ウブで真面目な理学療法士の初恋のお相手はセレブなイケメン敏腕秘書でした

波木真帆

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はじまりの朝

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「今日もいい天気ですね」

「ええ。これから旅行に向かうには最高の天気です」

すっきりと爽やかな目覚めだった尚孝さんの隣で、私は今日から始まる二人っきりの旅行を思い、欲望に塗れていたがそんな顔は微塵も見せず尚孝さんに笑顔を返した。

今日は会長と一花さんを東京のご自宅に送り届けたら私の仕事は終わり。
完全プライベートだ。

尚孝さんと二人で幸せな朝食を摂り、あと一時間後に迫ったチェックアウトを前に、尚孝さんを誘って朝の散歩にでも行こうかと考えていた。

その時、私のスマホが着信を告げた。

メッセージではなく、電話だったことにすぐに反応してスマホを手に取ると相手は会長。
この時間に電話ということは……

なんとなく電話の内容を察しながら、電話を受けた。

今大丈夫か? とこちらを気遣う声を聞くだけでやはりと思う。

ー悪いんだが、今から君たちにタクシーを手配する。それに乗って空港に向かってくれないか? ああ、志摩くんが自分の車が必要だというなら、タクシーで私の家に向かってくれてもいい。

それだけで全てを理解したが、とりあえず何かあったのかと尋ねると、会長は一瞬言葉に詰まったが諦めたよう理由を話した。

ーいや、一花がまだ眠っているからチェックアウトを遅らせようと思ってね。キャンピングカーは私が運転して帰るから、志摩くんたちはタクシーを使ってくれ。

ーなるほど。そういうことですか。一花さんは大丈夫なのですか? 

この時間にまだ眠っている。
しかもチェックアウトには間に合わない。
それだけで昨夜、かなり激しく愛し合ったのだろうということが察せられた。
その可能性は最初から考えていたから今さらとやかくいうことではない。一花さんさえ、大丈夫ならそれでいい。

ーああ、疲れて寝ているだけだから問題ない。ただもう少し休ませたほうがいいからな。

医師免許も持っている会長がそういうのなら問題はないだろう。
あとは夫夫の問題だ。

会長のご自宅のセキュリティの件だけを確認して、私は電話を切った。

「唯人さん、何かあったんでしょうか?」

「いえ。会長と一花さんはもうしばらくこちらで休んでいかれるようです。ですから、私たちはタクシーで東京に戻ることになりました」

「そうなんですね。一花くん、よっぽどこの保養所が気に入ったんでしょうね。ここの温泉は足の疲れをほぐすにもピッタリなのでゆっくり温泉を楽しんで帰るといいですよ」

「そうですね」

尚孝さんの頭には、ベッドの住人になっている一花さんの姿は微塵もないだろう。

けれど、あと数日後には尚孝さんも身をもって体験することになる。
その時に初めて、チェックアウトの時間にこられなかった一花さんの状態を知るのだろうな。

尚孝さんが気づくまではこれはそのままにしておくとしよう。

部屋でのんびりしてタクシーの到着を待っていると、三十分ほどでフロントからタクシーが到着したという連絡が来た。

「尚孝さん、行きましょうか」

「はい」

花が綻ぶような笑顔を見せてくれる尚孝さんの姿に、私との旅行を心から楽しみにしてくれている様子が伝わってくる。

「尚孝さん……」

「んんっ……ん……」

我慢できずに唇を重ねると、尚孝さんは驚きつつも唇を開き舌を絡めてくれる。
甘い甘い唾液を味わい、ゆっくりと唇を離すとほんのり頬を染めた尚孝さんが私にもたれかかってきた。

「すみません、急にキスなんて……」

これから出かけるというのに我慢できずに呆れられたかと思ったが、尚孝さんは笑顔で私を見上げた。

「東京に着くまで今のキスで我慢してくださいね。そして二人っきりになったらまたキスしてください」

「――っ!!」

ああもう! 尚孝さんはどれだけ私を翻弄するのだろう。
可愛過ぎて困るな。

可愛い尚孝さんの腰にしっかりと腕を回し、片手にキャリーケースを持って部屋を出る。
幸い時間が早いからか、私たち以外の宿泊客の姿は見えない。

ホッとしつつチャックアウトの手続きをして、玄関を出る。

会長が呼んでくれていたタクシーに尚孝さんを先に乗せ、荷物をトランクに置いてから運転手に行き先を告げた。
そうして、私も後部座席に乗り込んだ。

スムーズに東京まで帰ることができ、あっという間に会長のご自宅に到着した。
セキュリティを解除し、私の車を止めていた地下駐車場に向かう。
そうしてようやく私の車の助手席に尚孝さんを乗せることができた。
ここからは完全プライベート。

「それじゃあこのまま空港に向かいますね」

「はい。あの、その前に……」

「えっ? んっ!!」

可愛い尚孝さんの顔が近づいてきたと思ったら、身を乗り出してきた尚孝さんが私の唇にキスをする。

「僕たちの旅行の始まりですね」

嬉しそうに笑う尚孝さんをみて、私は堪えきれずにもう一度唇を重ねた。

ああ、一週間一緒に過ごしたら煽られまくって私はおかしくなってしまうかもしれないな。
そんな心配をしつつ、私は空港に向かって車を走らせた。
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