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ずっと抱きしめて
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昨日は『歩けなかった~』の番外編を出すことができたので、今日はこちらの二人を出してみました。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
貴船邸までキャンピングカーを運転し、無事に送り届けると未知子さんから最高級のステーキ肉を頂いた。
遠慮しようかと思ったが、今日のお礼だと言われれば断る理由もない。
この肉を夕食にすれば、尚孝さんとの時間が長く過ごせるのだから。
遠慮なくいただき、私は貴船邸を後にした。
尚孝さんは待ちくたびれているだろう。せっかくの休日に可哀想なことをした。
急いで自宅に戻り鍵を開け
「尚孝さん?」
と声をかけたが、部屋の中はしんと静まり返っていた。
どこかに出掛けてはいないだろうから、寝ているのかもしれない。それならきっと寝室にいるだろう。
もらったステーキ肉を冷蔵庫に入れて、手だけ洗ってそっと足音を立てずに私たちの寝室に入った。
ベッドを覗き込むと、薄暗いベッドの中に尚孝さんがいる。
「ただい――っ!!!」
優しく声をかけようとした私の目に飛び込んできたのは、私のパジャマを抱きしめて寝ている尚孝さんの姿だった。
本当に、尚孝さんは……。なんていじらしいんだろう。
寂しいとも言わず、必死に我慢しようとして……それでも私の匂いを探し求めてくれた。
その姿に胸がいっぱいになってどうしようもない。
私はジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイを引き抜くとワイシャツのボタンを二個ほど開けて、そっとベッドに身体を滑り込ませた。
「んっ……」
起こしたか? いや、まだ寝ているみたいだ。
私が入ってきたことに本能が気づいたらしい。無意識に私の方に近づいてくる。
嬉しそうに私の胸元に擦り寄ってきたかと思ったら素肌の見えるあたりの匂いを嗅いでいるのがわかる。
「ふふっ……ゆ、いとさん……っ」
さっきまで抱きしめていたパジャマはお役御免になったようでいつまにか尚孝さんの手から離れていた。
パジャマより実物がいいとわかってくれたか。
どうやら私は自分のパジャマにすら嫉妬してしまっていたようだ。
尚孝さんの全てが私のものになって嬉しくてたまらない。
それからしばらくの間、尚孝さんを腕のなかに閉じ込め、可愛い寝顔を堪能していると、
「きゅるる」
とお腹の鳴る音が聞こえた。
一応食事の支度はしていったが、こんなにも寂しがらせていたんだ。食欲はあまりなかったのかもしれない。
もう離れ離れの休日を過ごすのは今日で最後にしよう。
そう心に誓い、尚孝さんを優しく起こした。
<side尚孝>
唯人さんはまだかな?
でも長くなっているということはきっとうまくいったんだろう。
あの電話でも大丈夫だと話していたし、そのあと磯山先生や絢斗さんたちも交えて楽しい時間を過ごしているに違いない。
みんなが楽しんでいるのだから、僕が邪魔なんかできないよな。
でも、唯人さん……早く会いたいな。
広いリビングに一人でいるのがたまらなく寂しくなってきて、僕は寝室に戻った。
今日の朝はギリギリまでそばにいてくれたから、唯人さんにしては珍しくパジャマをベッド脇に置いたままだったんだ。
それを手に取ると、ふわっと唯人さんの匂いがした。
これがあればもう少しなら待っていられそう。
そう思った僕は唯人さんのパジャマを抱きしめてベッドに横になった。
唯人さんの匂いに包まれると寂しさが和らいでくるから不思議だ。
僕はそのまま眠ってしまっていた。
すると、匂いがどんどん強くなってくる。
こんなにいい匂いならどれだけでも待っていられそうだな……。ああ、幸せだ……。
「――たかさん、尚孝さん……」
ずっと聴きたかった声が聞こえたような気がして、目を覚ますと目の前に唯人さんがいた。
しかもギュッと抱きしめられていて訳がわからない
「えっ? ゆ、いとさん? ほん、もの?」
「はい。本物ですよ。尚孝さんの唯人です」
「いつの間に?」
「三十分くらいでしょうか。尚孝さんが眠っていたので、私も一緒に寝かせてもらったんです。尚孝さんが擦り寄ってきてくれたので嬉しかったですよ。可愛い寝顔も見られて幸せでした」
「――っ!!!」
あれは夢だと思っていた。
「あっ! 唯人さんのパジャマは……?」
手に持っていたはずなのにそれがない。
「ああ、あれなら私が隣に寝たらすぐに尚孝さんがベッドの下に落としてましたよ」
「えっ! ごめんなさい! 勝手に使ったのに……」
「いいえ。私は嬉しかったんですよ」
「嬉しい?」
「ええ。私がいない間に私を求めてくれていたことも嬉しかったですし、パジャマよりも本物の私の方が好きだってこともわかりましたし。尚孝さん、そうですよね?」
恥ずかしかったけれど、唯人さんのいうとおりだ。
頷くと唯人さんはギュッと抱きしめてくれた。
「寂しがらせてすみません。もう二度と離れたりしませんから」
「あの、一花くんと直純くんはもう、大丈夫なんですよね?」
「ええ。もう大丈夫です。磯山先生達とも打ち解けてましたよ」
「よかった……それだけで、唯人さんを待ってた甲斐がありました」
「尚孝さん……っ!!」
うまくいった、それだけでいいんだ。
「あの、今日の夜はずっと抱きしめててもらえますか?」
「――っ!! ええ。もちろんですよ」
唯人さんは満面の笑みで僕に甘いキスをしてくれた。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
貴船邸までキャンピングカーを運転し、無事に送り届けると未知子さんから最高級のステーキ肉を頂いた。
遠慮しようかと思ったが、今日のお礼だと言われれば断る理由もない。
この肉を夕食にすれば、尚孝さんとの時間が長く過ごせるのだから。
遠慮なくいただき、私は貴船邸を後にした。
尚孝さんは待ちくたびれているだろう。せっかくの休日に可哀想なことをした。
急いで自宅に戻り鍵を開け
「尚孝さん?」
と声をかけたが、部屋の中はしんと静まり返っていた。
どこかに出掛けてはいないだろうから、寝ているのかもしれない。それならきっと寝室にいるだろう。
もらったステーキ肉を冷蔵庫に入れて、手だけ洗ってそっと足音を立てずに私たちの寝室に入った。
ベッドを覗き込むと、薄暗いベッドの中に尚孝さんがいる。
「ただい――っ!!!」
優しく声をかけようとした私の目に飛び込んできたのは、私のパジャマを抱きしめて寝ている尚孝さんの姿だった。
本当に、尚孝さんは……。なんていじらしいんだろう。
寂しいとも言わず、必死に我慢しようとして……それでも私の匂いを探し求めてくれた。
その姿に胸がいっぱいになってどうしようもない。
私はジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイを引き抜くとワイシャツのボタンを二個ほど開けて、そっとベッドに身体を滑り込ませた。
「んっ……」
起こしたか? いや、まだ寝ているみたいだ。
私が入ってきたことに本能が気づいたらしい。無意識に私の方に近づいてくる。
嬉しそうに私の胸元に擦り寄ってきたかと思ったら素肌の見えるあたりの匂いを嗅いでいるのがわかる。
「ふふっ……ゆ、いとさん……っ」
さっきまで抱きしめていたパジャマはお役御免になったようでいつまにか尚孝さんの手から離れていた。
パジャマより実物がいいとわかってくれたか。
どうやら私は自分のパジャマにすら嫉妬してしまっていたようだ。
尚孝さんの全てが私のものになって嬉しくてたまらない。
それからしばらくの間、尚孝さんを腕のなかに閉じ込め、可愛い寝顔を堪能していると、
「きゅるる」
とお腹の鳴る音が聞こえた。
一応食事の支度はしていったが、こんなにも寂しがらせていたんだ。食欲はあまりなかったのかもしれない。
もう離れ離れの休日を過ごすのは今日で最後にしよう。
そう心に誓い、尚孝さんを優しく起こした。
<side尚孝>
唯人さんはまだかな?
でも長くなっているということはきっとうまくいったんだろう。
あの電話でも大丈夫だと話していたし、そのあと磯山先生や絢斗さんたちも交えて楽しい時間を過ごしているに違いない。
みんなが楽しんでいるのだから、僕が邪魔なんかできないよな。
でも、唯人さん……早く会いたいな。
広いリビングに一人でいるのがたまらなく寂しくなってきて、僕は寝室に戻った。
今日の朝はギリギリまでそばにいてくれたから、唯人さんにしては珍しくパジャマをベッド脇に置いたままだったんだ。
それを手に取ると、ふわっと唯人さんの匂いがした。
これがあればもう少しなら待っていられそう。
そう思った僕は唯人さんのパジャマを抱きしめてベッドに横になった。
唯人さんの匂いに包まれると寂しさが和らいでくるから不思議だ。
僕はそのまま眠ってしまっていた。
すると、匂いがどんどん強くなってくる。
こんなにいい匂いならどれだけでも待っていられそうだな……。ああ、幸せだ……。
「――たかさん、尚孝さん……」
ずっと聴きたかった声が聞こえたような気がして、目を覚ますと目の前に唯人さんがいた。
しかもギュッと抱きしめられていて訳がわからない
「えっ? ゆ、いとさん? ほん、もの?」
「はい。本物ですよ。尚孝さんの唯人です」
「いつの間に?」
「三十分くらいでしょうか。尚孝さんが眠っていたので、私も一緒に寝かせてもらったんです。尚孝さんが擦り寄ってきてくれたので嬉しかったですよ。可愛い寝顔も見られて幸せでした」
「――っ!!!」
あれは夢だと思っていた。
「あっ! 唯人さんのパジャマは……?」
手に持っていたはずなのにそれがない。
「ああ、あれなら私が隣に寝たらすぐに尚孝さんがベッドの下に落としてましたよ」
「えっ! ごめんなさい! 勝手に使ったのに……」
「いいえ。私は嬉しかったんですよ」
「嬉しい?」
「ええ。私がいない間に私を求めてくれていたことも嬉しかったですし、パジャマよりも本物の私の方が好きだってこともわかりましたし。尚孝さん、そうですよね?」
恥ずかしかったけれど、唯人さんのいうとおりだ。
頷くと唯人さんはギュッと抱きしめてくれた。
「寂しがらせてすみません。もう二度と離れたりしませんから」
「あの、一花くんと直純くんはもう、大丈夫なんですよね?」
「ええ。もう大丈夫です。磯山先生達とも打ち解けてましたよ」
「よかった……それだけで、唯人さんを待ってた甲斐がありました」
「尚孝さん……っ!!」
うまくいった、それだけでいいんだ。
「あの、今日の夜はずっと抱きしめててもらえますか?」
「――っ!! ええ。もちろんですよ」
唯人さんは満面の笑みで僕に甘いキスをしてくれた。
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