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1章
14.魔力量測定
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式場に入ると、思ってたよりも広くて、なんか荘厳な感じがした。
式場は、うーん……なんて言ったらいいかな。教会と、オペラ?劇?を観るヨーロッパの方にありそうな劇場みたいなのを足した感じ。入って正面には、何かの像があったり、壇があったり。椅子が並んでるって言ってたけど、パイプ椅子みたいなのじゃなくて、公園のベンチみたいな、いや、公園のベンチよりも立派な長椅子が左右に並んでいる。
バージンロード歩いてる気分になるな。結婚なんてしてないのに。……いや、待て。俺はバージンロード歩かなくないか?歩くのか?前世でも結婚してないから分かんねーな。
左右、上の方を見ると、ライブ会場の二階席、三階席、みたいな?それの、もうちょっとオシャレな感じ。
入学式と言えば、体育館のイメージだった俺は、良い意味で想像を裏切られた。これならちょっとくらい式が長くてもいいかも。
キョロキョロしすぎないように、でもやっぱり好奇心は抑え切れず、チラチラと周りを見ながら真っ直ぐ進んで行く。
一番前まで進むと、俺の胸くらいの高さの、シンプルでありながら決して安物には見えない台座の上に水晶が置いてある。台座を挟んで向こう側に、ローブを着た初老の男性と、その隣に門の前で会ったワンピースの女性が立っていた。
さっき説明してくれた男性は、『校長がいる』って言ってたけど、このローブの男性がそうなんだろうか。
「入学おめでとう、ロアン」
正面でにっこりと微笑んでそう言った校長らしき男性は、俺の知っている人だった。
「ジャンおじいさん!」
いつも一番に店に来て、窓際の席に座って紅茶と他に一品を注文する、常連客のおじいさんだ。
「この姿で会うのは初めてじゃな。儂はジャングス・モーク。ここでは校長か、モーク先生と呼んでくれ」
これ、新入生一人一人に言ってんのかな?だとしたらすげーな。俺なら飽きて途中から言わなくなっちゃう。
「わかりました、校長」
「うむ」
そういえば、前にロイ兄がジャンおじいさんのことを『先生』って呼んでたな。結局なんでなのか聞くの忘れてたんだ。初等学校の校長だったのか。
「さて、早速魔力量の測定をするとしよう。その魔水晶に手をかざしてみなさい」
言われた通りに、真っ白い水晶に右手をかざす。
………………。
何にも起きない。確か、『真っ白いままなら魔力無し』って言ってたような……?え、魔力無し?期待してたんだけど!
ガックシ。と思っていたら、ジャンおじ……校長が何か唸ってた。
「ん?おかしいのぉ。そんなわけないんじゃが……。あぁ、そうだそうだ。忘れておった。ロアン、チョーカーを外してから、もう一度試してくれるか?」
?
チョーカーが何か関係があるのか?
「チョーカー、外しちゃダメって母さんに言われてるんだけど……」
「そんなこと言っておるのか。まぁ外さない方が安心なのは確かじゃが……。それは魔力を抑えるチョーカーじゃ。子どもの魔力暴走を防止するために着けさせることがある。大丈夫。儂がいるからには、大事には至らんよ」
ほへー。そんな物が俺の首に着いてたわけだ。確かに『危ない物ではない』な。
暴走、と聞くとちょっと不安になるが、大丈夫と言ってくれているんだ。大丈夫だろ。
俺は首に着いてたチョーカーを外し……ん?なんか空気が揺れた?気のせいか?
再び右手を水晶にかざす。
すると、真っ白だった水晶は、みるみるうちに透明に近付いていく。
「まぁ……」
校長の隣にいるワンピースの女性は、驚いた様に声を漏らした。
そんなに珍しいの?魔力持ってる人ってその辺にいると思ったけど……?
水晶は、あっと言う間に透明になった。水晶を覗けば、台座の内側の装飾も綺麗に見える程。
「やはりか。魔力量は五段階の五。無し、少ない、そこそこ、多い。さらにその上の、それ以上、じゃな。その中でも多い方じゃろう。魔水晶がこんなに透明になることは……まぁ無いとは言わんが、稀じゃな」
へー。もしかして、俺、すげぇー感じ?このまま超すげぇー魔法とか使えちゃう感じ?
テンション上がって調子に乗ってた俺は、校長の声で我に帰る。
「ロアン、チョーカーはまだ暫く着けておくといい。それから……」
校長はそこまで言って、振り返って隣の女性を見る。
すると女性はそれに答える様に言った。
「ロアン君、あなたは前から四列目の椅子に座って。列が合っていればどこでも構わないわ。他の子の魔力量測定が終わるまで座って待っていてね」
「はい」
返事をして、回れー右。えーっと、一、ニ、三、四列目。ここだ。
と、左右どちらの長椅子に座ろうかと、見て気付いた。何でみんな右っ側——今の俺から見て、だから、扉の方から見れば左っ側——の椅子に座ってんの?いくら長椅子だからって、狭くない?
俺は左っ側座るよ?広い方行けばいいじゃん。
そう思って左向けー左……ってしてから気付いた。坊ちゃんが座っている。だからか。みんなぎゅうぎゅうになって反対の長椅子に座ってたの。ここから見れば奥の方に、ちゃんと端っこに詰めて座ってるんだから、そんなに怖がんなくていいのに。椅子の長さも短くないから、離れて座れば隣なんていないのと同じだ。
ま、俺も積極的に坊ちゃんと一緒に座ろうとは思わないけど。避けれるものなら避けたいね。
今回はしょうがない。坊ちゃんとは離れた端っこに、つまりバージンロード(仮)のすぐのところに座る。
……これ、周りから見たら面白いことになってるよな。四列目だけ子どもが極端に寄ってるんだから。既に坊ちゃんが孤立している。
残念ながら俺は自分の身を犠牲にしてまで坊ちゃんに関わるほど良い子じゃない。変に関わって機嫌を損ねりゃ、首チョンパなのだ。誰だって嫌に決まってる。
悪いな、坊ちゃん。既に俺の平穏ライフは無いも同然なのは分かっているが、それでも出来るだけ平穏無事に過ごしたいのだよ。なるべく関わらない方向でいかせてもらう。
……くそ。坊ちゃんを叩いてしまったことが悔やまれる。
式場は、うーん……なんて言ったらいいかな。教会と、オペラ?劇?を観るヨーロッパの方にありそうな劇場みたいなのを足した感じ。入って正面には、何かの像があったり、壇があったり。椅子が並んでるって言ってたけど、パイプ椅子みたいなのじゃなくて、公園のベンチみたいな、いや、公園のベンチよりも立派な長椅子が左右に並んでいる。
バージンロード歩いてる気分になるな。結婚なんてしてないのに。……いや、待て。俺はバージンロード歩かなくないか?歩くのか?前世でも結婚してないから分かんねーな。
左右、上の方を見ると、ライブ会場の二階席、三階席、みたいな?それの、もうちょっとオシャレな感じ。
入学式と言えば、体育館のイメージだった俺は、良い意味で想像を裏切られた。これならちょっとくらい式が長くてもいいかも。
キョロキョロしすぎないように、でもやっぱり好奇心は抑え切れず、チラチラと周りを見ながら真っ直ぐ進んで行く。
一番前まで進むと、俺の胸くらいの高さの、シンプルでありながら決して安物には見えない台座の上に水晶が置いてある。台座を挟んで向こう側に、ローブを着た初老の男性と、その隣に門の前で会ったワンピースの女性が立っていた。
さっき説明してくれた男性は、『校長がいる』って言ってたけど、このローブの男性がそうなんだろうか。
「入学おめでとう、ロアン」
正面でにっこりと微笑んでそう言った校長らしき男性は、俺の知っている人だった。
「ジャンおじいさん!」
いつも一番に店に来て、窓際の席に座って紅茶と他に一品を注文する、常連客のおじいさんだ。
「この姿で会うのは初めてじゃな。儂はジャングス・モーク。ここでは校長か、モーク先生と呼んでくれ」
これ、新入生一人一人に言ってんのかな?だとしたらすげーな。俺なら飽きて途中から言わなくなっちゃう。
「わかりました、校長」
「うむ」
そういえば、前にロイ兄がジャンおじいさんのことを『先生』って呼んでたな。結局なんでなのか聞くの忘れてたんだ。初等学校の校長だったのか。
「さて、早速魔力量の測定をするとしよう。その魔水晶に手をかざしてみなさい」
言われた通りに、真っ白い水晶に右手をかざす。
………………。
何にも起きない。確か、『真っ白いままなら魔力無し』って言ってたような……?え、魔力無し?期待してたんだけど!
ガックシ。と思っていたら、ジャンおじ……校長が何か唸ってた。
「ん?おかしいのぉ。そんなわけないんじゃが……。あぁ、そうだそうだ。忘れておった。ロアン、チョーカーを外してから、もう一度試してくれるか?」
?
チョーカーが何か関係があるのか?
「チョーカー、外しちゃダメって母さんに言われてるんだけど……」
「そんなこと言っておるのか。まぁ外さない方が安心なのは確かじゃが……。それは魔力を抑えるチョーカーじゃ。子どもの魔力暴走を防止するために着けさせることがある。大丈夫。儂がいるからには、大事には至らんよ」
ほへー。そんな物が俺の首に着いてたわけだ。確かに『危ない物ではない』な。
暴走、と聞くとちょっと不安になるが、大丈夫と言ってくれているんだ。大丈夫だろ。
俺は首に着いてたチョーカーを外し……ん?なんか空気が揺れた?気のせいか?
再び右手を水晶にかざす。
すると、真っ白だった水晶は、みるみるうちに透明に近付いていく。
「まぁ……」
校長の隣にいるワンピースの女性は、驚いた様に声を漏らした。
そんなに珍しいの?魔力持ってる人ってその辺にいると思ったけど……?
水晶は、あっと言う間に透明になった。水晶を覗けば、台座の内側の装飾も綺麗に見える程。
「やはりか。魔力量は五段階の五。無し、少ない、そこそこ、多い。さらにその上の、それ以上、じゃな。その中でも多い方じゃろう。魔水晶がこんなに透明になることは……まぁ無いとは言わんが、稀じゃな」
へー。もしかして、俺、すげぇー感じ?このまま超すげぇー魔法とか使えちゃう感じ?
テンション上がって調子に乗ってた俺は、校長の声で我に帰る。
「ロアン、チョーカーはまだ暫く着けておくといい。それから……」
校長はそこまで言って、振り返って隣の女性を見る。
すると女性はそれに答える様に言った。
「ロアン君、あなたは前から四列目の椅子に座って。列が合っていればどこでも構わないわ。他の子の魔力量測定が終わるまで座って待っていてね」
「はい」
返事をして、回れー右。えーっと、一、ニ、三、四列目。ここだ。
と、左右どちらの長椅子に座ろうかと、見て気付いた。何でみんな右っ側——今の俺から見て、だから、扉の方から見れば左っ側——の椅子に座ってんの?いくら長椅子だからって、狭くない?
俺は左っ側座るよ?広い方行けばいいじゃん。
そう思って左向けー左……ってしてから気付いた。坊ちゃんが座っている。だからか。みんなぎゅうぎゅうになって反対の長椅子に座ってたの。ここから見れば奥の方に、ちゃんと端っこに詰めて座ってるんだから、そんなに怖がんなくていいのに。椅子の長さも短くないから、離れて座れば隣なんていないのと同じだ。
ま、俺も積極的に坊ちゃんと一緒に座ろうとは思わないけど。避けれるものなら避けたいね。
今回はしょうがない。坊ちゃんとは離れた端っこに、つまりバージンロード(仮)のすぐのところに座る。
……これ、周りから見たら面白いことになってるよな。四列目だけ子どもが極端に寄ってるんだから。既に坊ちゃんが孤立している。
残念ながら俺は自分の身を犠牲にしてまで坊ちゃんに関わるほど良い子じゃない。変に関わって機嫌を損ねりゃ、首チョンパなのだ。誰だって嫌に決まってる。
悪いな、坊ちゃん。既に俺の平穏ライフは無いも同然なのは分かっているが、それでも出来るだけ平穏無事に過ごしたいのだよ。なるべく関わらない方向でいかせてもらう。
……くそ。坊ちゃんを叩いてしまったことが悔やまれる。
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