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しおりを挟む「くう……っ」
何度この行為を繰り返していても、魔王のそれを受け入れる瞬間だけはその圧力に押し潰されそうになる。体の大きな魔王のそれは、やっぱりどう見てもリョウマの身体からすれば大きすぎるからだ。が、魔王はとうの昔にそのタイミングを熟知していて、すぐに《緩和》の魔法を掛けてくれる。そうするとすぐに楽になった。
あとはひたすらに快感を追うだけだ。
「んあ……っあ、ああっ……」
向かい合わせになって魔王の膝に跨り、下から貫かれる。それから後ろを向かされて後ろから突かれる──。
大抵はリョウマが何度か達したあとで、ようやく魔王自身も達する。
リョウマ自身が十分に快楽を舐めつくしたタイミングを、ちゃんと魔王は観察して見極めている。こっちが意識を飛ばしかかっているというのにそれだけ冷静でいられるというのも、なんだか微妙な気分にはなるのだが、そう感じるのは大体、すべてのことが終わって遅ければ翌朝目を覚ましたときのことだった。
実は本日もそうだった。
本日というか、翌朝なのだが。
いつものように快楽の絶頂を迎えてそのまま眠ってしまったリョウマの身体を、魔王は魔法できれいにし、清潔な夜着に着替えさせて共寝をしていた。
リョウマが目を覚ました時にはもう白々と夜が明けようとしている頃合いだった。
「ぶ~~~~……」
「目が覚めたか。どうしたのだリョウマ」
「ぶ~~~~…………」
いつまでもふくれっ面をして、それでも魔王の胸に頭をぴったりくっつけているリョウマを見て、魔王がくくっと喉を鳴らした。そのまま、そっと抱きしめてくれる。
「お前、冷静すぎんだろ? 最初っからそうだけどさー。ちったあ俺に溺れろや。あんだけ惚れてる惚れてるっつう割には冷静がすぎるっつーの!」
「十分、溺れているつもりなのだが」
「嘘つけ嘘つけっ、このやろっっ」
本気ではないパンチでぽかぽか魔王の胸を殴るが、案の定魔王は平気な顔だ。それどころかちょっと嬉しそうだ。これもいつものことである。
「一体、何度『まことだ』と申せば信じてくれるのやら。我が愛する配殿下は──」
「ふんっ」
「『顔に出にくい体質なのだ』と何度も申しているというのに」
「ふん、ふんっっ」
「もし、義理の息子になったあの男以外にも、そなたに懸想する者が出たならば。地の果てまで追いかけてでもふん捕まえ、考え得る限りの拷問を加えた上で息の根を止める自信があるというのに」
「いっ……いきなり怖いこと言うなああっ! エグいわ!」
「はははは!」
こんな、ちょっとばかり過激な睦言もいつものことだ。
陽が昇るまでにはまだ少しあるので、ふたりは少し飲み物で喉を潤したあと、なんとなくそのまま寝台の中でゆっくり過ごした。
「そういえばさあ」
「ん? なんだ」
「俺らの子どもの頃の話はよくしたけど。お前の話って聞いたことねえよなあ?」
「私の……子どものころ?」
「うん」
ふと魔王が沈黙する。寝床の中で抱きしめられたままそうっと見上げると、やや遠くを見るような目をした魔王の顔があった。
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