墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

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第二章 魔王エルケニヒ

6 食事

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「てめえ、もう一回言ってみろや! なんで俺らの《BLレンジャー》の名前が言いたくねえって? 下品だってか! 許さねえぞこの野郎っ」
「……うん。なぜなのかは正直よくわからぬ。わからぬが、無性にまた本能的に、その隊名は『口にしてはならぬ』と、私の根源がそう叫ぶのだ」
「はあああ? 意味わかんねー」

 小難しく言ってみたところで、意味は変わらない。「下品だから言いたくない」と、つまりそういうことなのだ。まったく腹が立つ。

(このやろ、このやろ、このやろ……!)

 今回はみずからなった紺色の「ミノムシ状態」のまま、リョウマは歯をむき出して憤慨し続けている。顔を真っ赤にしてプンスカ怒っているうちに、気がついたら魔王はすぐそばにやってきていた。ベッドの縁に、まるで当然のような顔で座っている。
 思わずリョウマはうしろへずり下がった。

「……あ? な、なんだよっ。来んなよっ」
「ずっとまともな食事もしていなかったのだ。なにか食べねば身がもつまい。そなたが目を覚ましたと聞いて、適当に見つくろわせたのだ。まずは食すがよい。話はそれからだ」
「う……」

 途端、またもや腹の虫が盛大に鳴いてしまった。
 魔王が満足げににこにこ笑う。

「そら見よ。そなたの腹はまことに正直だな」
「くっそう!」

 今日ばかりは、「食事」とか「食べる」とかいう単語にすぐに反応する、真っ正直な自分の腹の虫を恨む。

「まあ、気にするな。魔都に招待したのは私自身なのだから。遠慮せず、なんでも食すがよいぞ」

 魔王が手のひらを上にして指し示す先には、侍従らしき魔族の男女がずらりと並んでいる。普通の人間からすると、耳が尖っていたり牙が生えていたりと異形ではあるものの、身なりや身ごなしは品がよくて、きちんと教育されているように見えた。
 彼らはそれぞれ、大小の皿やポットなどをワゴンに乗せたり手で捧げ持ったりして、静かに入口のところに控えている。
 そちらからなんともいい匂いがしてきて、リョウマは思わずごくりと喉を鳴らしてしまう。まともな食事なんて、ずいぶん久しぶりな気がした。そんなリョウマの表情をじっと観察するような目で見ていた魔王が、穏やかに言った。

「まずは粥などからの方がよいか? そなたの好みと、食せるものがわからぬゆえ、いろいろと揃えさせてはみたのだが」
「なっ、なんでもいいよ! 早く、早く食わせろっ!」

 もう我慢できずに、リョウマは巻いていた掛け布をはね飛ばした。魔王がなぜかふっと微笑んで、自分のマントをさらりと夜着の肩に掛けてくれる。手つきが妙に優しい。

「そう慌てるな」

 言って指をわずかに動かして見せただけで、侍従や侍女と呼ばれるらしい人々がすすすす、と音もなく動き始めた。ほとんど幽霊のようだ。
 ベッドの上に座ったままでも食事ができるよう、小さなテーブルが運び込まれ、リョウマの目の前に据えられる。膝の上に食事用の布が広げられ、まずは水と粥が供された。
 リョウマはほとんどものも言わず、まずは水をゴッゴッゴ、と喉を鳴らして飲んだかと思うと、今度はガッとスプーンを握りしめ、ががががが、と粥をほとんど一瞬で口の中にかき込んだ。

「そらそら。もう少し落ち着いて食せ。だれも盗らぬゆえ」
「むごっ、ふぐ、ふがうううっ」

 侍従が再び入れてくれた水をまた喉を鳴らして飲み、次の料理をと要求する。
 からの皿が素早く引かれ、つぎには柔らかく煮た肉と野菜のスープが供された。ずいぶん熱くて、これはそんなに早くは食べられなかったが、これまたリョウマは非常な速さで胃におさめた。
 最後のスープまで漏れなく腹に収めてしまってから、ようやくリョウマはひと言いった。

「うっ……うっま」
「今ごろ感想か?」

 ぷっと魔王がふき出した。嬉しそうににこにこ笑っている。
 そのとたん、なぜかぴきっと侍従らが凍り付いた。
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