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二人っきりの夜※微
二人っきりの夜……。
そうだ、子どもたちがいないってことはそういうことなんだ……。
「どうしよう……緊張してきちゃった」
「大丈夫。西条さんは遥が嫌がることは絶対にしないよ。だから安心して二人の夜を過ごしたらいい」
「う、うん……。そう、だよね……」
いつも僕の気持ちを優先させてくれるから、僕が嫌だって言ったら絶対にしないだろう。
でも、僕が嫌じゃなかったら……?
僕は、どうなっちゃうんだろう。
「遥」
「ひゃっ!」
いろいろ考えていたところに突然西条さんに声をかけられて、思わず声を上げてしまった。
「悪い、驚かせた?」
「あ、ちがっ、なんでも……大丈夫です」
そう返したけれど、顔は熱いまま。
多分西条さんにはバレてるかもしれない。
「じゃあ、帰ろうか」
「は、はい」
僕が頷くと西条さんがさっと僕の手を握った。
それがあまりにも自然で外すなんて考えられなかった。
西条さんの大きな手から温もりが伝わってくる。
代わりに僕の速い鼓動が伝わってしまいそうだ。
玄関まで見送ってくれるのは直と磯山さん。
「直、今日はありがとう。ごちそうさま。ご家族にもよろしく」
僕が直に声をかける隣で西条さんも磯山さんと話をしているみたい。
「また明日ね」
「う、うん」
笑顔で手を振られて、僕も握っている手とは逆の手で振り返し、西条さんと二人で家を出た。
「すっかり暗くなったな」
「そう、ですね」
「早く帰ろう」
手を繋いだまま歩く駐車場までの道が来た時よりも少し遠く感じる。
ピッと鍵を開けると僕を先に助手席に座らせてくれた。
車に乗り込むと、いつもと違ってシーンとしているのがなんとも落ち着かない。
そういえば二人で乗るのって初めてだ。
運転席の扉が開き、西条さんが乗り込んでくる。
この空間に二人っきり。
それだけでさらに鼓動が早くなった気がする。
ゆっくりと車が動き出すけれど、緊張で西条さんを見れない。
ただまっすぐフロントガラスを見続けていると、
「遥」
と声をかけられた。
「っ、な、なんですか?」
びっくりして自分の想像以上の反応を返してしまった。
「そんなに緊張しないでくれ。誰も取って食べたりはしないから。それよりも遥も久しぶりだろう? 子どもがいない夜は」
「えっ、ああ……そう、ですね」
琳を育て始めて、僕の生活は一気に変わった。
それまでは仕事が終わって帰ってきたらあとは自分だけの時間。
早々に家事を終わらせて、映画を見ながらうたた寝したり、完成まで数日かかるような豚の角煮や直が作ってくれたようなとろとろのビーフシチューを作ったり……。
でも琳と一緒に生活を始めたら常に琳優先。
特に仕事から帰ってきてからはやることが多くて、琳を寝かしつけたら疲れて僕もそのまま寝ちゃってた。
もちろん琳との生活は楽しいけれど、たまには……と思うことがなかったとは言わない。
「映画でも見ながら、お酒でも飲まないか?」
その誘いがすごく魅力的で、僕はすぐに頷いた。
「いいですね。楽しみです」
「遥はどんな映画が好きなんだ? ミステリー? それとも恋愛とか?」
最初にミステリーを挙げてくれたのは、僕の家にあった本がその系統だったからだろう。
「割とジャンルに拘らないでなんでも見ますよ。何度でも見返すくらい好きなのは――」
そこからは楽しい映画談義。
僕の好きな映画を西条さんも好きなことがわかって大盛り上がり。
マンションに到着し、地下駐車場から家に戻るまでの間も映画の話題が尽きず、そのおかげで僕の緊張もすっかりほぐれていた。
手洗いを済ませてリビングに戻ると、壁際に三メートルを超えるようなスクリーンが下りているのが見えた。
ソファーテーブルにはワインと、綺麗なワイングラス、そしてチーズが用意されていて、準備の早さに驚いた。
「すごい! 映画館みたいですね」
「だろう? この前もここで観てもいいかと思ったんだが、子どもたちを外に連れて行きたかったからね」
大人なら家でも十分楽しめるけれど、子どもたちはあのモニタールームの雰囲気があったほうが余計に楽しく感じられただろう。さすが西条さん。子どもたちの気持ちをよくわかっているな。
「おいで、始まるよ」
「は、はい」
急に甘い声で誘われてドキッとしながら、僕は差し出された手を取りソファーに腰を下ろした。
西条さんがリモコンで部屋を真っ暗にすると、スクリーンで映画が始まった。
「あ、これ」
映画はさっきまで話をしていた映画。
何度見ても楽しい不朽の名作だ。
「どうぞ」
ワインが入ったグラスを手渡される。
「あ、ありがとうございます」
軽く乾杯をすると、西条さんはごくっと半分ほど飲み干した。
それに釣られるように僕も口をつけるとまるでジュースのような味わいに驚いた。
「これ……」
「アルコール度数少なめなワインなんだ。そのほうが飲みやすいだろう?」
僕があまり強くないのをわかっててこれを用意してくれたんだ。優しいな。
美味しいワインを片手に、気づけば広いソファーでピッタリと寄り添いながら映画を見ていた。
そして映画も中盤。
「わっ!!」
大好きな映画だけど、いつもここで驚いてしまう。
そんな僕を西条さんが優しく抱きしめてくれた。
「大丈夫?」
「ひゃっ」
耳元で甘く囁かれて、身体がビクッと震えた。
「だ、大丈……っ!!」
返事をしなくちゃと顔を上げると、目の前に西条さんの顔がある。
ああ、やっぱりかっこいいな……そう思った瞬間、西条さんの顔が近づいてきた。
あ、キスされる。
そっと目を閉じると、唇が重ねられ何度も啄まれる。
「んっ……」
その柔らかな感触が優しくて心地いい。
その心地よさにうっとりしていると舌先で唇をノックされる。
誘われるように唇を開くと、西条さんの舌が滑り込んできた。
「んんっ……ん」
吸いつかれて絡みつかれてそれに必死で応えていると、ゆっくり唇が離れていく。
「あっ……」
名残惜しくて思わず声を上げると、西条さんがフッと笑みを浮かべた。
そうだ、子どもたちがいないってことはそういうことなんだ……。
「どうしよう……緊張してきちゃった」
「大丈夫。西条さんは遥が嫌がることは絶対にしないよ。だから安心して二人の夜を過ごしたらいい」
「う、うん……。そう、だよね……」
いつも僕の気持ちを優先させてくれるから、僕が嫌だって言ったら絶対にしないだろう。
でも、僕が嫌じゃなかったら……?
僕は、どうなっちゃうんだろう。
「遥」
「ひゃっ!」
いろいろ考えていたところに突然西条さんに声をかけられて、思わず声を上げてしまった。
「悪い、驚かせた?」
「あ、ちがっ、なんでも……大丈夫です」
そう返したけれど、顔は熱いまま。
多分西条さんにはバレてるかもしれない。
「じゃあ、帰ろうか」
「は、はい」
僕が頷くと西条さんがさっと僕の手を握った。
それがあまりにも自然で外すなんて考えられなかった。
西条さんの大きな手から温もりが伝わってくる。
代わりに僕の速い鼓動が伝わってしまいそうだ。
玄関まで見送ってくれるのは直と磯山さん。
「直、今日はありがとう。ごちそうさま。ご家族にもよろしく」
僕が直に声をかける隣で西条さんも磯山さんと話をしているみたい。
「また明日ね」
「う、うん」
笑顔で手を振られて、僕も握っている手とは逆の手で振り返し、西条さんと二人で家を出た。
「すっかり暗くなったな」
「そう、ですね」
「早く帰ろう」
手を繋いだまま歩く駐車場までの道が来た時よりも少し遠く感じる。
ピッと鍵を開けると僕を先に助手席に座らせてくれた。
車に乗り込むと、いつもと違ってシーンとしているのがなんとも落ち着かない。
そういえば二人で乗るのって初めてだ。
運転席の扉が開き、西条さんが乗り込んでくる。
この空間に二人っきり。
それだけでさらに鼓動が早くなった気がする。
ゆっくりと車が動き出すけれど、緊張で西条さんを見れない。
ただまっすぐフロントガラスを見続けていると、
「遥」
と声をかけられた。
「っ、な、なんですか?」
びっくりして自分の想像以上の反応を返してしまった。
「そんなに緊張しないでくれ。誰も取って食べたりはしないから。それよりも遥も久しぶりだろう? 子どもがいない夜は」
「えっ、ああ……そう、ですね」
琳を育て始めて、僕の生活は一気に変わった。
それまでは仕事が終わって帰ってきたらあとは自分だけの時間。
早々に家事を終わらせて、映画を見ながらうたた寝したり、完成まで数日かかるような豚の角煮や直が作ってくれたようなとろとろのビーフシチューを作ったり……。
でも琳と一緒に生活を始めたら常に琳優先。
特に仕事から帰ってきてからはやることが多くて、琳を寝かしつけたら疲れて僕もそのまま寝ちゃってた。
もちろん琳との生活は楽しいけれど、たまには……と思うことがなかったとは言わない。
「映画でも見ながら、お酒でも飲まないか?」
その誘いがすごく魅力的で、僕はすぐに頷いた。
「いいですね。楽しみです」
「遥はどんな映画が好きなんだ? ミステリー? それとも恋愛とか?」
最初にミステリーを挙げてくれたのは、僕の家にあった本がその系統だったからだろう。
「割とジャンルに拘らないでなんでも見ますよ。何度でも見返すくらい好きなのは――」
そこからは楽しい映画談義。
僕の好きな映画を西条さんも好きなことがわかって大盛り上がり。
マンションに到着し、地下駐車場から家に戻るまでの間も映画の話題が尽きず、そのおかげで僕の緊張もすっかりほぐれていた。
手洗いを済ませてリビングに戻ると、壁際に三メートルを超えるようなスクリーンが下りているのが見えた。
ソファーテーブルにはワインと、綺麗なワイングラス、そしてチーズが用意されていて、準備の早さに驚いた。
「すごい! 映画館みたいですね」
「だろう? この前もここで観てもいいかと思ったんだが、子どもたちを外に連れて行きたかったからね」
大人なら家でも十分楽しめるけれど、子どもたちはあのモニタールームの雰囲気があったほうが余計に楽しく感じられただろう。さすが西条さん。子どもたちの気持ちをよくわかっているな。
「おいで、始まるよ」
「は、はい」
急に甘い声で誘われてドキッとしながら、僕は差し出された手を取りソファーに腰を下ろした。
西条さんがリモコンで部屋を真っ暗にすると、スクリーンで映画が始まった。
「あ、これ」
映画はさっきまで話をしていた映画。
何度見ても楽しい不朽の名作だ。
「どうぞ」
ワインが入ったグラスを手渡される。
「あ、ありがとうございます」
軽く乾杯をすると、西条さんはごくっと半分ほど飲み干した。
それに釣られるように僕も口をつけるとまるでジュースのような味わいに驚いた。
「これ……」
「アルコール度数少なめなワインなんだ。そのほうが飲みやすいだろう?」
僕があまり強くないのをわかっててこれを用意してくれたんだ。優しいな。
美味しいワインを片手に、気づけば広いソファーでピッタリと寄り添いながら映画を見ていた。
そして映画も中盤。
「わっ!!」
大好きな映画だけど、いつもここで驚いてしまう。
そんな僕を西条さんが優しく抱きしめてくれた。
「大丈夫?」
「ひゃっ」
耳元で甘く囁かれて、身体がビクッと震えた。
「だ、大丈……っ!!」
返事をしなくちゃと顔を上げると、目の前に西条さんの顔がある。
ああ、やっぱりかっこいいな……そう思った瞬間、西条さんの顔が近づいてきた。
あ、キスされる。
そっと目を閉じると、唇が重ねられ何度も啄まれる。
「んっ……」
その柔らかな感触が優しくて心地いい。
その心地よさにうっとりしていると舌先で唇をノックされる。
誘われるように唇を開くと、西条さんの舌が滑り込んできた。
「んんっ……ん」
吸いつかれて絡みつかれてそれに必死で応えていると、ゆっくり唇が離れていく。
「あっ……」
名残惜しくて思わず声を上げると、西条さんがフッと笑みを浮かべた。
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