開かれた。
「おいしい…。なにこれ、信じられないくらい美味しい…! しかも、なんだか力が湧いてくるような…」
「バフ効果付きの料理だ。俺の特製だぞ」
翔が少し得意げに言うと、リナは悔しいような、それでいて嬉しそうな、複雑な表情でステーキを夢中で頬張り始めた。
一通り食事が落ち着いた頃、リナは意を決したように、まっすぐに翔を見つめた。
「ショウ」
「なんだ?」
「…もし、あなたさえ良ければ…これからも、私とパーティを組んでくれないかしら?」
それは、彼女にとって、大きな勇気を必要とする申し出だっただろう。パーティを組むことを拒絶され続けてきた彼女にとって、それは過去の自分との決別を意味していた。
「あなたと一緒なら、もっと上を目指せる。私一人じゃ、決して見ることのできない景色が見られる気がするの」
翔は、黙ってリナの言葉を聞いていた。
もともと、彼はソロでこの世界を渡り歩いていくつもりだった。誰かと行動を共にするのは、面倒だと思っていた。
だが、リナとの冒険は、そんな彼の考えを覆すには十分すぎるほど、刺激的で、そして効率的だった。何より、誰かと勝利を分かち合うことが、こんなにも心地よいものだとは知らなかった。
「…ああ、いいぜ」
翔は、にやりと笑って答えた。
「俺も、あんたの魔法は頼りになる。よろしくな、相棒」
「! …ええ、よろしくね、リーダー!」
リナは、満面の笑みでそう返した。
不遇職の拳士と、孤高の魔術師。
王都アグウェーの片隅で、後に世界を揺るがすことになる最強の二人組パーティが、産声を上げた瞬間だった。
「…助かったわ、ショウ。ありがとう」
リナは、討伐の証であるシャーマンの杖を拾い上げながら、素直な感謝の言葉を口にした。
「あんたの魔法がなけりゃ、俺も危なかった。礼を言うのはこっちの方だ」
翔の言葉に嘘はなかった。ゴブリンシャーマンが放った弱体化の呪い。あれをリナが防いでくれなければ、いくらステータスが高いとはいえ、無傷では済まなかっただろう。
二人はドロップ品を回収し、呪われた鉱山を後にした。
王都アグウェーへの帰り道、二人の間の空気は、行きとは比べ物にならないほど和やかなものになっていた。
「それにしても、あなたの戦闘スタイル、本当に独特よね。拳士っていうより、なんていうか…舞踏家みたい。全ての動きに無駄がないもの」
リナが、純粋な好奇心から尋ねる。
「親父に、無理やり叩き込まれただけだ。おかげで、この世界では役に立ってるがな」
翔は少しだけ自嘲気味に笑った。まさか、あれほど嫌っていた神崎流武術が、こんなにも美しいエルフの少女から称賛される日が来るとは、夢にも思わなかった。
冒険者ギルドに戻った二人は、カウンターで依頼達成の報告を行った。例のエルフの女性職員は、二人が無事に帰還し、さらには依頼書に書かれた討伐推奨時間を大幅に短縮していることに、驚きを隠せない様子だった。
「呪われた鉱山を踏破、確かに確認いたしました…。素晴らしい成果です。こちらが報酬になります」
二人は報酬の金貨と、素材の買い取り分をきっちりと折半する。その手際の良さは、まるで長年連れ添ったパーティのようだった。
「さて、どうする?」
ギルドを出たところで、翔が尋ねる。
「そうね…一度宿に戻って、今日の戦いを復習しないと」
「その前に、腹ごしらえだ。付き合えよ。いい店がある」
翔はそう言うと、リナを連れて、馴染みの宿屋「安らぎ亭」へと向かった。
リナは、ギルド地区の喧騒とは違う、穏やかな空気が流れる宿屋の雰囲気に少し驚いているようだった。
「おかえりなさい、ショウさん!」
宿に入ると、ユアが元気よく出迎えてくれた。そして、翔の後ろにいるリナの姿を見つけると、きょとんとした顔で小首を傾げる。
「こんにちは! あなた、ショウさんのお友達ですか?」
「え、ええと…パーティを組んでる、リナよ」
「わー! ショウさんにお仲間が! よろしくお願いします、私、ここで働いてるユアって言います!」
ユアとリナ、二人の少女はすぐに打ち解けたようだった。その光景を微笑ましく思いながら、翔は食堂のテーブルについた。
「腹、減ってるだろ。これ、食ってみろよ」
翔はアイテムボックスから、先日作った『ウルファのステーキ ☆4』を取り出し、軽く温め直してリナの前に置いた。
「え? なにこれ、あなた料理もできるの…?」
驚くリナをよそに、ステーキの芳醇な香りがふわりと広がる。リナはおそるおそる、その肉を一口食べた。
その瞬間、彼女の翠色の瞳が、驚きと感動で見開かれた。
「おいしい…。なにこれ、信じられないくらい美味しい…! しかも、なんだか力が湧いてくるような…」
「バフ効果付きの料理だ。俺の特製だぞ」
翔が少し得意げに言うと、リナは悔しいような、それでいて嬉しそうな、複雑な表情でステーキを夢中で頬張り始めた。
一通り食事が落ち着いた頃、リナは意を決したように、まっすぐに翔を見つめた。
「ショウ」
「なんだ?」
「…もし、あなたさえ良ければ…これからも、私とパーティを組んでくれないかしら?」
それは、彼女にとって、大きな勇気を必要とする申し出だっただろう。パーティを組むことを拒絶され続けてきた彼女にとって、それは過去の自分との決別を意味していた。
「あなたと一緒なら、もっと上を目指せる。私一人じゃ、決して見ることのできない景色が見られる気がするの」
翔は、黙ってリナの言葉を聞いていた。
もともと、彼はソロでこの世界を渡り歩いていくつもりだった。誰かと行動を共にするのは、面倒だと思っていた。
だが、リナとの冒険は、そんな彼の考えを覆すには十分すぎるほど、刺激的で、そして効率的だった。何より、誰かと勝利を分かち合うことが、こんなにも心地よいものだとは知らなかった。
「…ああ、いいぜ」
翔は、にやりと笑って答えた。
「俺も、あんたの魔法は頼りになる。よろしくな、相棒」
「! …ええ、よろしくね、リーダー!」
リナは、満面の笑みでそう返した。
不遇職の拳士と、孤高の魔術師。
王都アグウェーの片隅で、後に世界を揺るがすことになる最強の二人組パーティが、産声を上げた瞬間だった。
11
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった
雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。
天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。
だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。
鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。
一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。
朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。
悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。
目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
魔力ゼロの落ちこぼれ貴族、神々のエラーメッセージが読めるようになる~「神罰」のシステム権限で学園無双しつつ、本人だけはただのデバッグ作業だと
蒼月よる
ファンタジー
魔法(ナノマシン干渉)が使えず、名門アルマンド家の恥晒しとされた三男アッシュ。
実技試験に落ちて旧図書棟の掃除をさせられていた彼は、謎の遺物(管理デバイス)に触れたことで、世界の最高管理者権限(デバッガー権限)を手に入れてしまう。
「魔法」とは環境中の魔素を操作する事象。そして「神の奇跡」とは環境管理AIの気まぐれであるこの世界において。
アッシュの目には、相手の放つ魔法が単なる『不正なプロセスのエラーログ』として映り、頭の中で『YES(強制終了パッチ)』を選択するだけで完全に消去できるようになったのだ!
一切の詠唱も魔力発生も伴わずに、同級生の最大魔法をフッと消し去り、暴走する巨大魔物をワンボタンで光の粒子に還元するアッシュ。
本人はただ「うるさい警告文が出たからOKを押してデバッグ(人助け)しているだけ」のつもりなのだが……。
これは、エラーログを消しているだけの落ちこぼれ少年が、王都の至高魔法学園で「神の奇跡を下す聖者」として盛大に勘違いされながら成り上がっていく、痛快無双ファンタジー!
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる