ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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甘い夜を過ごすために…… 3

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「悠臣さん、それ……」

遥の指摘で手土産を渡し忘れていたことを思い出し、磯山に手渡した。
老舗和菓子店の<星彩庵>は有名なことはもちろんだが、磯山のおじいさんのお気に入りの店でもある。
磯山も直くんも喜んで受け取ってくれた。

遥も持っていた紙袋から、箱を取り出して直くんに渡す。
遥が気を利かせて直くんたち用に手作りのお菓子を作ってくれたようだ。
直くんは遥の手作りと聞くと遥の了承を得て箱を開けた。

「美味しそう!」

直くんが興奮気味にいうがそれは大袈裟でもなんでもない。
磯山も売り物みたいだと言ってくれるが私もそう思う。

遥は先日の碧斗の誕生日ケーキといい、お菓子も絶品だ。

「おじーちゃん。りん、おそとであそびたーい!」

「あおともー! おじーちゃん、いっしょにあそぼー!」

子どもたちが磯山のおじいさんを誘う声が聞こえる。
遥はそれを止めようとしたが、おじいさんは子どもたちと遊ぶのを楽しみにしている。
その機会を無くしたくない。

私と磯山も一緒に着いて行くからと安心させて、縁側から庭に下りる。
元々庭に下りることを想定していたのだろう。
子ども用と大人用のサンダルがそれぞれ人数分用意されている。

庭に下りると少し離れた場所に花が咲いているのを琳がすぐに見つけた。
琳が花が好きだと知っておじいさんが子どもたちと手を繋いでそちらに連れて行ってくれる。
私と磯山は子どもたちがいきなり走り出さないように注意しながら子どもたちと手を繋いだ。
花壇の前で琳は座り込み、花の香りに可愛らしい笑みを浮かべる。
その様子におじいさんも碧斗も笑顔を見せていた。

「琳くん、本当に花が好きなんだな」

「ああ。だからあの作戦がうまく行ったんだ」

元義弟と偶然を装って鉢合わせるためにショッピングモールに花壇を作った。
琳が予想通りにそこにとどまってくれたおかげで奴を無事に捕えることが出来た。

「そういえばあの花壇はどうなるんだ?」

「最初は期間限定の予定だったんだが、お客さんからも好評でそのまま残すことにしたようだよ。季節ごとに花を植え替えるようだし行くたびに楽しませてもらえるな」

「そうか、それなら時々家族で行こうか」

さらりと出た言葉に磯山はすぐに反応した。

「家族か。だが、その前にお前と友利さんの仲が深まっていないとな」

意味ありげな表情でそんなことを言うと、磯山は花壇の前にしゃがみ込んでいる碧斗と琳の間に屈んで声をかけた。

「この花たち、綺麗だろう? 朝の花もすごく綺麗なんだよ。みたくないか?」

「みたーい!」

「夏にはこの庭にカブトムシやクワガタも集まるし、この広い庭にプールを作って遊んだりできるぞ」

「わぁー! すごーい!」

「それにね、この庭……もっとすごいことがあるんだぞ」

磯山が期待たっぷりに子どもたちに話しかけると、碧斗と琳は「なになに?」と目を輝かせて近づいた。

「実はこの庭……」

二人にだけ聞こえるように何か話しているようだ。

「ええーっ、ほんとー?」

「ああ。俺も直もこの目で見たし、プレゼントももらったんだ」

プレゼント? もしかして……

「やっぱり、このおじーちゃんは、サンタさんなの?」

碧斗の声にやはりなと思った。
だが、磯山が直接サンタクロースにあった話は聞いてなかったが……
いや、もしかしたら私が覚えていないだけかもしれない。

「ははっ。私はサンタクロースの友だちなんだよ。二人がお利口さんにしていたら、今年この家にプレゼントを持ってきてくれるだろうな」

「わぁー! りんもあおとくんもおりこーさんだよ。ねー!」

琳は碧斗に笑顔を見せる。碧斗も嬉しそうにそれに笑顔で応えた。

「そうか、そうか。それなら今年はここで楽しいクリスマスができるな」

「やったー!!」

大喜びする碧斗と琳を見ながら、磯山は私にこっそりと呟いた。

「これで、クリスマスの夜はここでパーティーした後、友利さんと二人の時間を作れるだろう?」

「磯山……」

まだ数ヶ月も先の話だが、私と遥にとって初めて過ごすクリスマスを二人っきりで過ごせるのならこんなに嬉しいことはない。

「これからもちょくちょくここに遊びに連れてきたらいい。じいさんも子どもたちをすっかり気に入っているみたいだからな」

チラリと視線を向けると、磯山のおじいさんが楽しそうに碧斗と琳と話をしているのが見える。

「それで……今夜はどうなりそうだ?」

これからのことももちろん大事だが、私にとっては今夜のことが重要だ。

「あー、それなら多分子どもたちのほうから泊まりたいって言い出すと思うぞ。もうすぐ直の両親がくるからな」

磯山先生と緑川教授か……
お二人が来てくれるなら確かに希望は持てそうだ。

だがまだ決まったわけじゃない。
期待しすぎず様子を見守るとしよう。

「おじーちゃん。かたぐるましてー!」

琳が磯山のおじいさんにそんなことを言い出した。
元気でいらっしゃると言ってもさすがにそれは難しいのではないかと思ったが、磯山が止める気配はない。

一応、磯山はおじいさんの健康状態を全て把握しているようだが、大丈夫なのだろうか?

「磯山、平気か?」

「ああ、大丈夫。琳くんくらいなら余裕だよ」

そう言って自ら琳を抱き上げておじいさんの肩に乗せる。
おじいさんは琳を肩に乗せたまま立ち上がった。

「おお、すごいな」

一応背中を支えているが、本当に余裕だ。

「うわぁーっ、たかい、たかいー!」

琳のはしゃぐ声に、おじいさんは目を細めて喜んでいるように見えた。
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