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アナウンス
しおりを挟むどこかで聞いた事のある電子音の後に、これまた前にも聞いた事があるどこか幼さの残る男の子っぼい声が頭の中に響いて来た。
『おめでとう! ファースト・キル・ボーナスだよ。
なんと【固有特殊スキル】を3つもプレゼントしちゃうよ。好きなのを後でじっくり選んでね。
このアナウンスは、選択者で初めて討伐を達成した者に与えられるものだよ。1度しか言わないから周囲を警戒しながらよく聞いてね。
古代竜による最初の人類無差別攻撃から10日間。つまり今日から10日間は、選択者にとってのボーナスタイムだよ。
それぞれの成果に応じた特典が得られるよ。何が貰えるかはお楽しみ。
そして10日後には、全ての人類に向けて一斉にアナウンスが流れる事になってるからね。
既存種、未選択者はまだ何が起こってるか知らないよ。その間にいっぱい経験値を稼いでね。
未選択者よりも選択者の方がいっぱい経験値を貰えるよ。レベルが高い相手ならもっといっぱい貰えるよ。
じゃあみんな頑張ってねえ』
「……」
な、なんじゃそりゃ~!
取り敢えず落ち着こう。この部屋は安全なはずだ。動くものは俺だけのはず。それでも一応鍵は掛けてから考えよう。
そうだ。それがいい。これを受け入れるのも時間が必要だ。良かったぜ。囲まれてるような状況でなくてな。
俺の判断は正しかったか。部屋選びはしくったけど。
タッタッタッ
ガチャリ
タッタって言っても立ってもないし、ガチャリって言ってもガチャも回してないぞ。少し走って鍵を掛けて来ただけだ。念の為。
「……」
ま、まあ、こいつは用済みだが、異臭騒動になるのは不味いだろうし、何かに使えるかもしれない。あまり気は進まないが仕方ない。異次元収納行きだな。
血を見るのも嫌だったはずなのに、別になんとも思わねえな。そうでもねえか。きったねえなあ。くらいの感覚か。
こうも変わるかよ。魔物ってこえーな。
ゴブリンの血は緑色なのだろうか。だからかな。赤い血を見ても全く別の生物の体液だって認識なんだろうな。頭のどこかでは分かってるのに。そんな感覚だ。既にゴブリンなだけにな。
うん。入ってくれたか。やるな。ありがとよ。
スキルポイントが貯まったら拡張させとこうかな。思ったよりも入るけど、まだまだ入れたい物はある。入れたいナニもある。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
ふう。
やっぱり落ち着くにはこれが1番だな。
さて。
変なアナウンスが流れやがったな。内容は概ね嬉しいものだったが、俺の前に大胸はなし。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
……
流石に虚しいな。早くやりたいぜ。殺るのも忘れずに。
でもその前にステータスの確認か。
ステータスはっと、……
おっ。レベルが1つ上がってるじゃねえか。この野郎。ありがとな。冥福は祈らないけど、今頃あいつも初回死亡者特典の間に行って選択してんのかな。
待てよ。って事はなんだ。殺せば殺すほど、自分の手で敵を作る事にもなり兼ねちまうのか?
こんな雑魚に殺されたと分かったら、嫌な殺され方をしたら、やられていたぶられて殺されたら、それこそゴブリンに対してすっげー嫌悪感と共に、殲滅する為に敵対勢力を選択する事になり兼ねない?
……
有り得るな。君もありえーる? ま、まあ、あいつはアイマスクしてたし、何も見られてなかったはずだ。勿論ナニも。
ボーナスタイムとか言っときながら、実はそこまで甘いもんじゃないって事なのでは?
……
今更か。俺だけそんな事意識しても、他の奴等が仕出かしちまえば同じか。欲望のままに動く奴等も多いだろうし、ゴブリンに限らず魔物に殺されたりなんかすれば、それこそ自分で仇を討ちたいってなる可能性もあるな。
恐らくゲーム感覚でひゃっはーしたくなる連中も多いだろう。実は俺もその1人? 逆の立場なら守る為って大義名分もある。魔物相手に無双できれば楽しいわな。
やれやれ。そんな事考えても仕方ないか。そういう奴等はどこに行ったって居るだろうし、どうせ殺らなきゃ殺られる。殺られる前に殺らなきゃな。
ならば少しでもレベルを上げて、安全地帯を確保して、出来れば頼れる仲間も増やしたいぜ。
うん。そっちの方向で考えよう。
それより今はステータスだったな。直ぐに脱線しやがるぜ。馬鹿だからしょうがねえか。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
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