虐待されていた天使を息子として迎え入れたらみんなが幸せになりました

波木真帆

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本当の親子みたい!

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前にいたじいちゃんを押し除けるように直くんに近づくと、直くんはすぐ隣にいたばあちゃんの服を握りながら、じっとこっちを見ている。

「だりぇー?」

俺を見て、ちょっと驚いているみたい。

「昇、自己紹介しないと直くん、怖がっちゃうわよ」

ばあちゃんに言われてその場に立ち止まった。

そうか、突然駆け寄ったから怖がらせてしまったんだ。
小さな子には優しくしないとって言われてたのに、もっと優しくしなきゃ!

俺はゆっくりと直くんに近づいて、ゆっくりとベッドに座った。

「なおくん、おれ、のぼるだよ!」

できるだけ優しい声で喋りかけると、直くんはじっとこっちを見てくれた。

「のぼりゅ?」

うわっ、ちゃんと言えない感じがすっごく可愛い。

「そう、のぼる! ねぇねぇ、これみて!」

俺は持っていたスイートポテトの箱をベッドの横にある棚に置いて、背負っていたリュックを下ろした。
直くんはその様子をずっと見てくれている。
何を一番最初に出してあげようかと思って、直くんの隣に可愛いウサギと犬のぬいぐるみがあるのを見つけた。

よし、ぬいぐるみからだ!

俺はリュックに手を突っ込んで、サンタさんからもらったぬいぐるみを取り出した。

「これ、くまくんだよ」

「くま?」

「そう、くま。これ、なおくんにあげる!」

持ってくる前にちゃんと消毒もしたから安心なはずだ。
俺が差し出すと、直くんは嬉しそうにくまをとってくれた。

「くま、かーいーね」

「んっ?」

今、なんて言ったんだろう?
そっとばあちゃんに視線を送ると、

「可愛いって言ったのよ。直くん、喜んでるわ」

と教えてくれた。

「そっか、きにいってくれてよかった! ほかにもあるんだよ!」

俺が用意していたリュックのものを取り出そうとすると、おかーさんがさっと近くにやってきた。

「昇、まだたっぷり時間はあるから、おもちゃは後にして先にお土産を渡しましょう。直くんもきっと食べたいはずよ」

「あ、そっか。わかったー!!」

俺はリュックを後ろにやって、さっき置いたスイートポテトの箱に目を向けると、おかーさんが箱をとってベッドの上にあるテーブルに載せてくれた。
その間におとーさんとじいちゃんはお皿とフォークを用意してくれているみたい。
すぐるおじちゃんはどこに行ったのかと思ったら、飲み物を用意してくれているみたいだ。

「あらあら、何かしら? 直くんも楽しみね」

「なにー?」

興味津々な様子で箱を覗き込もうとするから、どんなものか早く中を見せてあげたくなった。

「ねぇ、ばあちゃん。おれがなおくんをだっこしていい? おみやげをはやくみせたいんだ」

「えっ? 昇が? 大丈夫かしら?」

「だいじょうぶ! おれ、ちからつよいもん!」

「そう?」

ばあちゃんはちょっと不安そうな顔をしていたけど、絶対大丈夫!
俺、絶対に抱っこできるもん!

「なおくん、おいでー」

俺が両手を差し出すと、直くんが俺に手を伸ばしてくれる。
ばあちゃんが俺に近づけてくれて、向かい合わせに直くんを受け取った。

両手で直くんを抱きしめるように受け取ると、ふわっと甘い匂いがする。

何、これ。
すっごくいい匂いがする。
赤ちゃんって、こんないい匂いがするの?
それにすっごく柔らかくてずっと抱っこしていたくなる。

思わずギュッと抱きしめて甘い匂いを嗅いでいると、

「昇! 何をしているんだ!」

とすぐるおじちゃんの声が聞こえた。
普段聞いたことのないような少し怒った声に身体がビクッとした。

「あの……なおくん、すっごくいいにおいがしたから……ごめんなさい」

おじちゃんを怒らせてしまったんだと思って怖くて謝ると、俺の腕の中にいた直くんがおじちゃんを見上げた。

「ちゅぐぅちゃ、こわい……」

ポツリと呟くとおじちゃんは焦ったように直くんの前に屈んだ。

「――っ、ごめん、直くんを怒ったんじゃないんだよ」

「やぁ――っ、こわい……っ」

直くんは俺にギュッと抱きついてきて、俺の胸に顔を擦り寄せる。
おじちゃんはそれをみてものすごく寂しそうだ。
なんだかおじちゃんが可哀想に思えてきた。

「なおくん、おじちゃんはこわくないよ。おれがわるかったからしかっただけ。おじちゃんはやさしいよ」

顔を覗き込みながら、丁寧に話しかけてみた。

「ちゅぐぅちゃ、こわい、ない?」

「うん、こわくないよ。やさしいよ」

俺の言葉に安心したように、直くんはすぐるおじちゃんに手を伸ばした。

「ちゅぐぅちゃ、だっこ……っ」

「――っ、直くん!」

すぐるおじちゃんは俺の手から直くんを受け取り、嬉しそうに抱っこすると、あの動画で見た時以上に幸せそうな笑顔をしていた。
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