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第二章 魔王エルケニヒ
5 魔都
しおりを挟む「ふがあっ」
ふたたび目を覚まして飛びおきたら、今度はあの洞窟ではなかった。
見慣れぬ内装の寝室。調度はどれも、いかにも金がかかっていそうだったが、全体に非常に落ち着いた雰囲気の部屋だ。
男が三人寝ても余裕がありそうなでかいベッドには、重たげな紺地の布が掛かった天蓋がついていた。まことに「いかにも」な感じだ。布地は品のいい金糸銀糸の刺繍やらふさ飾りやらでおおわれているが、別におどろおどろしい感じもなく、やっぱり品のいいデザインに見えた。これは誰の好みなのだろう。
「うー……なんなんだよ、ここ。どうなったんだ? 俺」
頭を掻きながら恐るおそるベッドから降りる。足裏に、ふかっとした毛足の長い絨毯の感触がした。これまた金がかかっていそうだ。
「ん? なんだこれ」
立ち上がってから気づいたが、衣服が完全に着替えさせられている。よく言えば素朴、悪くいえばみすぼらしかった地下村の村人としての姿から、さらさらと柔らかくて手触りのいい、白地の夜着になっている。薄手でいかにも高級そうな布地だ。
近づいてみると、広々とした寝室の窓はやっぱり大きなもので、重厚な感じのカーテンが「当然でしょ」といわんばかりの顔でどっしりと視界をふさいでいる。
リョウマはそちらに近づいて、カーテンの隙間からそっと外を覗いた。
「……うっへえ。マジか……」
そうではないかと予想はしていたが、その予想は自分の意に反して裏切られなかった。要するに、リョウマ自身の望みは裏切られた形だった。
眼下に広がっているのは魔族の巨大な都市だった。
ひょっとしなくても、あのクソいまいましい魔王の在所である首都。魔族の中心地、魔都デヴァーデンスであろうと思われた。
「マジかあ……。ったくよ~。どーゆーつもりなんだ、あの野郎……」
あの時、魔王のマントでぐるぐる巻きにされていてさえ、とにかくリョウマはやかましく騒ぎ立て、暴れ続けた。ついに業を煮やしたのか、魔王はひょいとリョウマの目の前で親指と人差し指を交差させるようにした。と思った次の瞬間、リョウマはまたもやかくんと、深い眠りに落ちてしまったのである。それ以降の記憶がないので「たぶん」だが。
と、大きな両開きの扉の方から小さくノックをする音が聞こえた。
「リョウマ様。魔王さまのおなりにございまする」
「はへ!?」
起きたことにもう勘付いたらしい。リョウマはなぜかわたわたと無意味に自分の胸元を掻き合わせ、脱兎のごとくベッドの中に飛び込んだ。そのまま必死に、掛け布で自分の体をぐるぐる巻きにする。そうするのとほぼ同時に、音もなく扉が開かれた。
もちろんそこには、あの魔王が立っていた。
「ようやく目覚めたのだな、リョウマ。いや《BLレッド》とお呼びした方がいいのだろうか。いや、やめておこう」
「……んだよ、それは……」
「あまりあの隊名を口にしたくないものでな」
「はあ!? バカにしてんのかよ」
「そうではない。わざわざ自分の品位を落としたくないだけだ」
「はああ!?」
またもやリョウマはブチ切れた。
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