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終章 柔らかな未来へ
4 肌と肌 ※
しおりを挟む瑠璃はふっと目を開けた。
慌てて目を瞬いて見れば、藍鉄は欲望を放ったばかりの瑠璃のものをきれいに舐め取っているところだった。
あまりの悦楽で、一瞬だけ意識を手放していたのかもしれない。
「あ、……藍鉄。も、いいから……」
息があがって、それだけ言うのにも苦労した。
「お前も……ちゃんと」
ゆっくり片手を上げて男に差し向けると、その手をそっと取られてまた口づけられた。
「っあ」
それだけのことでもぴくんと感じて、瑠璃は太腿を震わせた。
視界に、てらてらと唾液に光って天を向いた自分の乳首が入り込む。藍鉄の舌と唇に愛撫されたそれは、ぷくりと膨らんで大きくなり、ひどく淫靡に見えた。
瑠璃はのろのろと上体を起こし、藍鉄の身体にすがりついた。
男のものは彼の身体の中心で、瑠璃とは比べものにならないほど凶悪な質量と欲望を主張して怒張している。びきびきと表面を走る血管が禍々しいほどだが、それがまた瑠璃の下半身を刺激した。
(あれが……入るのか? 本当に? ……ウソだろう)
半ば朦朧としながら考える。
ずっとずっと、待っていた。この三年。三年だ。
あらためて新たなことを学ぶには短い時間だったけれども、この男との最初の夜を待ちわびるにはあまりにも長すぎる時間だった。「もっと早くお前のものにしてくれ」と懇願したことも何度もある。
しかし、いざこの場に臨んでみると、男の巨大なそれに怖気づく自分がいるのも事実だった。
大きくて、長さもある。そして非常に硬そうだ。
……そのぶん、とてもつらそうだけれど。
(もう少し、準備できれば良かったんだが)
でも、それは無理な話だった。貴人には、基本的に本当にプライベートな「たったひとりの時間」などない。少なくとも滄海の皇子にはなかった。
昼間は当然、すぐそばに藍鉄がいる。夜は夜で、寝所のすぐ外に宿直の者たちが控えている。藍鉄はもちろん、他の護衛の者らも普通の人間よりもはるかに感覚が鋭敏だ。多少の物音はたやすく聞きつけてしまうし、注意力も常人の何倍も優れている。おいそれと自分の身体の準備なんて、できようはずもなかった。
いや配偶者がいないのだから、当然そちらの処理をする必要は生じる。男子である以上、ずっと欲望を抑えておくわけにはいかないからだ。だが、そちらはまだしも、受け入れる側の準備となると──。
間違いなく、さとられる。気づかれないわけがない。
それはやっぱり……どうしても憚られた。
瑠璃はおずおずと男のものに手を掛けた。
「わ、私も……するよ」
先端に指先が少しかかっただけで、男は喉奥で低く唸った。
「……左様なことは。どうか」
「いいや。する」
もう少し腰を寄せて、改めて両手で握りこんだ。
握ってみると、まことに自分のものとは比べようもない。
瑠璃は慣れない手つきで男のものをこすり、もう片方の手で先端を、円を描くように擦った。
藍鉄は少しの間、声を堪えつつ眉間に皺を立てていたが、やがてくいと顎を持ち上げられて口づけられた。舌を絡ませ合うと、次にはもう瑠璃自身も藍鉄の手の中に握られていた。
「んん……! わ、わたし、は──」
いいんだ、という言葉は藍鉄の口に飲み込まれてしまう。
そのうち、藍鉄は瑠璃と自分のそれを瑠璃の手ごと一緒に握りこんで擦りはじめた。
「んっ、んんっ、んう……! い、いいって、ばっ……!」
これ以上、自分ばかり達するわけにはいかない。これでは体力がもたなくなる。
瑠璃は男の肩を両手で押しのけようとした。が、まったく力は入らなかった。
逆に、男はお互いのものから手を放すと、ゆっくりと瑠璃の身体をベッドに沈めなおした。広い肩が覆いかぶさってくる。両足の間に男の逞しい腰が割り込んで、手のひらがさらりと内腿を撫でおろした。
「ふう……っ」
瑠璃の腰が、また跳ねる。
藍鉄が瑠璃の頬に、うなじにと唇を這わせながら低く言った。
「少し、ご辛抱くださいませ」
「……え」
喘ぎながら見上げたら、男は上体を起こし、そばにあったチューブからどろりとした透明な液体をたっぷりと手にとった。
その指が、ぬるりとした感触とともに瑠璃の秘所をまさぐっていく。
「んあ……っ、あ」
つぷ、と男の指が自分の中に入り込むのを感じて、瑠璃は息を詰めた。
藍鉄の指は、やっぱり非常に丁寧にそこをほぐした。入り口をゆっくりと拡げ、皺の一本一本を伸ばして液体を塗りこめている。入り口からすぐの襞を指先で丹念に探りながら、何度も何度も抜き挿しされた。
そのたびに、瑠璃の喉から猫の子のような声が漏れだす。
声を殺そうと頑張ると、男はすぐに気づいて口づけを施し、そこを緩めてしまう。これでは堪えようがなかった。
「んはっ……あ、あんっ……あんっ」
(なんとかしてくれ。なんとかして──)
恥ずかしくてたまらない。
男の前にすっかり両足を開いて、何もかもを晒した無様な姿。
相手がこの男でなかったら、死んでもするはずのないみっともない格好だ。
瑠璃は喘ぎながらも、時々足の間から見える男の顔をじっと見つめた。
そして、はっきりと感じていた。
一見静かに見える藍鉄の瞳の奥に、ちりちりと周囲の空気を焦がすような炎が灯っているのを。
……感じてくれている。
自分の、この身体にだ。
そう思うだけで、自分の中心にまたずくんと重い欲望が集まるのをはっきり感じた。
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