ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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必ず君を守ってみせる!  9

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柱の陰に身を潜め遥くんと琳くんがいた場所に目を向けると、遥くんが琳くんを腕の中に抱え込んでいるのが見えた。

「こっちに来るな! 琳は僕の子だ!」

一人で必死に守ろうとしている姿に胸が痛くなる。

本当なら私が二人を守ってやりたいが、今はまだ手を出すわけにはいかない。
せっかくの計画が頓挫してしまう。
だが……恐怖に震えている遥くんの表情を見るだけで胸が締め付けられる思いがする。

もう少しの辛抱だ。なんとか堪えてくれ。

「わかった、わかった。お前が琳を離したくないなら、お前共々可愛がってやるから琳と一緒にくればいい。俺は元々美春なんかよりお前のほうが好みだったんだ。だけど、子どもがどうしても必要だったから仕方なく美春と結婚してやったんだよ。もう跡継ぎもできたし、お前をたっぷり可愛がってやれるよ。俺はずーっとお前が好きだったんだからな」

奴の突然の告白に遥くんの表情が一気に青ざめていくのがわかる。
やはりあいつは最初から遥くん狙いだったんだ。
だからあれほど執着して、遥くんを待ち伏せていたんだろう。

「ふ、ふざけるな! 行くわけないだろう! 琳も絶対に渡さないからな!」

遥くんは奴の告白をはっきりと拒絶したが、奴はまだ琳くんを味方に引き入れれば遥くんを手に入れられる見込みがあると思ったのだろう。
今度は琳くんをターゲットにして、気持ちの悪い声をかけた。

「琳。お前のパパが迎えにきてやったぞ。ほら、一緒に帰ろう。りーん。パパだぞ」

パパという単語に反応して、遥くんの腕の中で顔を隠していた琳くんがパッと顔を上げる。
だが奴の顔を見た瞬間、一気に表情を曇らせた。

「ちがうっ! りんのぱぱ、ちがうっ! こっちこないで!」

その拒絶はさっきの遥くんと同じくらい激しいものだった。

「そうだよ、りんくんのぱぱはここにいるもん! あんなの、ぱぱじゃない!」

琳くんの心からの叫びを聞いていた碧斗が訴えてくる。

「西条さん、パパが二人を助けてあげてください!」

「ああ、わかってる」

遥くんと琳くんから目を離すことなく、碧斗を抱っこしてくれている直くんにそう返したと同時に、奴が怒りの形相で二人に近づいた。

「なんだと! このクソガキが!」

そう叫ぶ奴の右手にはギラリと光る刃物がある。

「悠臣さん! 助けてーっ!」

遥くんのその声にすぐに身体が反応した。

――西条、今だ!

イヤホンから磯山の声が聞こえるよりもずっと早く、私は柱の陰から飛び出した。

「遥っ! 琳っ!」

叫びながら二人の元に駆けつけた瞬間、周りで様子を窺っていた警察官たちが一気に奴に飛びかかる。
その様子を二人に見せないように抱きしめると、遥くんが小さな身体を震わせているのに気づいた。
確実に奴を捕まえるためとはいえ、二人には怖い思いをさせてしまった。本当に申し訳ない。

「怖い思いをさせてすまない。警察を呼んだからもう大丈夫だ」

安心させられるようにできるだけ優しい声で耳元で囁くと、遥くんの震えが少しずつおさまっていく。

――西条、お疲れさん。奴は手錠をかけてその場から離したからもう心配はいらない。

磯山の言葉が聞こえてホッとする。
奴に触れられる前に助けられて本当によかった。

「りんくーん!」

背後から碧斗の声が聞こえて、遥くんと琳くんを抱きしめていた腕を離すと、琳くんが私たちの隙間からさっと抜け出した。遥くんは驚いて呼び止めようとしたが、私は琳くんがどこに行ったかはわかっている。

遥くんと二人で琳くんが駆け出していった方向に視線を向けると、碧斗が琳くんを抱きしめているのが見える。
必死に私たちの計画に協力してくれた碧斗の頑張りが琳くんを守ったんだよな。
そんな二人の様子を見て、遥くんもホッとしているようだ。
私はようやく少し落ち着いて、遥くんに声をかけた。

「奴も捕えられて行ったし、琳くんは碧斗に任せておいて大丈夫だよ。それより怖い目に遭わせて申し訳ない」

奴を確実に捕らえるための計画とはいえ、遥くんは何も知らなかったのだから私の想像を遥かに超えるほど怖かったはずだ。

「いいえ、僕は何もできなくて……悠臣さんが助けに来てくださって嬉しかったです」

「遥くん……本当に無事でよかった」

私の本心が漏れる。
奴の動きがもっと早かったら怪我をさせていたかもしれない。
そう思うと、無事であったことを心から喜んだ。

「悠臣さん、ごめんなさい。僕……やっと気づきました」

腕の中で抱きしめていた遥くんが突然そんなことを言ってきた。
ごめんなさいとはどういうことだろう?

恐る恐る腕の力を抜き、遥くんの顔を覗き込むと、遥くんはまっすぐな瞳で私を見つめながらゆっくりと口を開いた。

「僕……悠臣さんが、好きです」

その言葉に、理性が吹き飛んでしまった私はここが人前だということも忘れて、遥くんの唇にキスをしてしまった。

「んっ!」

遥くんの驚いた声が聞こえながらもようやく思いが通じ合った喜びに唇を離すことができなかった。

「わぁー! おうじさまとおひめさまのきすだぁー!」

「きすーっ! きすーっ!」

そんな碧斗と琳くんの声が響いたと思ったら、突然辺りが大きな拍手と歓声に包まれた。


  *   *   *

ようやく思いが通じ合った二人♡
次回から遥視点です。
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