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番外編
胸が高鳴る
<side保>
可愛い花びらドレスを纏った直が、卓義兄さんに飛び込んでいくのを僕は微笑ましく見守っていた。
僕と直は実の親子だけど、卓義兄さんといるほうがずっと親子に見える。
絢斗さんも一緒に並んでいると、素敵な家族だ。
「保もあの輪の中に入りに行こうか」
お義父さんがそう言ってくれるけれど、僕はお義父さんとお義母さんの息子。
そして、直の叔父というこの立場が直のためにもいいと一番よくわかっている。
「今は家族三人だけで過ごすのがいいと思います」
これは寂しさなんて何もない。
僕の本心だ。
お義父さんは僕の気持ちを理解してくれている。
「そうだな。私たちは私たちで家族三人を楽しもうか」
お義母さんとお義父さんで僕を挟んでくれてそれがなんだかとても嬉しかった。
みんなで教会に移動することになり、お義父さんは義兄さんたちを呼び寄せた。
「保を頼むぞ」
そういうと、お義父さんとお義母さんは直と昇くんの手を繋いで歩き出した。
「転ぶと危ないから手を出して」
卓義兄さんに言われて手を出すと、大きな手で握られる。
もう片方の手も毅義兄さんが握ってくれて、歩きやすい。
でも義兄さんたちに手を繋いでもらうってちょっと恥ずかしいな。
絢斗さんと二葉さんも義兄さんたちと手を繋いで歩き出す。
中庭に出る階段に差し掛かると、絢斗さんが「保くん、足元気をつけて」と声をかけてくれる。
このドレスに合わせてヒールがある靴を用意されていたから初めての靴に緊張したけれど、びっくりするほど歩きやすい。
驚くほど楽に階段を下りることができて、あっという間に中庭に到着。
史紀さんが結婚式を挙げる教会はこの中庭に建っている。
真っ白な壁の小さなチャペルは真っ青な空と周りの青々とした木々とのコントラストがとても綺麗だ。
風も気持ちがいいし、本当に結婚式日和だ。
最高だな
そう思った瞬間、ふわっと大きな風が吹いた。
僕の髪を彩ってくれていた髪飾りについていたピンク色の小さなリボンがその風の力で外れてしまった。
「あっ!」
思わず声が出てしまった。
ひらひらと風に舞うリボンの行方を見つめていると、誰かの手がそのリボンを掴んでくれた。
「ありがとうございます。それ、僕の……」
そう言いながら、急いでリボンを掴んでくれた人の元に向かう。
リボンを掴んでくれた手元しか見ていなかったけれど、視線を落とすと白いシャツワンピースのような衣装に金色の腰帯と、同じ色の帽子? ターバンのようなものを頭につけた高身長の男性が僕に近づいてくるのが見える。
その彼と目が合った瞬間、全身にビリビリと電流が走ったような衝撃を受けた。
何、今の?
「わっ!」
あまりの衝撃に足がもつれて倒れそうになった。
思わず目を瞑ると、僕の身体はトスっと優しい衝撃に包まれた。
「えっ?」
恐る恐る目を開けると、目の前にさっきの男性が現れた。
『Are you ok?』
その優しい声にどきっと胸が高鳴る。
『は、はい。だ、大丈夫、です……』
緊張しすぎて声が上擦ってしまう。
『それならよかった。子猫を怪我させたくなかったからね』
ふわっとした優しい笑みで見つめられてドキドキが止まらない。
『あ、あの……離して、もらっても……』
『ああ、そうだった。申し訳ない。レディをいつまでも抱きしめるなんて……許してほしい』
『レディ? いえ、そんな僕――』
そう言いかけて自分が今、女装をしていたことを思い出した。
僕が男だなんて恥ずかしすぎて言えない。
あまりの羞恥に顔が赤くなっていく。
どうしたらいいのかわからなくなっていると、
『保、大丈夫か?』
と毅義兄さんの声が聞こえた。
彼にもその声が聞こえたようで、スッと僕を離し優しく立たせてくれた。
『あなたはこのレディの知り合いですか?』
『ええ。この子は私の可愛いおと……妹です』
毅義兄さんが咄嗟に僕を妹だと言ってくれた。
それにホッとした自分がいた。
『なるほど。このレディのお兄さんですか。それならよかった』
『よかったとは? どういう意味でしょう?』
『それはこれからわかりますよ』
彼は笑顔で告げると、僕の髪飾りに外れたリボンを器用につけてくれた。
『このリボンはあなたによく似合っている』
『あ、ありがとうございます。あ、あのお名前を伺っても……?』
『私はラシード。またすぐに会えるよ』
そういうと、彼は僕の髪にそっと唇をあて、離れていった。
ラシードさんのその後ろ姿を、僕はしばらく目で追ってしまっていた。
可愛い花びらドレスを纏った直が、卓義兄さんに飛び込んでいくのを僕は微笑ましく見守っていた。
僕と直は実の親子だけど、卓義兄さんといるほうがずっと親子に見える。
絢斗さんも一緒に並んでいると、素敵な家族だ。
「保もあの輪の中に入りに行こうか」
お義父さんがそう言ってくれるけれど、僕はお義父さんとお義母さんの息子。
そして、直の叔父というこの立場が直のためにもいいと一番よくわかっている。
「今は家族三人だけで過ごすのがいいと思います」
これは寂しさなんて何もない。
僕の本心だ。
お義父さんは僕の気持ちを理解してくれている。
「そうだな。私たちは私たちで家族三人を楽しもうか」
お義母さんとお義父さんで僕を挟んでくれてそれがなんだかとても嬉しかった。
みんなで教会に移動することになり、お義父さんは義兄さんたちを呼び寄せた。
「保を頼むぞ」
そういうと、お義父さんとお義母さんは直と昇くんの手を繋いで歩き出した。
「転ぶと危ないから手を出して」
卓義兄さんに言われて手を出すと、大きな手で握られる。
もう片方の手も毅義兄さんが握ってくれて、歩きやすい。
でも義兄さんたちに手を繋いでもらうってちょっと恥ずかしいな。
絢斗さんと二葉さんも義兄さんたちと手を繋いで歩き出す。
中庭に出る階段に差し掛かると、絢斗さんが「保くん、足元気をつけて」と声をかけてくれる。
このドレスに合わせてヒールがある靴を用意されていたから初めての靴に緊張したけれど、びっくりするほど歩きやすい。
驚くほど楽に階段を下りることができて、あっという間に中庭に到着。
史紀さんが結婚式を挙げる教会はこの中庭に建っている。
真っ白な壁の小さなチャペルは真っ青な空と周りの青々とした木々とのコントラストがとても綺麗だ。
風も気持ちがいいし、本当に結婚式日和だ。
最高だな
そう思った瞬間、ふわっと大きな風が吹いた。
僕の髪を彩ってくれていた髪飾りについていたピンク色の小さなリボンがその風の力で外れてしまった。
「あっ!」
思わず声が出てしまった。
ひらひらと風に舞うリボンの行方を見つめていると、誰かの手がそのリボンを掴んでくれた。
「ありがとうございます。それ、僕の……」
そう言いながら、急いでリボンを掴んでくれた人の元に向かう。
リボンを掴んでくれた手元しか見ていなかったけれど、視線を落とすと白いシャツワンピースのような衣装に金色の腰帯と、同じ色の帽子? ターバンのようなものを頭につけた高身長の男性が僕に近づいてくるのが見える。
その彼と目が合った瞬間、全身にビリビリと電流が走ったような衝撃を受けた。
何、今の?
「わっ!」
あまりの衝撃に足がもつれて倒れそうになった。
思わず目を瞑ると、僕の身体はトスっと優しい衝撃に包まれた。
「えっ?」
恐る恐る目を開けると、目の前にさっきの男性が現れた。
『Are you ok?』
その優しい声にどきっと胸が高鳴る。
『は、はい。だ、大丈夫、です……』
緊張しすぎて声が上擦ってしまう。
『それならよかった。子猫を怪我させたくなかったからね』
ふわっとした優しい笑みで見つめられてドキドキが止まらない。
『あ、あの……離して、もらっても……』
『ああ、そうだった。申し訳ない。レディをいつまでも抱きしめるなんて……許してほしい』
『レディ? いえ、そんな僕――』
そう言いかけて自分が今、女装をしていたことを思い出した。
僕が男だなんて恥ずかしすぎて言えない。
あまりの羞恥に顔が赤くなっていく。
どうしたらいいのかわからなくなっていると、
『保、大丈夫か?』
と毅義兄さんの声が聞こえた。
彼にもその声が聞こえたようで、スッと僕を離し優しく立たせてくれた。
『あなたはこのレディの知り合いですか?』
『ええ。この子は私の可愛いおと……妹です』
毅義兄さんが咄嗟に僕を妹だと言ってくれた。
それにホッとした自分がいた。
『なるほど。このレディのお兄さんですか。それならよかった』
『よかったとは? どういう意味でしょう?』
『それはこれからわかりますよ』
彼は笑顔で告げると、僕の髪飾りに外れたリボンを器用につけてくれた。
『このリボンはあなたによく似合っている』
『あ、ありがとうございます。あ、あのお名前を伺っても……?』
『私はラシード。またすぐに会えるよ』
そういうと、彼は僕の髪にそっと唇をあて、離れていった。
ラシードさんのその後ろ姿を、僕はしばらく目で追ってしまっていた。
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