ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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本当の家族になるために  2

二人に自己紹介するように促すと、後からやってきた村山が先に自己紹介を始める。
私に向ける揶揄い顔から一変、遥くんには優しい笑顔を見せる。
そうして懐から取り出した名刺入れから、一枚引き抜いて遙くんに渡す。

村山の正体が弁護士だと知って驚いているようだ。
後に続いて、磯山も遥くんに名刺を渡す。

二人とも弁護士な上に、磯山は医師免許も持っているダブルライセンスの持ち主だ。

だが、遥くんにはこれ以上磯山をすごいと思われたくなくて、そのことについては内緒にしてしまった。
私もなかなか狭量だ。

村山は続けて、碧斗たちと同じ席に座っているカールのことも説明した。
パートナーと説明すると、遥くんは仕事上のことかと思ったようだが、結婚相手だと告げると驚きの表情を浮かべていた。
同じように磯山も直くんと二年前に結婚式を挙げたという話をした。

今まで遥くんの周りには同性のカップルはいなかったのだろう。
目の前に二組もいることに驚きを隠せないようだったが、自分もその仲間に入るのならこれ以上心強いことはないだろう。
これで少しでも私との仲を進展させる一歩になればいい。

自己紹介も終わったところでようやく食事。
注文しようかと声をかけたが、もうすでに予約の段階で料理は選んでくれていたようだ。

子どもたちにはお子さまランチを頼んでくれているようだから二人とも喜ぶだろう。

飲み物だけ注文することになったが、メニュー表を見せても遥くんは悩んでいるようだ。
それなら私と同じものにしたらいい。

イタリア産の桃のスプマンテ。
ノンアルがあるからちょうどいい。

それを二杯頼むと、磯山たちも同じものを頼んでいた。
まだ昼間だし、運転もあるからやはりノンアルになるのは当然だろう。

碧斗たちの元にお子様ランチが運ばれて、大喜びしている声が聞こえる。
直くんとカールがいるから今日は二人に任せておこう。

「二人とも素直でいい子だな」

磯山がそう言って褒めてくれるのが嬉しくて、遥くんの肩を抱き寄せて「私と遥くんの可愛い息子たちだから」と強調して返すと、磯山たちは少し呆れ顔だったが、遥くんは喜んでくれてよかった。

「親友たちの幸せに乾杯しようか」

村山の声掛けで乾杯をして、スプマンテに口をつける。桃の甘さと爽やかな炭酸がスッと喉を抜けていく。

「美味しい」

遥くんから漏れた言葉は私しか聞こえていないだろう。
可愛い声が聞けて嬉しい限りだ。

磯山と村山には、ずっと一人だと思っていたと言われたが、自分でも諦めていたところはあった。
高校時代に最愛と出会い、幸せな姿を見せつけてきた二人と違って、誰にも興味を持てずに過ごしてきた。

そこに碧斗を引き取ることになり、私が幸せにする相手は碧斗なのだと理解した。
もう碧斗だけのために生きていこう。そう思っていたが、遥くんと出会って全てが腑に落ちた。

「私は遥くんに出会うために今まで一人でいたんだと思っている」

遥くんにもしっかり聞いていて欲しくて彼の目を見つめながらはっきりと断言する。
すると彼の顔が一気に赤くなっていく。その表情があまりにも可愛くて向かいに座る磯山と村山には絶対に見せたくないと思ってしまった。

遥くんを胸に抱き寄せて、二人に顔を見えないようにしたが、私の突然の行動に遥くんは戸惑いの声をあげる。
そして村山と磯山はそんな私を見て笑った。

「友利さん。西条の気が済むまでそうさせてやって。西条は初恋だから自分の感情を制御できないんだよ」

笑いを堪えながらいう磯山の言葉に恥ずかしくなるが本当のことだ。

遥くんにも初恋というのは本当なのかと尋ねられたが、嘘をつく理由はない。正直に初恋だと告げた。

「本当だよ。好きになったのは遥くんだけなんだ。特別だって言っただろう?」

改めて気持ちを告げると、

「西条は嘘を吐けるような器用な男じゃないよ。それだけは安心してくれていい」

「そうそう。弁護士の俺たちが言うから嘘はないよ」

と磯山と村山が援護射撃してくれる。
この辺はさすが親友といったところか。

二人のおかげもあって遥くんは私が初めて好きになった相手だといったことを信じてくれた。
それが嬉しくて遥くんを手放すことができず、料理が運ばれてきても遥くんを抱きしめたままだったが、さすが磯山の行きつけの店だけあって、スタッフは何もそのことには触れず笑顔で料理を並べ部屋を出て行った。

「それじゃあ西条の気持ちもちゃんと伝わったところで料理も来たし、食事しながらいろいろと・・・・・大事な話でもしようか」

磯山の強調はちゃんと理解している。
遥くんに全てを包み隠さず話すのは得策じゃない。

遥くんに話していい内容だけ、全て話すんだと念を押されたのだ。

まずは腹ごしらえから。
ボリュームのある寿司をメインに、茶碗蒸しと天ぷら、ステーキもある。

磯山には前もって遥くんの分だけ山葵なしで頼んでいたが、直くんとカールにも同じ対応をしているのだろう。
わかっているよとすぐに返事が返ってきていたのを思い出す。

一応別添えにしておいたが、使うことはないだろう。

そのことを遥くんに伝えると、自分が山葵が苦手なことを知っていたのかと目を丸くして驚いていたがそれくらいは遥くんを見ていればわかる。

いつだって遥くんが食べている姿を見つめてきたのだから。

でもこれからは見つめるだけじゃない。
ずっとやりたいと思っていたアレができるんだ。

「ほら、これ遥くん好きだろう?」

自然に振る舞って自分の皿に載っていたエビの天ぷらを箸で掴んだ。
それを遥くんの口の前に持っていくと、一瞬戸惑いの様子を見たが口を開けてくれた。

大きなエビの天ぷらは全部は遥くんの口には入らないのはわかっている。
三分の一ほど齧って「美味しい!」と声をあげる。

その食べかけを味見するといって私の口に入れる。

碧斗がいつも琳くんにやっていたことだ。

塩も何も付いていないエビの天ぷらだが、今まで食べたことのない極上の味がする。
ああ、これが食べたかったんだ。

心から美味しいという言葉が漏れると、遥くんはそれを真っ直ぐな意味で捉えたのか、

「えっと、よかったです……」

とほんのり頬を染めて言ってくれた。
だがちゃんと本当の意味を伝えておかないとな。

「これは私の夢だったんだ。ようやく夢が叶ったよ」

そう告げると遥くんは意味がわかっていないようだったが、

「ずっと碧斗が羨ましかったんだ。琳くんの食べかけを嬉しそうに食べていた碧斗が」

ときちんと言葉にすると、彼はようやく意味を理解できたようだった。
ちょうどいいタイミングで碧斗と琳くんがさっきの私たちと同じように食べさせあっているのが見える。
それを見た遥くんも嬉しそうに微笑んでいたから、これからも毎回同じようにしても許してもらえるだろう。

「潔癖な西条がそんなふうに思えること自体、友利さんが特別だって証拠だな」

「ああ、俺らでさえ西条と回し飲みもしたことないからな」

信憑性のある磯山と村山の言葉に遥くんは笑みを浮かべていたが、正直なところ磯山と村山の二人の間でも回し飲みなんてありえない。まぁ、それは言わなくてもいいか。

そんな話をしながら、楽しい食事の時間は過ぎていった。
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