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0. 長~いプロローグ
目覚め
しおりを挟む「……ん、んん……」
ん?
……ここは? ……ん?
薄暗い洞窟の中?
は? 洞窟?
部屋、……なのか?
コンクリートでも木でもなく、岩だ、な。
だが、目に映る限りでは、やけに正確に整えられた空間。部屋なのだろうか。
触る事は出来ないが、岩の壁と思われる壁面は、きっちりと切り立てられており、歪みもなく直角に空間を形取っている。
なんて冷静に現状を把握しようとしてみたけれど、体が動かない? 目だけは動くのか。
……
何故に?
何処だ、ここ。
俺は、……俺だよな?
あれ?
思い出して来た。確か、飛行機に乗ってたはず。
仕事の関係で、とある中東の国を目指して飛び立った。
何回味わっても慣れない重力加速度を体感した後、目を瞑って何かと考えてたら、そのまま眠ってしまったパターンかな。電車とかバスでもよくやるし。
それに、寝る前なんかだと、瞑想とか言いつつ呼吸を整えてると、いつの間にか朝になってるやつ。頭はすっきりするから、それなりの効果はあるのだろうと勝手に思ってる習慣。
それはいい。
ここは機内ではない。それは分かる。洞窟の中の部屋に入れられているのだろうか。
体勢は、座っているのだろうな。それも分かる。
なんとなくひんやりする気がすると思ったら、俺は裸なのか?
そんな趣味は無かったはすだが、ラフな格好ではあったが、尻から伝わる感覚は、パンツすら履いてない状態で椅子に座っているようだ。そんな趣味は無かったはずだけど。
何故分かるかって?
そんな経験くらい誰でもあるだろう。風呂でも、サウナでも、そういったお店でも? 場合によっては遠い昔の黒歴史?
それもいい。
だが、何故?
それに、体が動かない。
意識ははっきりしてきたというのに、体がピクリとも動かない。薬か?
……。怖っ。
ヤバイ系の組織に拉致られた?
こんなおっさんを?
……。金なら無いぞ。
身代金を要求しようにも、残念ながら俺は独り身だ。通じるかな?
日本政府次第かな。はは、……
よし。冷静になろう。
俺の片言の語学が何処まで通じるか。相手次第の所もあるだろう。一応、英語、フランス語、中国語をちょいとばかし噛ってる。物理的にじゃなくて。
軽い挨拶とか、簡単なコミュニケーションは取れるくらいには。ビジネス語学じゃなくて、なんちゃって変換コミュニケーション。ジェスチャー多めの。
いやいやいや。そんな事よりも。
そもそも飛行機に乗ってたのに、いきなり洞窟ちっくな所まで連れてこられるのか? 寝てる間に。……
よしよし。落ち着け、俺。
ここには俺以外に人は居ないのか? 気配は無い。と思う。これでも耳はいい方だ。年齢とともに衰えてはきているのだろうけど、経験値はそれなりにある。はずだ。
感じろ。考えろ。諦めるな。
なんてな。
これじゃどうにもならん。年の割にはって感じだけど、1対1でなら、自身を守るくらいの体術にはそれなりに自信はあったけど、こりゃダメだ。体の感覚が無い。
生きているんだよな。こうして居られてるって事は。
誰か居ないのか? この状況を説明して欲しい。
放置プレイは好きにはなれないぞ。まだ?
…………
………
……
…
気が付いてからどれくらい経ったのだろうか。お得意の瞑想という名の転た寝をしていたはずだが、ピクリと腕が動いた気がして目が覚めた。
「おっ。動くぞ」
ばっと目を開け、両手を握り締めて動作確認。
よし。問題ないな。上半身は。
特に異常なし。
下半身は動かないが。まだ感覚が戻ってきていない。
ピクリとも動かせない。がっちりとギブスで固められている感覚。しかも緩衝材無しで。どんな手法で固定されているのだろうか。全く分からないのですけど。
徐々に麻酔が解けて行ってるのだろうか。怖い事をやってくれる。
そして肝心の真下の状況確認。体の真ん中か。
うん。息子よ。元気が無いじゃないか。まあ、いつもの事だけど。
やはり裸だったのか。やってくれる。おやじの裸に何の価値があると言うのか。俺には分からない。
そして、相変わらず何の気配も感じられない事を確認してから、ばっと後ろを振り返る。
……
そこには木製の扉があった。1つだけ。窓はなく、扉が1つだけ。
重要そうだから、2回言ってみた。
ここは、四畳半程の部屋。そういう事になるのだろう。部屋の中央に置かれた椅子に座っていると。ただそれだけの空間。
縛られてもいない。そんな痕も、外傷も、不快感も無い。とは言い切れないが、不安はある。普通に呼吸できてるし、五感は正常に機能してくれている。はずだ。味覚は流石に分からない。
それと、さっきから分かってはいたんだ。息子の安否確認をした際に目に入っていた物体。
足の上にぽつんと置かれた長方形の物体。感覚が無かったから気付くのが遅くなったとも言える。
タブレット。
勿論、錠剤ではない。こんな大きな薬なんて飲めないな。固そうだし。砕いてお飲み下さいってなら飲めるのか。やらないけど。
気を取り直そうか。
多分、このタブレットの電源を入れるとか、スイッチを押すと何かしらの事態が進展して行くのだろう。よくあるパターンだな。
犯人は痕跡を残さないのが常套手段でもある。賢い証拠かな。何て強がって思ってみたりして。
画面越しにはよく観たけど、まさか自分がこの立場に直面するとはな。ははは……
ちょっとの緊張と、かなりの不安。やや好奇心あり。そんな気分です。頑張れ。俺。
「よし。いつまでもこうしてても始まらない。やってみるか」
……
「速いな」
持ち上げただけで起動して、画面にこう表示された。
『ようこそ。時の狭間へ』
日本語で良かったよ。
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