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番外編
もう一つの家族
「わぁ、これも素敵! あっ、あれも絶対に似合う!」
楽しそうに遥が私の服を選んでくれる。
きっと私が遥の服を選んでいた時もあれくらい嬉しそうな表情をしていたに違いない。
私は遥が選んでくれる服を見ながら、そのテイストに合う遥サイズの服を抜かりなく選んでいた。
もちろん、合間に私が遥に着せたい服も選んでいる。
遥サイズの下着と、揃いのパジャマ。これも欠かせない。
さすがClef de Coeurの商品だけあって、どれもいいものばかりだ。
なかなか手が止まらない。
「ぱぱー! はるかちゃーん」
「ちょっときてー!」
浮かれて洋服を選んでいると、琳と碧斗の声が聞こえた。
遥もその声が聞こえたようで、すぐに私のもとにやってきて二人で子どもたちのところに向かった。
「どうし――」
どうしたんだと聞きかけて、子どもたちが私たちを呼んだ理由がすぐにわかった。
なぜなら、琳が大きなウサギのぬいぐるみを抱っこしていたから。
琳の背丈の半分ほどもある大きなぬいぐるみを嬉しそうに抱っこしている。
その横で碧斗も嬉しそうにしている。
「このぬいぐるみは?」
「あそこにすわってたのー! おにーちゃんがとってくれたー!」
碧斗と琳には手の届かない棚の上部に綺麗な花を生けた花瓶の隣に飾られていたようだ。
そこは見てなかったな。
「そっか。すごく可愛いね。でも、これは飾ってあるだけで売り物じゃないからね。ちゃんと元の場所に置いておこう」
遥は琳の目の高さにしゃがみ、優しく話しかける。
だが、琳はそのウサギのぬいぐるみを抱きしめたまま首をブンブンと横に振った。
「だめ! このこはあそこじゃだめなの! だって、みて……はるかちゃん」
琳は少し寂しそうに、向かい合わせに抱っこしていたウサギのぬいぐるみを遥と私に見せてくれた。
「あっ!」
遥がそのぬいぐるみを見て思わず声を上げてしまうほど、そのぬいぐるみは琳によく似ていた。
「ね、このこ……りんなのー! だから、りんといっしょにいなくちゃだめなのー!」
琳が必死に訴えてくる。
「おうちのくまさんといっしょにいさせていいでしょー?」
琳の言う、お家のクマさんは玄関に飾っている大きなクマのぬいぐるみのことだ。
磯山の結婚式に参列した際に、弟の子どもを引き取って一緒に暮らすことになったと磯山に話をしたら、後日例のあのベッドと一緒に、碧斗にと贈ってくれたものだ。
私と碧斗に似るように特注で作ってもらったものだと手紙に書いてあったのを覚えている。
確かにこのウサギのぬいぐるみが琳なら碧斗に似たクマの隣に置いてあげるのが正解なのかもしれない。
私は、この様子を見守ってくれていた前野くんに振り返り、声をかけた。
「前野くん。この子が売り物でないことは重々承知だ。どれだけかかっても構わない。どうか譲っていただけないだろうか?」
そう声をかけると、前野くんは優しい笑顔を見せた。
「このウサギさんはお連れいただいて構いません」
「えっ? だが、いいのか?」
「はい。ここに飾っておりますぬいぐるみたちは、望まれた方にお譲りするようにと言付かっております。ただ、実はこのウサギさんは親子でお作りしておりまして、できれば一緒にお連れいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「親子? ああ、それなら引き離すのは良くないな。もちろん喜んで一緒に連れて帰るよ」
私の返事に前野くんはにっこりと笑って、「少々お待ちください」と言ってこの場を離れた。
「あの、悠臣さん……いいんでしょうか?」
「あれだけ琳に似ている子だ。こうして出会ったのも運命だろう。置いて帰るなんてできないよ」
遥は少し困った表情をしつつも、大喜びしている琳を見てホッと胸を撫で下ろしているように見えた。
それからすぐに前野くんがウサギのぬいぐるみを抱っこしてこちらに連れてきたのだが、その顔を見て私も遥も、そして子どもたちも驚いてしまった。
なぜなら、そのウサギが遥によく似ていたから……
ああ、やはり私たちは家族になるべくしてなったのだ。
それが今、はっきりとわかった。
楽しそうに遥が私の服を選んでくれる。
きっと私が遥の服を選んでいた時もあれくらい嬉しそうな表情をしていたに違いない。
私は遥が選んでくれる服を見ながら、そのテイストに合う遥サイズの服を抜かりなく選んでいた。
もちろん、合間に私が遥に着せたい服も選んでいる。
遥サイズの下着と、揃いのパジャマ。これも欠かせない。
さすがClef de Coeurの商品だけあって、どれもいいものばかりだ。
なかなか手が止まらない。
「ぱぱー! はるかちゃーん」
「ちょっときてー!」
浮かれて洋服を選んでいると、琳と碧斗の声が聞こえた。
遥もその声が聞こえたようで、すぐに私のもとにやってきて二人で子どもたちのところに向かった。
「どうし――」
どうしたんだと聞きかけて、子どもたちが私たちを呼んだ理由がすぐにわかった。
なぜなら、琳が大きなウサギのぬいぐるみを抱っこしていたから。
琳の背丈の半分ほどもある大きなぬいぐるみを嬉しそうに抱っこしている。
その横で碧斗も嬉しそうにしている。
「このぬいぐるみは?」
「あそこにすわってたのー! おにーちゃんがとってくれたー!」
碧斗と琳には手の届かない棚の上部に綺麗な花を生けた花瓶の隣に飾られていたようだ。
そこは見てなかったな。
「そっか。すごく可愛いね。でも、これは飾ってあるだけで売り物じゃないからね。ちゃんと元の場所に置いておこう」
遥は琳の目の高さにしゃがみ、優しく話しかける。
だが、琳はそのウサギのぬいぐるみを抱きしめたまま首をブンブンと横に振った。
「だめ! このこはあそこじゃだめなの! だって、みて……はるかちゃん」
琳は少し寂しそうに、向かい合わせに抱っこしていたウサギのぬいぐるみを遥と私に見せてくれた。
「あっ!」
遥がそのぬいぐるみを見て思わず声を上げてしまうほど、そのぬいぐるみは琳によく似ていた。
「ね、このこ……りんなのー! だから、りんといっしょにいなくちゃだめなのー!」
琳が必死に訴えてくる。
「おうちのくまさんといっしょにいさせていいでしょー?」
琳の言う、お家のクマさんは玄関に飾っている大きなクマのぬいぐるみのことだ。
磯山の結婚式に参列した際に、弟の子どもを引き取って一緒に暮らすことになったと磯山に話をしたら、後日例のあのベッドと一緒に、碧斗にと贈ってくれたものだ。
私と碧斗に似るように特注で作ってもらったものだと手紙に書いてあったのを覚えている。
確かにこのウサギのぬいぐるみが琳なら碧斗に似たクマの隣に置いてあげるのが正解なのかもしれない。
私は、この様子を見守ってくれていた前野くんに振り返り、声をかけた。
「前野くん。この子が売り物でないことは重々承知だ。どれだけかかっても構わない。どうか譲っていただけないだろうか?」
そう声をかけると、前野くんは優しい笑顔を見せた。
「このウサギさんはお連れいただいて構いません」
「えっ? だが、いいのか?」
「はい。ここに飾っておりますぬいぐるみたちは、望まれた方にお譲りするようにと言付かっております。ただ、実はこのウサギさんは親子でお作りしておりまして、できれば一緒にお連れいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「親子? ああ、それなら引き離すのは良くないな。もちろん喜んで一緒に連れて帰るよ」
私の返事に前野くんはにっこりと笑って、「少々お待ちください」と言ってこの場を離れた。
「あの、悠臣さん……いいんでしょうか?」
「あれだけ琳に似ている子だ。こうして出会ったのも運命だろう。置いて帰るなんてできないよ」
遥は少し困った表情をしつつも、大喜びしている琳を見てホッと胸を撫で下ろしているように見えた。
それからすぐに前野くんがウサギのぬいぐるみを抱っこしてこちらに連れてきたのだが、その顔を見て私も遥も、そして子どもたちも驚いてしまった。
なぜなら、そのウサギが遥によく似ていたから……
ああ、やはり私たちは家族になるべくしてなったのだ。
それが今、はっきりとわかった。
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