ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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本当の家族になるために  4

遥くんたちは早速スイーツ選びを楽しんでいるようだ。
私たちはもう一度乾杯をして、残っていたスプマンテを流し込む。

「友利さんにはなんとかうまく説明できてよかったな」

「ああ。碧斗も計画に加わっていると話したときは驚いていたが、あのおかげで話もそれだけで終わったからな」

あの元義弟が捕まったことで、これから琳くんに危害を加えられることがないと安心しただろう。
だが、本当はもう一つ懸念材料が残っている。

あっち・・・のほうはどうなった?」

遥くんたちには聞こえないように尋ねるが、内容は元義弟の母親のことだ。

「実はな、奴の母親……『ルラシオン』に押し入って暴れた時に高価な花瓶をいくつか割ったんだ。警察で示談金を払えなければ器物損壊罪で実刑になるという話をしたら、実家の土地を売り払って示談金を支払うことに合意したよ」

簡単に合意させたように話をしているがあの実家の土地を売り払うということは、羽柴家の終焉を意味する。
奴の母親にとってはそれはとんでもない決断だっただろうが、磯山たちがそこまで徹底的にやってくれたことは私と遥くんたちにとってこの上なくありがたい。

「跡取りの必要は無くなったとわかってあの母親、一気に老け込んでいたよ。家がなくなったから少しの間でも面倒を見れないかと親戚連中に声をかけたんだが、誰も引き取り手がなくて……今回の計画に協力してくれた食品加工会社の社長が雇ってくれたよ」

「えっ、それならまた遥くんと琳くんを狙ったりしないか?」

家を失ったことで遥くんたちに恨みを持っていたとしたら心配でしかない。

「それは心配いらない。海外にも工場を持っているから海外に行ってもらったよ。生きている間に日本に戻ってくることはできないだろう」

「そうか……それなら安心だな」

本当にこれで終わったんだ。
遥くんも琳くんも安心して外を出歩けるな。

ホッと一息ついたところで、突然私の視界にカールの姿が飛び込んできて名前を呼ばれた。

「カール、どうした?」

いったい何事だろうと声をかけると、嬉しそうな笑顔を向けられた。

「あのね。遥さんが、西条に名前を呼び捨てにしてほしいって」

「ええっ!?」

呼び捨てにしてほしい?
それはつまり、私との距離を縮めたいということか?

考えてみれば磯山も村山も呼び捨てで名前を呼んでいる。
もしかしたら、そんな二人を羨ましいと思ってくれたのだろうか。

まずい、嬉しすぎる。
いやいや、もしかしたらカールがからかっているだけかもしれない。
ちゃんと遥くんの口から聞くまでは喜ぶのは早すぎる。

「遥くん、それは本当に?」

にやけそうになるのを必死に堪えながら尋ねた。
本当だと言ってくれと願っていると、少しの間をおいて遥くんの口が開いた。

「あの、そうです……呼び捨てに、してもらえますか?」

呼び捨てにしてもらえますか……
その言葉が頭の中でリフレインする。

本当のことだった! 
やった! 嬉しい!!

あまりにも嬉しすぎて反応ができない。

「あの、だめですか?」

もう一度聞かれた瞬間、テーブルの下でドンと衝撃が来た。
磯山だ。
磯山が私の足を蹴ったんだ。

そこでハッと我にかえった。

「だ、だめじゃない! ずっと名前で呼びたいと思っていたんだ。は、遥……」

少し上擦りながらもなんとか呼び捨てで名前を呼ぶと、遥はぱあっと花が綻ぶような笑顔を見せてくれた。
それがものすごく可愛くて立ちあがろうとしたが、

「じゃあ、これで僕も遥って呼んでもいいよね。遥もカールって呼んでいいからね」

とカールが遥に声をかけ、遥の視線を奪われてしまった。
直くんも遥に声をかけ嬉しそうに手を重ねあう。

そこに邪魔をすることはできなかった。
そのタイミングで遥たちが頼んだスイーツが運ばれてきて、あっという間にあちらのテーブルに戻っていく。

さっきの呼び捨ての件はもう終わってしまったように、スイーツを見てはしゃいでいる声が聞こえる。

「西条、どんまい」

「まぁ、呼び捨てで呼べるようになっただけよかっただろう」

磯山と村山からそんな慰めの言葉をかけられたが、まぁいいか。
これからは遥と呼べるのだからな。

遥たちの楽しげな声を聞きながら、やはり気になるのはこれからのこと。

「なぁ、初めてのベッドを一緒にした時って一度で我慢できたか?」

「なんだ、急にそんなこと」

今までそんなこと聞こうと思ったこともなかったから、磯山たちが質問されて戸惑うのも無理はない。
だがこれからのことを考えたら重要なことだ。

「知っておきたいんだ。どうだった?」

「そんなもの……我慢できるわけないだろう」

堂々と言い切った磯山の隣で村山も大きく頷いている。

「俺は丸一日は一緒のベッドでイチャイチャしてたな」

「ああ、俺も。同じようなもんだ。それが当然だろう。驚いているが、お前も多分そうなるぞ。いや、絶対だな」

そこまではっきり言われると困ってしまうが、二人してそういうのなら本当なんだろう。

それなら私はいったいどうしたらいいんだろう……。
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