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しおりを挟む「まことだぞ、リョウマ。ローティほど何もかも顔に出る方ではないだけなのだ。信じてほしい」
「あーそーですかってんだバッキャローめ」
ばふん、とわざと大きな音を立てて、リョウマは寝台にもぐりこんだ。
一秒とかからず、魔王もその隣に滑り込んでくる。リョウマは体ごとぷいと反対側を向いて目を閉じた。
伸びてくる大きな手を激しく払いのける。
「触んなっつーの」
「だがリョウマ」
「今日は疲れてっしー。もう寝る。ぜってー寝るからな俺は! 触んなよ」
「……それは構わぬが。その前にこれだけ、聞いてくれぬか」
「うるせえうるせえっ」
「そなたの美醜など私はどうでもよいのだ」
「だからうるせえって!」
がばっと跳ね起きて魔王を睨み下ろす。魔王はやや悲しげな目をしていたが、それは見て見ぬふりをした。
「外見の美醜など些末なこと。そもそも他者の美醜をあれこれと品評することそのものが下郎の真似ではないか。左様な下品の輩の真似事などするものかよ。この私が」
「言葉が難しくてわっかりませ~ん」
ふんっとそっぽを向いたが、起き上がった魔王に体を抱き寄せられるのには逆らわなかった。なんとなくだが。
「すまぬ。言い方が悪かったようだ。……そなたは綺麗だとも。なによりもその、心根が」
「…………」
「人にとって最も重要なのはそこではないのか? 見た目の美醜なぞどうでもよい。もちろん、そなたの姿も私は好きだが……たとえそなたが大怪我でもしてぐちゃぐちゃの顔になっても、たとえしわくちゃの爺さんになったとしても、私は今と同様そなたを愛し抜くつもりだ。その自信が私にはある……それではダメなのか」
「……いやぐちゃぐちゃって。しわくちゃのじーさんってよ──」
「まことの気持ちだ」
(ぐぬぬぬ)
いや、ダメではない。ちっともダメではない! むしろそういうののほうがはるかに好みだ。そういう男の方が自分だってずっと好みだ。大好きだとも!
……と、素直に正直に言えたら世話はないのだ。
が、ふくれっ面はそのままながら明らかに肩から力を抜いておとなしくなったリョウマを、魔王はぎゅっと背後から抱きしめてきた。
「……言葉が足らなかったな。許してくれ。リョウマ」
「うう~~」
「愛している。どのような姿のそなたも、心から。この世で最も愛している」
「うううう~~~~……」
(恥っっず)
恥ずかしい。羞恥で全身が燃えるようだ。こんな気分になったのは久しぶりだった。
そもそもこいつと結婚をして魔王の王配となり、すでに数年が過ぎている。このほど結婚した王子ローティアスをはじめ美しく優秀な王女サファイラ、それにその下にも王子や王女たちを何人も儲けた。
魔族の子どもたちの成長は非常に速く、手のかかる幼児までの時間は短かったけれども、それでも親として、また家族として魔王とともに過ごした時間はすでにリョウマにとってもかけがえのないものだ。
こんな風になってまで、まだ自分は嫉妬の感情から逃れられない。そんな自分が情けなくも恨めしいし、恥ずかしい。
リョウマは自分の顔を両手で覆った。
「……ゴメン。俺もちょっと、言い過ぎた……」
「構わぬ。そなたの嫉妬はいつでも大歓迎ゆえ」
「俺だって、大歓迎ですう……ふんっっ」
魔王の腕の中で体を回し、向き合う形になって抱きしめ返した。
「ありがとう。いつまで経ってもそなたは可愛いな」
「へ~へ~。どうもありがとなっ」
ぶんむくれて「イーッ」という顔をしてやったところへ、ちゅっと口づけがおりてきた。
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