27 / 44
1. 異世界デビュー
町歩き2 大広場
しおりを挟む鍛冶屋に行ったはずなのだが、飲み屋に行った後のような気がする今この時。
ふとトイレに行きたくなり、近くを探してみる事に。やはりビールを飲むと尿意が近くなる。トイレも近くにある事を願う。
飲み屋では、まずトイレの場所確認も必須。慌てると碌な事がない。他者に気を使って限界まで無理をしてしまった時の、下腹部がぱんぱんでどうしようもなくなった時の、緊急事態のあの痛みを俺は忘れない。
そんな時に限って先客が居たりして。席数に合わせた便器の数を何度所望した事か。勿論、心の中で。
今はそこまでじゃない。まだ余裕はある。人間、余裕があるって大事だと思う。だが、出来るだけ急げ。
案内図にもあったから、歩けばそれなりにあるはず。酔い覚ましには丁度いい。
やばくやりそうなら宿に戻るかその辺の店に入るかすればいいだろう。買い出しもしたいし。温か食事をマジックポーチに。これもやっておかないと。
また余計な事を考えて意識を逸らそうとしたのだが、あっさり見付かり用を足す。出すのに足すとはこれ如何に。
公衆トイレだと言うのに、中は思った程汚くなく、臭いもそれ程でもなかった。これも魔法の力。科学よりも凄いかも。
大人が5、6人は並んで致せるように、特に間仕切りが無いタイプ。これもなんだか懐かしい。
今は誰も居ない。満足です。これも用を足すのと掛けてみた。掛けてるだけに。
……
はあ。すっきり。
近くに広場があったから、そこでひと休みする事にした。偉いお坊さんになったとある小僧が言っていた。
慌てない慌てない。
確かすっげえエロい坊さんになったんだよな。まさかあの人がって、イメージって怖い。
まあ、あんな小さい頃から酸いも甘いも経験して、人間の醜い所を散々見てきて、時の権力者とも深く関係して、幼馴染みから好き好き愛してるなんて歌われ続けたらそうなるか。環境って大事。経験って凄い。
おお。こりゃ凄い。
ちょっとした市が立ってる感じ。食フェスやってます。これはいいね。こんなのが町の大きめの広場で行われてるなら、食事に困る事はないのかも。こんな広場が東西南北にそれぞれあったはず。
そう言えば、小腹が減ってるな。特にツマミも無く飲んでただけだったし、それで充分満足だったから良かったけど。
よく考えれば、確かめてみればお昼じゃん。楽しい時は過ぎるのが早い。その通りだったか。
ドノバンの仕事の邪魔しちゃったか? でも楽しそうにしてたし、お互い感謝の言葉で別れたし、相手はドワーフなんだから大丈夫か。酒の席での事は無礼講。勝手にそう思い込む事にする。ごめんな。
どれ。人もそれなりに。その場で食べてる人も居れば、持ち帰る人も居るようだ。いいね。この感じ。俺も何か食べる事にしよう。
……
……
魔物の肉は食えるのは知っている。この世界の『一般教養・一般常識』のお陰で。
この世界にも鶏や豚、牛といった家畜は居るが、比較すると魔物の方が旨い。強いとされる危険な魔物程旨い。
町の近くにも出現するような、冒険者に成り立ての初心者でも狩れるような魔物もそれなりに居る。そして、それらはこうした屋台で串焼きにして売られている事が多い。
ダンジョンに行けば更に多くの凶悪な魔物も居る。それらの一部は屋台でも食べられるが、殆どがお店、中でも敷居が高い店に卸される事になる。
これも剣と魔法の世界あるある。それがここにもあるある。
やはりネーミングが独特なのが面白い。尾も、白い? この話はまた後で。さっきドノバンから面白い話を聞いた。でも、また後で。今は食事でしょ。
ざっと回ってさらっと確認。
鉄板焼き、網焼き、炭焼き、直火焼き。焼き方は様々。味付けは塩、胡椒、時々ハーブ類。
ホーンラット(角大鼠)、ホーンヘアー(角野兎)、ホーンドッグ(角犬)、ホーンダック(角鴨)、ホーンウルフ(角狼)。
食べた順番は違ったけど、この順に強くて美味しいとされる焼き肉。肉焼き? だった。だから感想も順番に整理してみた。
まず思った事。
角があるから魔物って、安直じゃね? でもそんな事思っても仕方ないから、それもファンタジー仕様って事にしよう。
仕様と、しよう。
……
鼠も食うのかよ。しかも、ラットって溝鼠じゃね? 実物が無くて良かったよ。加工済みならただの肉の塊。
角兎はあるある最有力候補だったけど、ラビットじゃなくて野兎の方かよ。よりシュールだな。
って、犬もかよ。角があって魔物だから食うんだな。慣れない俺には辛いけど、あれは魔物。ならば食べる事も仕様って事にしよう。
でも『寛ぎの宿 猫の尻尾亭』に泊まってるだけに、ホーンキャット(角猫)がなくて良かった。別物なのは分かるけど、気持ち的に。
それと、鴨までか。鳥まで角を生やすのか。この世界。ちょーこえーじゃん。
やっぱり狼まで居やがった。犬と狼が別物ってのは分かるけど、1つで充分だと思ってしまう。
でも、この流れなら出て来てもおかしくない。本当はまだまだ居るかもしれないけど、ここに並んでるのはこれくらい?
これだけでも充分に腹いっぱいになるだろうな。おやつにしては1つ1つの塊が大きめだ。折角だから全部食べてやる。
でも、表記がよくないな。漢字を使うと旨そうじゃない。魔物なんだから、普通に片仮名表記にしよう。この方が抵抗感が薄れる気がする。
で。食べてみた感想。
まあ、これも好み。意外と歯応えがあっても旨いと思ってしまった。胡椒多めにすれば、ビールのツマミに良さそう。ホーンラット。これなら響きも悪くない。
ホーンヘアーは普通に有り。あっさりしてて、何にでも合う感じ。
ホーンドッグとホーンウルフは筋張ってて固くて味も薄くて無し。獣人さんが好んで食べるようだ。決して共食いではない。
ホーンダックはすげー旨かった。この中では一押し。だから出来る範囲で、今売ってくれるだけ買っちゃった。買い占めではありません。あくまでも出来る範囲で。これ大事。多分?
これで出来る。マジックポーチ温か料理出し。直ぐにやったら意味ないから、明日以降。
他にもラーメンなんかもあったけど、麺はぼそぼそでイメージとは違うものだった。でもこれが一般的。外国のインスタントラーメンの麺って感じ。悪くはないのだが、好みは分かれるって感じ。
味はやっぱり塩ラーメン。出汁なんて効いてない、多分? 俺には分からない所で効いているのかもしれないが、本当の意味での塩ラーメン。聞いてないよお。
塩分取り過ぎじゃねって感じの味付けでした。具に野菜を入れれば許されるとか思ってるんじゃねえ。とも言いたくなったけど、勿論言ってない。
で。食べれば喉が渇く。何か飲みたくなるのが人の常。人体の不思議。いや、普通に水分は必要です。さっき大量に出しちゃったし。
生活魔法のウォーターで水分補給は出来るけど、それだけじゃ味気ない。
で。当然のように専用の屋台もありまして、ジュースから酒までありやがる。最高かよ。
当然のように真っ昼間から飲んでもなんとも思われない世界。そこまで飲みたい訳じゃないのは前に言ったけど、飲めるなら飲みたくなるのも酒好きの常。
偶にはいいよねのひと言で許される。その偶は玉々のようにいつも寄り添っている言葉。取り敢えず言い訳したいだけ。
樽売りワイン。それを好みに合わせて薄めてくれます。ワンフィンガーとかツーフィンガーなんて言葉は使いません。シングルでも、ワンショットでもない。
薄目で。濃い目で。そのままで。
そう。適当です。最高かよ。
気を使わなくていいのは有り難い。そのままで飲んでる人も結構多い。飲んだくれの町。いや。世界。
いいね。いいよって言いたくなる。勿論俺もそのままで。でも色々飲みたいから少量ずつで。
コップやグラスは持ち込みならその分安くしてくれる親切設計。親切対応。勿論、差し出す大きさに依っては値段が変わるけど。
それでも100ジェニからって所がこれまた親切設定。止められませんな。色々持ってて良かった。流石にビールジョッキじゃ味気ないからグラスにしたけど。
結局ずっと飲んでるな。なんて思った時には4杯目。違った。4店目で8杯目。小さ目のグラスにしたから、そこまで酔ってない。事もないんだな。これが。
だって、広場の東西南北に違ったマークの看板が出てるんだから仕方ない。全部試してみるのが男でしょ。ワイナリー直販の屋台。なんて聞いたら飲んでみるでしょ。それぞれに。
それぞれに拘りもあって味も違う。その時にお勧めのワインとか、出来立てのワインとか、中には処分したいのも出して来る時もあるかもしれないけど。
それはそれで安くしてくれるなら悪くない。混ぜたり薄めたりしてしまえばそこまで分からない? 持ちつ持たれつ。生産者と消費者はこうでなきゃ。
あれ? なんだっけ。
そうだった。気に入ったワインを見付けたから、好みの味のワインがあったから、早速買い付けに行こうと思ったんだった。
でもその前に酔い覚まし。
ベンチと言うか、石の置き物と言うか、人が座り易そうに加工されたオブジェクトがあったから座ってみた。ひんやりして気持ちがいい。
木製のベンチっぽいのもあったけど、ボロボロでクリーン掛けてもヤバそうだから止めたまで。
ふう。
結構楽しかった。これはまた来たくなるやつだった。もうこの町に定住してもいい位の気持ちになってるけど、外に出るのが面倒になったからじゃない。
1度も行商してないし、折角だから少しくらいはこの世界を見てみたい。って気持ちも残ってるから、危険は極力回避しながら行商人ちっくな事もしてみたい。
実際に行商人なんだから、ちっくはおかしいか。暫くは行商をして生活を立てて行くのです。その為に仕入れもしてるのだから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる