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第二章 魔王エルケニヒ
4 覚醒
しおりを挟むリョウマはそこから数時間で目を覚ました。
そこまでに、エルケニヒはこの場所でも使える範囲の魔法を使い、彼の体を清潔な状態に整えてやっていた。もと通りに服を着せ、自分の長いマントでくるんで寝かせ、その隣に自分も横になって少し休んでいたのだが、その事実にリョウマはひどく驚いたようだった。
「ひょえっ……? てっ、てめえ、いったい何を──」
そこまで言ってから、気を失うまでの顛末を一気に思い出したのだろう。またもや「ひええっ」と叫んで、今度は首まで真っ赤に染まった。目玉がありえないほどキョロキョロ動きまくっている。彼はまことに、まったく嘘がつけないタイプなのだ。すべてがこの通り、顔に出る。
「おはよう。体はどうだ? 少しは体力も回復したかな」
「はあ? ってめ、何をしれっと……なにしやがったんだこのどクズ野郎っ!」
「仕方がないではないか。私の体液にあそこまで反応するとは思わなかったのだから。反応しすぎて『もっと、もっと』と尻を振っておねだりを始めたのはお前のほうだぞ。こちらは我慢するのにずいぶん苦労したのだがな」
「なっ、なな……んなこと言ってねえわ! ウソ言うなあ!」
リョウマが憤慨してとび起きた。いや、とび起きようとした。
「っておい!? こらっ、はなせ!」
これを見越して、事前に自分のマントで彼をぐるぐる巻きにしておいたのだ。エルケニヒはその状態のリョウマを楽しげにだきしめてにこにこ笑った。
「まあ、よいではないか。すでに情を交わした仲なのだし。苦しゅうないぞ」
「どわぁれが、てめえと情を交わしたんだこのすっとこどっこいがあ! 苦っしいわ、苦しみまくりだわ放せドスケベ魔王~!」
ジタバタ暴れて叫びまくっても、この「ミノムシ状態」ではまったく恰好がつかない。暴れるといっても、せいぜいエビ反り状態になるぐらいが関の山だ。
口の悪さもわんぱくさも相変わらずだが、そこが可愛いのだから魔王としてはまったく問題ない。それに、それはどこか「起こった事実をなんとか覆い隠そう」という努力のようにしか見えなかった。まあ成功はしていなかったが。
エルケニヒは真っ赤になって暴れているリョウマの額に、ちゅっと軽くキスをした。
「ひぎえあああっ!」
「まあ確かに最後までは致していないがな。そのうち必ず、最後まで致して最高の天国を見せてみせるゆえ、楽しみにしておいてくれ」
「なっ……なな、なにが最後までだこのスカポンタン野郎があああ! いいからこれを解け、放せっつーんだバカ野郎!」
「はっはははは!」
「んなっ……」
こんな風に大口を開けて笑うのは久しぶりだ。楽しくて仕方がない。リョウマにとっては初めて見る顔なのだろう。突然、ぎょっとなって黙り込んでしまった。「鳩が豆鉄砲を食ったような顔」とは、きっとこんな顔のことを言う。
エルケニヒはひとしきり、ぐるぐる巻きのままのリョウマの背中をばしばし叩いて大笑いをしたあと、ひょいとそのまま抱き上げた。
「おわあっ? な、なにすんっ……!」
「戻るぞ。いつまでもこんな森にいるのはよくない。気分が悪いし、何より運気が下がる」
「そりゃ同感。ってそーゆー話じゃねえ! どこ行くんだよ、ってえか下ろせってえええ!」
やっぱりじたばた、わーわー言い続けるリョウマのことはもうきれいに無視して、エルケニヒはそのまま大股に歩き始めた。
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