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楽しい食事会
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案内されたのは一見倉庫のような外観をしている不思議なお店。
『We're closed for a private event.』
そう書かれた札があるからかろうじてお店なんだとわかるけれど、きっと一人なら、本当にお店なんだろうかと躊躇ってしまいそうな佇まいだった。
けれど、扉を開けて中に入ると外観とは対照的に落ち着いた雰囲気が広がっていて、中も思っていたよりも広くてなんだかホッとする。
「やぁ、いらっしゃい」
優しく声を開けてきてくれた人、この人が店主さんかな。
だって、高遠さんの表情がすごく嬉しそうだもん。
「大夢、こっちにおいで」
店主さんらしき人が声をかけると、高遠さんが嬉しそうにさっと駆け寄った。
やっぱり名前で呼んでいるし、きっと彼がそうなんだろうな。
でもまだ仲がいい友人っていう可能性もあるよね。
どうなんだろう。
ドキドキしながら見守っていると、
「初めまして。小田切さん。この店の店主の日下部祥也です。お噂はかねがね伺っています。それから、北原くん。君のことも弟から聞いているよ。とても優秀な事務員だそうだね」
とにこやかな笑顔で挨拶をしてくれる。
えっ、今、日下部って言った?
確か田辺の本名も……えっ、ちょっと待って、弟?
頭の仲が混乱してくる。
店主さんが恋人だと高遠さんは言っていた。
その恋人さんが目の前の人で、そして田辺のお兄さんってこと?
情報が多すぎて処理しきれずに大声をあげてしまったら、ちょっと笑われた気がする。
でも、びっくりしたんだもん。
でもそうなると、支社長と高遠さんは義兄弟ってことに?
田辺と宇佐美さんも親戚だって言ってたし……なんかこんなすごい偶然があっていいのかなって思うくらいにひしめき合ってる。
それだけじゃなくて、宇佐美さんの恋人さんと智さんも知り合いだっていうし、同期さんも智さんのお友達だし……ああ、僕がこの中に一緒にいられることが嬉しくてたまらないな。
そう思ったら自然と涙が溢れてくる。
「僕っ、すごく嬉しいです!!! こんな幸せな空間に一緒にいることができて……」
僕の思いを伝えた途端、突然、
「じゃあ、その幸せな空間に私も混ぜてもらおうかな」
と素敵な声が響いた。
えっ? 誰?
お客さん?
でも貸切だって言っていたのに……。
そう思っていると、宇佐美さんと智さんが目を丸くして驚きの声を上げた。
「誉さんっ!」
「上田先生っ!!」
えっ?
この人が智さんの同僚さんで、宇佐美さんの恋人さん?
宇佐美さんの表情がものすごく嬉しそうだ。
さっきまでの顔も綺麗だったけれど、今はなんか可愛く見える。
二人の会話を聞いていると、どうやら田辺から今回の食事会の話を聞いて時間の都合をつけてきてくれたみたいだ。
それにしてもここはロサンゼルスだっていうのに、すごくフットワークが軽い人なんだな。
それも宇佐美さんのためなんだろうと思うと、他人事ながらなんだか嬉しくなってしまった。
すっかりイチャイチャと二人の世界に入ってしまった宇佐美さんと恋人さんを見ていると、みんなの視線が田辺に注いでいる。
どうやら声をかけてくれと訴えているみたいだ。
ふふっ。こういう時にも頼りにされるんだな。
田辺の声かけで、ようやくイチャイチャタイムがおさまって、奥の広い個室に案内された。
今日は貸切だからスタッフさんもお休みにしているみたいで手が足りなそうだけど、高遠さんがすぐに応援に向かったから大丈夫なのかな。
「智さん、上田先生が来られててびっくりしてましたね」
「ああ、まさかここで会えるとは思ってなかったからね。でも、みんなが揃ってよかったよ」
「はい。そうですね」
みんなで手分けして飲み物を準備している間に出来立ての料理がどんどん運ばれてくる。
そのあまりにも美味しそうな匂いに、思わず見惚れて声が漏れてしまった。
支社長さんたちが優しく微笑んでくれたけど、ちょっと恥ずかしいな……。
全ての料理を運び終えた田辺のお兄さんと高遠さんが席につき、とうとう食事会が始まった。
八人がけの席の僕たちの向かいには高遠さんと田辺のお兄さんが座った。
「北原くん、これ美味しいから食べてみて」
「わぁ、いただきます! んんっ! すっごく美味しいです!」
「ふふっ。でしょう? これも美味しいんだよ」
そう言って高遠さんは僕にいろんな料理を勧めてくれる。
すると、競うように
「暁、こっちも美味しいぞ」
と智さんが口に中に運んでくれる。
「んんっ! 美味しいです!!」
「ふふっ。よかった」
智さんと顔を見合わせていると、
「ふふっ。小田切先生の気持ちよくわかりますよ」
と田辺のお兄さんが口を開いた。
「今、大夢に嫉妬されたでしょう?」
「わかりますか?」
「ええ。私も同じですから」
「ふふっ。それならよかった」
「さぁ、ワインをどうぞ」
「ありがとうございます」
なんだか智さんと田辺のお兄さん、すごく気が合ってる感じだ。
僕と高遠さんはそんな二人の様子を見ながら顔を見合わせて笑った。
『We're closed for a private event.』
そう書かれた札があるからかろうじてお店なんだとわかるけれど、きっと一人なら、本当にお店なんだろうかと躊躇ってしまいそうな佇まいだった。
けれど、扉を開けて中に入ると外観とは対照的に落ち着いた雰囲気が広がっていて、中も思っていたよりも広くてなんだかホッとする。
「やぁ、いらっしゃい」
優しく声を開けてきてくれた人、この人が店主さんかな。
だって、高遠さんの表情がすごく嬉しそうだもん。
「大夢、こっちにおいで」
店主さんらしき人が声をかけると、高遠さんが嬉しそうにさっと駆け寄った。
やっぱり名前で呼んでいるし、きっと彼がそうなんだろうな。
でもまだ仲がいい友人っていう可能性もあるよね。
どうなんだろう。
ドキドキしながら見守っていると、
「初めまして。小田切さん。この店の店主の日下部祥也です。お噂はかねがね伺っています。それから、北原くん。君のことも弟から聞いているよ。とても優秀な事務員だそうだね」
とにこやかな笑顔で挨拶をしてくれる。
えっ、今、日下部って言った?
確か田辺の本名も……えっ、ちょっと待って、弟?
頭の仲が混乱してくる。
店主さんが恋人だと高遠さんは言っていた。
その恋人さんが目の前の人で、そして田辺のお兄さんってこと?
情報が多すぎて処理しきれずに大声をあげてしまったら、ちょっと笑われた気がする。
でも、びっくりしたんだもん。
でもそうなると、支社長と高遠さんは義兄弟ってことに?
田辺と宇佐美さんも親戚だって言ってたし……なんかこんなすごい偶然があっていいのかなって思うくらいにひしめき合ってる。
それだけじゃなくて、宇佐美さんの恋人さんと智さんも知り合いだっていうし、同期さんも智さんのお友達だし……ああ、僕がこの中に一緒にいられることが嬉しくてたまらないな。
そう思ったら自然と涙が溢れてくる。
「僕っ、すごく嬉しいです!!! こんな幸せな空間に一緒にいることができて……」
僕の思いを伝えた途端、突然、
「じゃあ、その幸せな空間に私も混ぜてもらおうかな」
と素敵な声が響いた。
えっ? 誰?
お客さん?
でも貸切だって言っていたのに……。
そう思っていると、宇佐美さんと智さんが目を丸くして驚きの声を上げた。
「誉さんっ!」
「上田先生っ!!」
えっ?
この人が智さんの同僚さんで、宇佐美さんの恋人さん?
宇佐美さんの表情がものすごく嬉しそうだ。
さっきまでの顔も綺麗だったけれど、今はなんか可愛く見える。
二人の会話を聞いていると、どうやら田辺から今回の食事会の話を聞いて時間の都合をつけてきてくれたみたいだ。
それにしてもここはロサンゼルスだっていうのに、すごくフットワークが軽い人なんだな。
それも宇佐美さんのためなんだろうと思うと、他人事ながらなんだか嬉しくなってしまった。
すっかりイチャイチャと二人の世界に入ってしまった宇佐美さんと恋人さんを見ていると、みんなの視線が田辺に注いでいる。
どうやら声をかけてくれと訴えているみたいだ。
ふふっ。こういう時にも頼りにされるんだな。
田辺の声かけで、ようやくイチャイチャタイムがおさまって、奥の広い個室に案内された。
今日は貸切だからスタッフさんもお休みにしているみたいで手が足りなそうだけど、高遠さんがすぐに応援に向かったから大丈夫なのかな。
「智さん、上田先生が来られててびっくりしてましたね」
「ああ、まさかここで会えるとは思ってなかったからね。でも、みんなが揃ってよかったよ」
「はい。そうですね」
みんなで手分けして飲み物を準備している間に出来立ての料理がどんどん運ばれてくる。
そのあまりにも美味しそうな匂いに、思わず見惚れて声が漏れてしまった。
支社長さんたちが優しく微笑んでくれたけど、ちょっと恥ずかしいな……。
全ての料理を運び終えた田辺のお兄さんと高遠さんが席につき、とうとう食事会が始まった。
八人がけの席の僕たちの向かいには高遠さんと田辺のお兄さんが座った。
「北原くん、これ美味しいから食べてみて」
「わぁ、いただきます! んんっ! すっごく美味しいです!」
「ふふっ。でしょう? これも美味しいんだよ」
そう言って高遠さんは僕にいろんな料理を勧めてくれる。
すると、競うように
「暁、こっちも美味しいぞ」
と智さんが口に中に運んでくれる。
「んんっ! 美味しいです!!」
「ふふっ。よかった」
智さんと顔を見合わせていると、
「ふふっ。小田切先生の気持ちよくわかりますよ」
と田辺のお兄さんが口を開いた。
「今、大夢に嫉妬されたでしょう?」
「わかりますか?」
「ええ。私も同じですから」
「ふふっ。それならよかった」
「さぁ、ワインをどうぞ」
「ありがとうございます」
なんだか智さんと田辺のお兄さん、すごく気が合ってる感じだ。
僕と高遠さんはそんな二人の様子を見ながら顔を見合わせて笑った。
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いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
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