ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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番外編

前野くんからの提案

<side悠臣>

「わぁー、りんくん。よくにあうよー!」

碧斗の嬉しそうな声が私たちのいる奥の場所まで聞こえてくる。
琳の手が治るまで我慢させていたから、余計に嬉しいのかもしれない。

遥が私の選んだ服を着て笑顔を見せてくれるのが嬉しいように、碧斗も同じように思っているのだろう。
あの時、私好みで選んだ服を琳にプレゼントしなくて本当によかった。

「あの、悠臣さん……」

「ん? 何か気になる服があったらなんでも選んでいいよ。全部買おう」

「えっ、いえ。そうじゃなくて……もうこれ以上は……」

遥はチラリと右に視線を向ける。
そこにはこれまでに私が購入を決めた遥の服がハンガーラックにかかっているのが見える。

かかっているのはまだ十着ほど。まだまだ買い物はこれからだ。

「気にしないでいいと言っただろう? それに夏の終わりのこの時期に秋冬物を選んでおくのが正しい買い物なんだよ。コートもニットもジャケットも全て揃っているからね」

「でも、僕のばっかりは……」

今まで琳を最優先にして過ごしてきた遥には自分が主役になるのがなんとなく居心地が悪いんだろう。

さて、どうやって遥を納得させようかと考えていると、碧斗たちについていてくれているスタッフが一人、遥のもとにやってきた。

「後で、お子さま方におやつをお出ししようと思うのですが、苦手なものやアレルギー等はございますか?」

きちんと確認しておやつを出してくれるのか、その配慮がありがたい。
遥は彼と子どもたちのおやつについて丁寧に話をしている。
その間に、さっと前野くんが私のもとにやってきた。

「西条さま。あちらに西条さまのおサイズのものを取り揃えております。全て銀座店の新作でございますので。ぜひそちらもご覧ください」

「おお、私の服も用意してくれたのか?」

ここでは遥と子どもたちのものだけを選ぶつもりでいたが、まさかここで銀座店の服を選べるとは思ってなかったな。

「もし、よろしければ西条さまがお召しになる御衣装をお連れさまにお選びいただく、というのはいかがでしょう?」

「遥に、私の服を?」

「はい。お連れさまはご自分の御衣装だけを選ばれるのが心苦しいご様子ですので、西条さまのお召し物をお選びいただくのでしたら楽しんでくださるのでは、と思います」

「なるほど、それは一理あるな……」

遥に私の服を選んでもらい、その選んでくれた服に合わせて遥の服を選べば、並んで歩いた時にすぐに私の大事な人だと周りにも見せつけることができる。
遥に私好みの服を身につけさせるのもいいが、テイストの似た服を合わせるのもそれはそれで良さそうだ。

あまりにも可愛い服は、もちろん着てもらいたいが私の前でだけきて欲しいという気落ちもある。
それこそ、碧斗や琳に見せるのすら惜しいと思ってしまう。

外に出かける服と、私の前で着てもらえる服を買う……それは最高だ!

「前野くん、ありがとう。そうさせてもらうよ。君はさすがだな。これからも良い意見を頼むよ」

「お褒めに預かり光栄でございます」

さすが磯山と村山が通う店だ。
前野くんといい、碧斗たちについてくれているスタッフといい、最高だ。

私は、遥とスタッフの話が終わったのを見計らって、遥に声をかけた。

「遥。今度は私の服を選んでくれないか?」

「えっ、僕が悠臣さんの服を? そんな……いいんですか?」

そういいつつも遥は、先ほどまでの困った表情から嬉しそうな表情に変わっていく。

「ああ。私が選ぶと似たような服ばかりになってしまって困っていたんだ。遥に選んでもらえたら助かるよ」

私の言葉に遥はさらに表情を柔らかくした。
元来、遥は人のために何かをすることが好きな性分だ。
看護師も保育士もそして、家事代行のスタッフも全て誰かの役に立ちたくてしていたものだ。
私が頼めば喜んでしてくれる。

それに気づかせてくれた前野くんには感謝だな。

遥の手を取って、銀座店から取り寄せてくれたという洋服が並ぶ場所に連れていく。

「わぁ、素敵な服ばっかり! 悠臣さんに似合いそうなものがいっぱいですね」

目をキラキラと輝かせながら、私のために服を選んでくれる遥。
先ほどまでの消極的な姿とは全く違う。

「前野くん、値札は大丈夫か?」

銀座店はここと違って、値札が付けられていることも多い。新作なら尚更だ。
そのことに気づいてこっそりと前野くんに声をかけたが、そこは抜かりがないらしい。
やはりさすがだな。

私は大喜びで私の服を選んでくれる遥を見て、幸せな気分に浸っていた。
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