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0. 長~いプロローグ
死後の世界・チュートリアル
しおりを挟むどうやら俺は死んだらしい。
ここに表示されてるからと言って、盲目的に全てを受け入れるつもりはなかったのだが、やはり俺は死んだのだろう。
死因は『飛行機墜落事故』だそうだ。
それで無傷でこうして居られるという事は、やはりそう思わざるを得ない。それだけの事だ。他にも思うところは何かとあるのだが。話が長くなりそうだから止めておこう。
状況を一旦素直に受け入れてみるのも心を安定させる方法の1つだ。
…………
思えば波乱万丈な人生だったな。…………
まあ、いいか。それを受け止める為の時間まで用意されていようとは。なんと優しさに溢れる仕様なのだろうか。ありがとうございます。
それで裸というのは受け入れるしかないのだろうが。生まれたて時も裸だったんだ。死んだ時も裸になるのは標準の仕様なのかもしれないな。
なんて頭の中で落ち着こうとして余計な事を考えながらタブレットに表示されるままに進んで行くと、それも理解できた。
言わばこれもチュートリアル。
俺は、仕事の関係で、とある中東の国を目指して飛び立っていたはずだった。
現実で中東に。
中東のリアル。
これも1つのチュートリアル。
……
今はいいだろう。さっさと次に進もうか。いつ死んでもいいと思っていたのだが、実際に死んでみると実に呆気ない。死んだのだから当たり前なのか。
特に気を使う相手も居たかったというのが大きいのか。独りも悪くなかったな。
振り返った所で何があるって訳でもない。黒歴史を振り返った所でな。恥ずかしいと思える相手も居ないのだから。今はもう。
それで。
どうやら、このタブレットの指示に従って今後の方向を決めて行くらしい。自らの意思で。
神様とか閻魔様とか、女神様とか天使ちゃんとか、そういった存在の方々は現れてくれないのだろうか。ふと思ってしまった。
駄女神かもん!
……
無いのか。残念だ。
これがそう?
この端末こそが神の遣い?
これなら『駄』が付く要素は無いからか?
…………
虚しいな。いや。これも効率を考えた上での最新設備になるのかな。飛行機事故ならそれこそ大量に、……
止めよう。俺もその中の1人だ。そんな事を考えても仕方ない。特に時間に制限があるでもないみたいで、よく考えて選択するようにとの指示がある。人生の再選択とはそういうものなのだろう。
ならばよく考えて進もうじゃないか。こういうのも悪くない。
人生は選択の連続だったんだ。死んでからも自らの意思での選択があるとは思ってもなかったが、それはそれで楽しめそうだ。
「よし」
ちょいと気合いを入れ直してタブレットと向き合う。
…………
…………
…………
…………
人は死ぬと、基本的にはグレートスピリットと言われる魂の根元的存在の一部に戻って行くらしい。この端末情報に依るとだが。
自殺者には適用されないらしいのだが、今回の俺の死は、不慮の不可抗力の墜落事故。それなりの悪事に手を染めた事はあったはずなのだが、そんなのは許容範囲。
故意に他者を傷付けたり、悪意を持って社会生活を送って居なかったというだけでも、人間としては合格だったらしい。勿論、警察の厄介になったりした事はないし、そっち系の危ない人達との交流があった事もない。
これが本当なら、選んだのが自分だったのなら、日本で生まれて良かったと思った。家庭にも、周囲の環境にもそれなりに恵まれていただけに。本人の資質や能力は置いておいて。
こほん。
そこで選べる2タイプ。
・魂の修行を一旦終え、グレートスピリットに還って暫くのんびりするか。
・すぐに修行を再開するべく生まれ変わるか。
このタブレットに依れば、人間の生きる目的の1つが、様々な経験をする事なのだそうだ。
何の為かは分からない。そう書いてあるだけだ。一方通行のチュートリアル。これは仕方がないのかもしれない。チャット機能は無いのかな。
ふむ。
ただ、生きてきた年数、経験、為してきた事、等々によって選べる選択肢は大きく異なるようなのだが。
簡単に言ってしまえば、増減のあるポイント制。生きてた年数だけでもプラスになるみたいで、他にも、経験内容によって加点、減点されているみたいだ。
例えば、善行値、熟練度、感動値、影響値。みたいな感じで。
まあ、要はやって来た事が何かしらの見えざる存在によって適正に評価されていたという事だ。『適正』の判断は、見えざる存在の価値観なのだろう。
これを見る限り、社会生活を営む上で道徳的に『是』とされる行いがプラスなのだろう。真面目に生きて来て良かったよ。死んだようだけど。墜落事故で。……
輪廻転生。人は何度も生まれ変わって経験を積む。その度にポイントを消費して生まれ変わる。ポイントが多い者はより有利に。ポイントが少ない者はより不利な立場からの出発となる。
容姿や能力、家庭環境なんかも選べるみたいだから。当然そうなる。隠し設定とか裏ステージなんかがあればまた変わってくるのだろうけど。
上手いというか何というか、よく出来た仕組みだと思った。単純だし分かり易い。
生まれ変わるとここでの詳細な記憶はなくなるみたいだから誰も覚えていないはずなんだけど、こういった内容の書物を読んだような記憶はあったような? それも気のせいか?
更に詳しく読み解いて行くと、ポイントは持ち越せるようだ。今回全部使わなくとも、最低限必要だと思う条件だけを選ぶ事も出来るようだ。
何なら、敢えてマイナスの条件下で不遇に堪え、品行方正に長生きすれば、それだけポイントも溜まり易いみたいだ。そんなのも有りらしい。俺は嫌だけど。
出来れば毎回俺つえーとか、俺らっきーって言いながら生きて行きたいと思う。はれーむ要素があれば尚良しとも思う。それが俺だ。
俺が何回生まれ変わってるのかは分からないけど、今あるポイントが持ち越し分を含んでるのか、今回の人生でのポイントだけなのかも分からない。そんな説明は何処にも無いみたいだ。
だが、それなりにポイントが溜まってるように思えた。ひゃっはーなチート野郎まではなれないかもしれないけど。事故のせい? お陰? まあいいか。今更だし。
恐らく、ここでの考え方も人それぞれ。その時の気分や経験値にも依るだろう。こんな状況なのに、不意に死んでしまったはずなのに、俺の心は晴れやかを通り越して躍り狂いたいとさえ思ってしまった。
勿論、遠慮なくポイントは全て使い切るつもりだ。
選べる2タイプの中に、すぐに修行を再開するべく生まれ変わるかの先に、『これまでとは違った世界で新たな経験を積む』があったから。当然だろう。
はい。来ました。
にゅーわーるど。にゅーげーむ。違うか。
暫くのんびりするって選択肢は魅力的だったけど、疲れ切ったおっさんには破格の甘~い言葉に見えたけど、こんな選択肢があったらどうするか。
選ぶよね。選べるのなら。しかも、最終的に決定してから、ドアを開けなければ何度でもリセット出来るらしい。この部屋に居る間は悩み放題。時間制限無し。
ならば進むしかないだろう。タブレットの指示に従って自分という形、入れ物を作り上げて行く作業。そう、キャラクター設定。まさにそれ。
ふっふっふっ。人生って楽しいものだったんだな。この作業が1番の楽しみなのかもしれないけど。そこから先はですゲームになるかもしれないのだから。
いえす。イエス。YESを繰り返すですゲーム。それとも生死を懸けたですゲーム。それを選択するのも自分次第。
はい。お次に進みま~す。
人生、諦めず、不貞腐れず、人様に迷惑を掛けずに生きて来て良かったよ。極力という言葉は各々に付くけど。
些細な事でもポイントにはプラスになる。国家資格じゃない民間資格でも、あまり役には立たなかった浅く広い知識でも、繰り返して来た転職でも、軽い気持ちで始めた習い事でも。
勿論、趣味で始めた事や、長続きはしなかったけど気の向くままに手を出して来た事なんかもしっかり反映してくれてるみたいだ。
嘘など吐けない、誤魔化し様のない、見えざるものに依って詳らかにされる経歴。黒歴史を含む。
ここでの記憶が有りさえすれば、人間、欲望剥き出しで生きようとは思わないのかもしれないのに。それをしないのは何故なのだろうか。
なんてどうにもならないような感想を抱きつつ、今生の俺、よくやったなと声を掛けてやりたくなったりして。
さあさあ。取り敢えず振り分けて行こうかな。
こういうのは将来を見据えてしっかり考えてからっていうのが正しいのだろうが、やり直しは利くのだ。まずは思うままに選んでみるとしよう。
正しいだけが人生じゃない。遊び心も大切だ。真面目一辺倒の人間なんて面白味がないからな。少なくとも今の俺はそう思っている。45年という短いようで長い、長いようで短い人生を送って来たのだから。
どっちやねんって感じやね。
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