転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

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1章

21.答え合わせ

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 授業終了の鐘が鳴る。
 結局、俺が見つけることができた魔力石は、五つのうち、三つ。

「最後に、答え合わせだけしようかの」

 校長はそう言って、教室に散っている俺達を集めた。

「まずは、二人共見つけた三つ」

 隠し場所から出されていた魔力石三つが、浮いて校長の手元に集まる。

「それから、アレクシオ君が見つけた一つ。あそこじゃよ」

 校長が指さした先にある棚の扉が開いて、魔力石が一つ、校長の手元に飛んでくる。
 そこにあったのか。

「さて、最後の一つは……ミゲリオ殿に聞こうかの」

「えっ、俺?……あー。そこ、っすね」

 話を振られて少し驚いた様子のミゲリオさん。指をさしたのは……

「?」

 俺。
 えっ、どこ?
 手足を振ってみたり、服のポケットに手を突っ込んでみたりするが、見当たらない。
 ミゲリオさんが近付いて来て、俺の服のフードに手を突っ込んだ。

「ここっすよ」

 そう言ったミゲリオさんの手には、魔力石が握られていた。

「え?そこ?」

 まさか、自分の服のフードに隠されるとは思ってなかった。
 意識を集中させて探さないと、まだ上手く感知出来ない俺にとっては、難問だ。そもそも意識を向けてないんだから、見つかりっこない。

「……自分に意識を向けなきゃいけなかったのか」

 俺が呟くと、ミゲリオさんは言った。

「そう単純な話でもないっすけど」

「どういうことだ?」

 俺も聞きたい。
 ミゲリオさんが校長の方を見ると、校長は頷いた。

「……俺は教師じゃないんすけどねぇ。というか、二人はいいんすか?一応授業の時間は終わってるから、詳しい話はまた明日でも……」

「どれだけ遅くなったって、帰りもお前が一緒なんだから、問題ないだろう」

 ミゲリオさんの言葉に被せて、早く説明しろ、と言わんばかりの坊ちゃん。

「俺も大丈夫です。お願いします」

 むしろ気になっちゃうから全部説明して欲しい。

「分かったっす」

 ミゲリオさんは、そう言って説明してくれた。

「まず、ロアン君、君が自分に意識を向けても、身体の内側の魔力を感知しちゃうんじゃないっすか?魔力が多くて感知しやすいから、多分そっち意識しちゃうと思うんす」

 確かにそうかも。一度意識したものから意識を外すのって、なかなか出来ないし。そこにある物を、無い、と思って振る舞おうとすればするほど、ある、ことを認識させられるというか……。

「で、坊ちゃんは、ロアン君に意識を向けても、やっぱりその膨大な魔力を感知しちゃって、魔力石の魔力には気付き辛いと思うんすよ」

 『ほら』と言って、ミゲリオさんは手に持っていた魔力石を俺のフードの中に入れる。
 魔力石って、意外と軽いんだ……。
 目を瞑って自分に、正確には自分の周りを探すように意識するが、結局自分の魔力を感知してしまう。

「本当だ……」

「なるほどな。そこにあると分かっていても、感知出来ない。平民の魔力が魔力石の魔力を隠してしまうのか?」

 あー、なるほど。すっぽり包んじゃう感じね。

「隠してはいないっすけど、イメージとしては近いんじゃないっすかね」

 違った。

「俺が持ってるイメージなんすけど、魔力の量って、色の濃さとか、透明感なんす。多ければ濃い、少ないと薄い、無ければ透明、みたいな」

 俺は光の強さをイメージしてたけど、色でも例えられるのか。

「ロアン君の魔力は、色で例えればすっごく濃いんす。透き通ってもいない。それに対して、魔力石の魔力は薄くて少し透明。机の上みたいな、魔力の無い、透明なとこに置いた場合は、色が薄くてもすぐ見つけられるんす」

 透明の中に色付きがポツンとあったら、確かに目立つ。

「でも、その隣に色の濃い物があると、そっちに目がいっちゃうじゃないっすか。それに、色の濃いのと比べれば、色が薄くて少し透明なのと、透明なのって、大した違いはないんすよ。だから目立たないんす」

 それで見つけられないわけか。
 相対的な色の濃さ……なんかあったな。そんな感じの。同じ色でも、隣り合う色によって、濃く見えたり薄く見えたりするやつ。

「あくまでも、イメージの話っすよ。魔力なんて目に見えないんで」

「でも、それを感知しちゃうなんて、ミゲリオさんは魔力感知得意なんですね」

「まぁ、感知は得意っちゃ得意っすけど……この状態だと、俺も感知出来ないっすよ」

「えっ?」

 まさかの否定。

「ならどうして場所が分かったんだ?」

「それはまぁ、ちょっとした技、というか」

 ミゲリオさんは、そう言いながら、俺のフードの中に再び手を突っ込んで魔力石を取った。
 そういえば、入れっぱなしだったな。

「どんな技ですか?」

「何をしたんだ?」

 俺と坊ちゃんが二人して質問するが、校長に止められてしまった。

「これこれ、少しは自分で考えてみなさい。それに、今日の授業の時間は終わっておる。これ以上は儂が怒られてしまうでの。勘弁してくれ」

 えー。考えろったってなぁ。ちんぷんかんぷんだ。さっぱり分からん。

「せめてヒントをくれ」

 お、坊ちゃん、たまにはいいこと言うな。

「そうじゃのぅ。儂がスタートの合図をしたのがいつだったか、もう一度よく思い出すのじゃ」

 え?隠した後じゃなかったっけ?そんな昔のこと、もう覚えてないよ。

「校長が魔力石を隠した後に言ったのは『探しておいで』っすよ」

 それがスタートの合図だと思っていたが、違う、ってことだろうか。

「ミゲリオ殿、少し優し過ぎではないか?」

「校長が厳しいんす。この子ら、まだ七歳、一年生っすよ」

「おぉ、そうじゃった。二人共賢いからのぉ。いつも教えている上級生達と同じようにしてしまっておった」

 上級生?

「校長、上級生も教えてるんですか?」

「あぁ。と、言っても、数人だけじゃ。毎年何人かおるんじゃよ。入学した時から魔力の感知や操作まで出来る子や、魔力量が多い子がな。そういう子達は、儂の特別授業じゃ。やってることは他の子達とあまり変わらんが、宝探しなんぞをやるのは儂だけじゃろうな」

 万が一の暴走に備えつつ、遊び心を入れて、と言ったところか。

「さ、今日の宿題は、ミゲリオ殿が言った『技』を考えて来ることじゃ。……君達からすれば、ズルい、と思うかもしれんのぉ」

 えっ。ズルしたの?

「ズルはよくないぞ、校長」

 坊ちゃんが言う。なんというか、こいつ、真面目だよな。

「儂はズルしたつもりはないが、見方によってはそう言えなくもない、と言うことじゃ。明日、君達の考えた『技』を教えてくれ」

 これは、あれか?大人の都合、とか、大人はズルいんだ、とかそーゆーやつだな。
 家に帰って考えよ。十七歳 おとなの考え方で。

「さ、今日は帰るんじゃ。気をつけてな」

「はーい」

「行くぞミゲリオ。校長、また明日だ!」

 坊ちゃんは、『絶対見抜いてやる』と息巻いて、ミゲリオさんを連れて帰って行った。
 俺も帰ろ。

「校長、さようなら」

「はい、さようなら」

 帰り道、歩きながら考えたが、これだ!という案は出なかった。
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