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1. 異世界デビュー
町歩き2 帰り道
しおりを挟む宿に戻る途中、道を間違えないよう大通りを歩いていると、必然的に各種ギルドの建物前を通る事になる。
仕事帰りの時間帯に差し掛かっている事もあり、色んな格好をした人達がそれぞれのギルドの建物に入って行ったり出て来たりしている。
仕事帰りの報告、換金、打ち合わせ、調整からの、帰宅、食事、打ち上げ、ハッスルって所だろうか。
そう言えば、ハッスルに関する情報収集がまだだった。俺とした事が。でも、気持ち的にどっと疲れちゃってるし、無理はダメだ。行ってしまえばイける自信はあるけど、今はそこじゃない。
行きも見掛けた冒険者ギルド。驚いた事に、何と、女性のパーティも居るじゃありませんか。朝は偶々見なかっただけか? 玉々無いだけに。
……
しかも、子供も居ますがね。これは更に驚いた。装備は立派なものじゃないだけに、武器は持ってないようなので、お小遣い依頼とか、町中でのお手伝い依頼を請けてるのだろうか。
ずかずかとって訳でもないけど、普通にギルドの建物に入って行っちゃった。やるな。
それなら俺でも入って行けそうじゃん? 朝は世紀末的な人が多くてびびったけど。あんな子供達でも平気で出入り出来るのなら、ちょいと覗く位なら問題ない感じじゃないのかな。
うむ。
女性の中には、重装備の鎧を着込んだ人も居て、重たそうな大剣を背負ってる人も居る。可愛らしい魔女っ娘ローブに杖の子とか、細剣を量腰に差してる人もいる。
色んな効果が付与された装備もあるから、女性でも気にせず使いこなせるのだろうけど、やっぱりごっつい女性も多い。戦士って感じ。
うーん。いいね。ファンタジー万歳。ビキニアーマーを見掛けないのは偶々か? 玉々無いから居ないのか? 残念。
さて。俺は商業ギルドに行ってもやる事はないから今日は行きません。ならば夕食の心配をしましょうか。昨日と同じ過ちを繰り返さないように。
でも、折角だから、冒険者が行くような店にも行ってみたい。ストーカーじゃない。好みの娘が出て来るのを待ってる訳でもない。
酔った勢いで痛い目に合わされないように、なるべく穏便そうな、それでいてごっつくない感じで、出来れば可愛い顔した人達が行く店がいいな。なんて思ってるだけ。
冒険者は料理をしないなんて思ってないけど、その可能性は高い。命を懸けた肉体労働帰りで疲れてるのに、そこから料理なんてしたくないだろう。これも勝手な思い込みと偏見。ごめんよお。
おっ。ターゲット、に、成り得るか?
続くのは、……
あ~~。残念。酒癖悪そうな感じの声がでかい人がご一緒でした~。あれは嫌。
もういいや。こんな所をゆっくり歩いたり、何もないのに引き返したりしてたら怪しいし。既に怪しい行動してるなんて認識はない。誰かを探してるかのような演技を続けているだけの事。
この辺りには様々な職業の人達が行き来している。ならばこの行動もそれ程怪しいものじゃないはず。
……。だよね?
お。またしても世紀末風冒険者が騒いでる。声もでかいのが分かり易い特徴だ。
「がっはっはあーっ! 今日は儲かったぜ! ぱーっと行こうぜ! ぱーっとなっ!」
「そうだな! 今日は奮発してハッスルするかあっ!」
「ひゃあっはあーっ! そうこなくっちゃなあっ!」
「おうよっ! その日の稼ぎはその日のうちにってなあっ!」
「じゃあよっ! 今日はソープ・オブ・ソープにしようぜ! あそこのサービスは1度知ったら忘れられないぜっ!」
「うおおっ! そうだな! その名前を聞くだけでもやる気になるぜっ!」
「うおおっ! 更にやる気が漲って来たぜえっ!」
「おおっ! そうだろ! じゃあ直ぐに予約に行っとこうぜ!」
「おおっ! そうだな! あそこは直ぐに埋まっちまうからな! 行こうぜ行こうぜ!」
「お前のあそこも直ぐに皮に埋まっちまうかな! はっはあっ!」
「ちっ、本当の事言ってんじゃねえよっ!」
「はっ、わりいわりい。俺もだった」
「「ぎゃっはっはっはあっ!!」」
「「「ひゃあっはあーっ!!」」」
やはり、ひゃっはーしてますね。煩いけど、よくお似合いで。
世紀末仕様の冒険者パーティは、肩を組んで楽しそうに歩いて行った。うざい。
だが、何ですと?
注目すべきはそこじゃなかった。話の内容の方にロック・オン! 当然皮の件じゃない。
勝手に世紀末認定してごめんよ。だってあんなに厳つい顔して、体もごっつくて、2人はモヒカン、1人はスキンヘッドなんだから仕方ないだろう。
それに武器とか装備してたら、輪を掛けて近付きたくないし、認定しちゃうだろう。俺だけじゃないはずだ。あの叫び声が確定させた。
でも、声がでかいのも役に立つ事がある。序でに他者のあそこも立たせる事になっちゃったりして。偶にはいい事をするようだ。玉にもな。
それにしてもよく喋るし煩い奴等だ。気持ちが分かるだけに何ともむず痒いが、仲間の数だけ盛り上がるのは仕方ない。
そもそも俺は奴等に注意出来る程の勇者じゃない。聞きたくもないのに、後ろに居るはずなのにしっかり聞こえてしまう。まだまだ続くようだ。
「ちょっと想像しただけでもう立ってきちまったぜえっ!」
「はええよっ! 早々に役立たずになっちまうぞ」
「こんなに立ってんだから、役に立たない訳がねえだろうがよ!」
「がっはっはっ! 小さ過ぎて気が付かなかったぜ!」
「な、何ぃおぉー! お前だって人の事言えんだろうが!」
「はっ。ちげぇねえっ」
「「ぎゃっはっはあっ!!」」
なんて下品な話題で盛り上がっていらっしゃる。幸せそうで何よりだ。ナニよりだ? 3人でも2人でも盛り上がれるとは。仲のよろしいパーティのようで。
気が付いたら店の中に居た。
気持ちの疲れは気のせいか。これも気の持ち様。エロの前ではそんなもの無きに等しい。
だが、いつの間にか世紀末パーティの一員となっていたようだ。いかんいかん。これは遺憾だ。イく為の場所なのにいかんなんて事はない。難しいな。
「いらっしゃいませ。お客様。1名様でございますか?」
おっと。ぼおっとしているように見えたのか、少し間を置いてから、執事風の正装に身を包んだ店のスタッフと思われる男が話し掛けて来た。
先に入った冒険者達は、奥の方で応対してもらっているようだ。
良かった。しっかり別の客と認識してくれたようだ。場合によっては護衛依頼をした商人と、その冒険者とでも受け止められても仕方なかった。
危なかった。まさかこんな愚行を犯していたとは。俺が雇うなら女性パーティ限定に決まっているだろう。そんな勘違いは勘弁してもらいたい。
確かに味方なら心強い連中かもしれないけど。一緒に居たい奴等ではない。これマジで。
「あ、はい。1人です。予約で伺いました。まだ大丈夫ですか?」
妄想も程々に。これもいかんな。
「そうでしたか。ありがとうございます。はい。1名様ならまだ比較的時間帯に空きがござます。お時間とご指名はいかがなさいますか?」
おっと。やはり独りの良さはここにもあった。捨てたもんじゃない。やったぜ。
だが、よく考えたら店の仕組みを何にも知らない。本当に今更だ。くっ、ここは最後までやらせてくれる所だろうな。そんな確認すらしてなかった。
あの冒険者達の盛り上がり加減で勝手に思い込んでた。無意識って怖い。店の名前は『ソープ・オブ・ソープ』だったはず。
このネーミングセンスと響きにやられた。やりに来たのに既にやられたとはこれ如何に。
「すみません。私はここは初めてでして、噂で聞いてやって来たのですが、念の為にサービス内容を確認させてもらってもよろしいですか?」
聞くのが1番。聞かぬは一生の恥。
いや。抜くのは一時の恥。イかぬは一生の恥。なんて。
追加料金でのぼったくりもある。抜けるかどうかは相手次第?
「はい。勿論でございます。では当店のシステムから」
……
……
うん。流石、名店? 説明も丁寧で実に分かり易い。しかも安い!
この店には人族しか在籍していないようだ。コースも選べて空いてる女の子まで自由に選べるなんて当たり前。
名前のイメージ通り、各部屋には小さいながらも風呂が付いていて、マットプレイまで標準で楽しめる。
最短でも1時間のコースから、翌朝まで選べる親切設定。しかもお値段1万ジェニ~。有り得るの? そんなに安くていいのかな。大丈夫なの? なんて思ってしまったじゃないか。おっさん大喜び。
……
おいおいおいおい。最高かよ。マジ最高。最も高み。素晴らしい。
しかも、念の為に、息子の為にも確認した所、手抜きじゃないよ。お口だけでも、素股でもないよ。
あんなに薄くて機能的なゴムなんて無い世界なんだから、そのまま生まれたまんまの姿で致すのが当たり前。立派に成長した姿に変身しちゃうけど。
本番生プレイ。中出しも当たり前。これ、基本。何度出すかは、お客様次第なんですと。
身体検査もありません。この店の場合は、念の為に最初に聖魔法の浄化魔法で全身を綺麗に清める仕様なんだとか。
致した後も生活魔法のクリーンや浄化魔法で心配無用。お互いに病気も、出来ちゃう事も気にせず、思うままのプレイを楽しめるのだとか。そこもこの店の売り。
まあ、大概これ位のサービスは付いてるらしいけど、浄化魔法までって所は少ないらしい。その分ちょいとお高い設定なんだとか。
これでお高いなんて、とんでもない世界。飛んでしまいたい。
おいおいおい。俺は昨日1日を無駄にしたんじゃね? この事実を知ってれば、間違いなく駆け込んでたはず。警戒してたのは当然だが、調べてからでも遅くはなかった。
悔やまれるが仕方ない。これも経験。確実に俺の経験値となってくれただろう。こんちくしょう。
おっと。
さっきの世紀末仕様の冒険者達は、期待通りの予約が取れたのか、散々コース選びに迷ったのか、俺の後ろを通りつつ、
「やっと決まったぜ。これなら皆満足出来そうで良かったぜ」
「よっしゃあ! 本番前の腹ごなしだあっ!」
「おいおい。声を抑えろよ。まだ店の中だぞ」
「「「すんませんでした! また後で来ますんで!」」」
なんて騒ぎつつも、ほくほく顔で店を出て行った。やはり煩い人種は何処に行っても煩い。俺も昔はああだった。かも?
正直、迷っている。こんな料金なら、朝までコースもやってみたい。男の夢がそこにあるのだから。
でも、もう1人の俺が告げる。
それでもこれは初チャレンジ。いいのか? こんな料金で期待して。がっかりした時の裏切られた感は半端じゃないぞ。
思考も嗜好も、あの冒険者達と一緒ではないはずだ。息子の反応は同じでも、やる事は変わらなくても、最初からそこまでの選択が勇者ではないお前に出来るのか。と。
だが、これもこの世界で初のえっち体験。ならばそれなりの覚悟はして、金も出して、出来るだけ満足の行くサービスを受けたい。
くっ。ここで直ぐに決められないのが若さが無い証拠。俺も年を取ったものだ。それも仕方ない。今出来る事を出来る範囲で行う。それはプレイでも同じ。それぞれに良さもあるものだ。きっと。
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