ウブで真面目な理学療法士の初恋のお相手はセレブなイケメン敏腕秘書でした

波木真帆

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可愛らしい店

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一度駐車場に戻り、車で次なる目的地に向かう。

「次はお買い物でしたね。唯人さん、何か欲しいものがありますか?」

「ええ、いいお店があるので、これからのシーズンの服を買い揃えようと思ってるんです」

「わぁ、それは楽しみですね」

ええ。楽しみですよ。
全て私が選んだ服に身を包んでくれる尚孝さんを見られるのがね。

青山の一等地にある蓮見さんのお店『Clef deクレ ド Coeurクール青山店』は他の『Clef deクレ ド Coeurクール』とは明らかに系統が違う服が置いてあることで有名だ。

通常のClef deクレ ド Coeurクールは、店舗ごとにコンセプトを分けてはいるが、基本的なところは同じでクールでダークトーンな色使いを好み、シンプルかつ上品な服でプライベートでもビジネスシーンでも使い勝手のいい服が揃っている。

けれど、この青山店だけは、明るく可愛らしい印象の服が揃えられている。

蓮見社長の弟で、テリフィックオフィスという有名な芸能事務所のGMである蓮見涼平氏が同性婚をした、実力派俳優の南條なんじょう朝陽あさひさんがこの青山店のイメージモデルになっていることを考えると、ここの店舗が彼のような綺麗な男性をターゲットにしていることは明白だろう。

一花さん――その時はまだひかるさんだったが――の服を買い揃えたいが、いい店を知らないかと言われた時、すぐには思い付かずに顧問弁護士の礒山先生にお知恵を拝借したところ、礒山先生のご伴侶の服をいつもこの店舗で購入しているとお教えいただき、会長と一緒に買い物に行った。

会長が買い物をしている間、スタッフと少し話をしたのだが、蓮見さんは最近、ここの店舗にかける情熱がすごく、新作を毎月のように出しているそうだ。
その時は、義弟である朝陽さんのために新作を作っているのかと思っていたが、きっとそれは浅香さんのためだろう。

ここの店舗の売り上げは他店舗の数倍はあると話していたから、かなりのものだ。

私も今日はここの売り上げに貢献するべく、尚孝さんの服をたくさん買うとしよう。


店舗専用の駐車場に車を止め、尚孝さんを案内する。

「唯人さんの仰ってた店はここですか?」

「ええ。以前、貴船会長の買い物に同行したときに知ったお店なんですよ」

「へぇ、貴船さん。こんな可愛らしいお店でお買い物されるんですね。意外です」

「ふふっ。じゃあ、行きましょうか」

白を基調とした可愛らしい店内を見て、

「わっ! まるでお城みたいですね」

と可愛らしい声をあげる。

「ふふっ。そうでしょう? ほら、尚孝さん。この服はどうですか?」

「えっ、とっても素敵ですけど唯人さんには少し可愛すぎる気が……すみません」

「いえ、それでいいんです。今日は尚孝さんの服を買いに来たので」

「えっ? 僕の服、ですか?」

「ええ。私に選ばせてもらえますか?」

「でも……」

「尚孝さんに私の選んだ服を着ていただきたいんです」

「唯人さん……」

「ねっ、いいでしょう?」

そういうと、尚孝さんは嬉しそうに頷いてくれて、

「唯人さんに選んでいただけるなんて、夢みたいです」

と言ってくれた。

「よし!」

これで言質はとった。

たっぷりと選ばせてもらうことにしよう。

「いらっしゃいませ。あちらは今日入って来たばかりの新作をご用意しております。何かあればお声がけくださいませ」

私たちの話が一段落ついたのを見計らったようにスタッフが声をかけてきたが、余計な話はなく必要事項だけを伝えてくれる。
会長と来た時には、会長がいろいろと質問していたこともあって、かなり親身に対応してくれていたが、今日は恋人と一緒だと理解してくれているのだろう。

そういう配慮もさすが蓮見さんの店だと思わされる。

「尚孝さん、これ絶対に似合いますよ。ああ、こっちもいいですね。それから……ああ、これも!」

「唯人さん、さすがに多すぎです」

「そんなことないですよ。まだまだ足りないくらいです」

「でも……」

「あ、では試着してみませんか? それで絞っていきましょう」

「あ、はい。そうですね」

ホッとした表情を見せているが、買わないという選択肢はない。
これから増えることはあっても減ることはないだろうな。

「試着をお願いします」

「はい。こちらにどうぞ」

案内されたのは、通常の試着室の三倍はあろうかという広々とした部屋。

「ご一緒にお入りいただいて構いませんよ」

「そうですか。ありがとうございます」

「えっ……えっ……」

「ふふっ。入りますよ、尚孝さん」

何が何だかわからないとでも言いたげな尚孝さんの腰を抱いて、一緒に試着室に入る。

ああ、やはり蓮見さんの店は最高だな。
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