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番外編
天使たちの爆弾
<side悠臣>
ほんのり頬を染めて頷いてくれた瞬間、私は心の中でやった! と大きく叫んだ。
今夜は気兼ねなく、遥と二人っきりの時間を過ごせる。
もちろん子どもたちと家族として過ごす時間は何よりも変え難く幸せな時間だが、私と遥はまだ思いが通じ合ったばかり。
付き合いたてのカップルのようなものだから、たまには二人っきりの時間を過ごしたい。
そう考えるのも仕方がないだろう。
遥の頬が赤い。だが、嫌がるそぶりは全くない、ということは遥もまた私との二人の夜を期待してくれているということだ。これは頑張らないとな。
「けーき、おいしー!」
琳の声が聞こえて、遥もケーキを食べ始める。
途端に目を丸くする。
「ん! これ、本当に美味しい」
「よかったー。これ、手作りなんだ」
「えー、すごい! スポンジふわっふわだし、生クリームの硬さも完璧だし、売り物だと思ったよ」
遥が褒めると直くんが照れ笑いを見せる。
「直くんが毎年ほとんどのお誕生日ケーキ作ってくれてるんだよ。最初から上手だったけど、今はプロみたいだもんね」
「そうそう。今年の私の誕生日も、メロンタルト作ってくれて……美味しかったわ」
緑川教授と磯山のお母さんも一緒になって褒め始めたから、直くんは喜びつつも少し恥ずかしそうだ。
「いつもみんなで分けて食べてるのに、昇ったら自分の誕生日ケーキは一人で食べちゃったのよ。本当、直くんのことになると独占欲強いんだから」
磯山のお母さんが揶揄いながら告げると、磯山は珍しく表情をあらわにした。
「いいだろ! 直が俺のためだけに作ってくれたケーキなんだから。他の時は許してやってるんだからな」
「はいはい。わかってるわよ。直くんのケーキが食べられて感謝してるわよ」
そんな親子の会話を垣間見て、磯山にもこんな子どものようなところがあるんだと私は少し驚いた。
高校時代から磯山のことは知っているが、大抵のことは難なくこなし、余裕な表情ばかり見せていたから、こんなふうに拗ねるなんて表情を見られるとは思ってなかった。
遥や子どもたちのおかげで、磯山との友人としての距離もかなり縮まった気がする。
「ねー、どくせんよく、ってなーにー?」
琳の無邪気な声が部屋に響く。
その言葉に、私も含めて周りにいた大人たちは全員固まってしまった。
これをなんと説明すればいいんだろう。
すると、琳を膝に乗せていた磯山のおじいさんが優しい笑顔を向けて琳に語りかけた。
「琳くんも、大好きな人やものがあるだろう? それを自分のものだけにしたい、離したくないって思う気持ちが独占欲というものだよ。わかるかな?」
「うん。りん、あおとくんがだいすきー! だからずっといっしょにいたいなー」
「ははっ。そうか、碧斗くんも同じ気持ちかな?」
磯山のおじいさんは笑顔で碧斗にも尋ねる。
碧斗は満面の笑みで琳の手を取った。
「あおともりんくんだいすきだよー! ずっといっしょにいよーね」
「うん!」
そんな二人の可愛い会話に、みんな笑顔が止まらなかった。
「はるかちゃんは、ぱぱがだいすきだよねー?」
「ぱぱもはるかちゃん。だいすきだよー! だって、きょうもおふとんでちゅってしてたもんねー!」
「そうそう、はるかちゃんをぎゅってしてねてるもん!」
その瞬間、部屋の空気がぴたりと止まった。
「……」
遥は固まり、私は反射的に咳払いをした。
「こ、こら。碧斗……それは……」
「えー? だって、ほんとだよー。ねー、はるかちゃん、ほんとだよねー」
碧斗も琳もキョトンとした顔で私を見上げる。
否定はできない。事実だから。
遥はみるみるうちに耳まで真っ赤になり、視線を彷徨わせながら小さく声を出した。
「ほ、ほんとだけど……その」
しどろもどろな遥に、琳が追い討ちをかける。
「ねー、ぱぱ。きょうも、いっしょにねるのー? どくせんよく、だねー!」
「っ!」
私は完全に言葉を失った。
助けを求めるように周囲を見ると、磯山の母さんは口元を押さえて肩を震わせ、緑川教授は満足そうに頷き、直くんは顔を赤くしながらも目を輝かせている。
「ははははっ」
一番最初に笑い声を上げたのは、磯山のおじいさんだった。
「元気で正直ないい子たちだ。隠し事がないのは幸せなことだよ。なぁ、賢将さん」
「ええ。西条家は幸せな家族ですね。仲がいいことは素晴らしいよ」
その言葉で張り詰めていた空気がふっと緩む。
「西条くんが遥ちゃんを大切にしてるって、ちゃんと子どもたちに伝わってるってことだよ」
緑川教授の言葉に私と遥は顔を見合わせて微笑みあう。
ものすごい爆弾を落としてきた琳と碧斗は、何事もなかったようにまたケーキを食べ始めた。
みんなに祝福されているような空気感が嬉しい。なんだかこの家族の一員になった気がした。
ほんのり頬を染めて頷いてくれた瞬間、私は心の中でやった! と大きく叫んだ。
今夜は気兼ねなく、遥と二人っきりの時間を過ごせる。
もちろん子どもたちと家族として過ごす時間は何よりも変え難く幸せな時間だが、私と遥はまだ思いが通じ合ったばかり。
付き合いたてのカップルのようなものだから、たまには二人っきりの時間を過ごしたい。
そう考えるのも仕方がないだろう。
遥の頬が赤い。だが、嫌がるそぶりは全くない、ということは遥もまた私との二人の夜を期待してくれているということだ。これは頑張らないとな。
「けーき、おいしー!」
琳の声が聞こえて、遥もケーキを食べ始める。
途端に目を丸くする。
「ん! これ、本当に美味しい」
「よかったー。これ、手作りなんだ」
「えー、すごい! スポンジふわっふわだし、生クリームの硬さも完璧だし、売り物だと思ったよ」
遥が褒めると直くんが照れ笑いを見せる。
「直くんが毎年ほとんどのお誕生日ケーキ作ってくれてるんだよ。最初から上手だったけど、今はプロみたいだもんね」
「そうそう。今年の私の誕生日も、メロンタルト作ってくれて……美味しかったわ」
緑川教授と磯山のお母さんも一緒になって褒め始めたから、直くんは喜びつつも少し恥ずかしそうだ。
「いつもみんなで分けて食べてるのに、昇ったら自分の誕生日ケーキは一人で食べちゃったのよ。本当、直くんのことになると独占欲強いんだから」
磯山のお母さんが揶揄いながら告げると、磯山は珍しく表情をあらわにした。
「いいだろ! 直が俺のためだけに作ってくれたケーキなんだから。他の時は許してやってるんだからな」
「はいはい。わかってるわよ。直くんのケーキが食べられて感謝してるわよ」
そんな親子の会話を垣間見て、磯山にもこんな子どものようなところがあるんだと私は少し驚いた。
高校時代から磯山のことは知っているが、大抵のことは難なくこなし、余裕な表情ばかり見せていたから、こんなふうに拗ねるなんて表情を見られるとは思ってなかった。
遥や子どもたちのおかげで、磯山との友人としての距離もかなり縮まった気がする。
「ねー、どくせんよく、ってなーにー?」
琳の無邪気な声が部屋に響く。
その言葉に、私も含めて周りにいた大人たちは全員固まってしまった。
これをなんと説明すればいいんだろう。
すると、琳を膝に乗せていた磯山のおじいさんが優しい笑顔を向けて琳に語りかけた。
「琳くんも、大好きな人やものがあるだろう? それを自分のものだけにしたい、離したくないって思う気持ちが独占欲というものだよ。わかるかな?」
「うん。りん、あおとくんがだいすきー! だからずっといっしょにいたいなー」
「ははっ。そうか、碧斗くんも同じ気持ちかな?」
磯山のおじいさんは笑顔で碧斗にも尋ねる。
碧斗は満面の笑みで琳の手を取った。
「あおともりんくんだいすきだよー! ずっといっしょにいよーね」
「うん!」
そんな二人の可愛い会話に、みんな笑顔が止まらなかった。
「はるかちゃんは、ぱぱがだいすきだよねー?」
「ぱぱもはるかちゃん。だいすきだよー! だって、きょうもおふとんでちゅってしてたもんねー!」
「そうそう、はるかちゃんをぎゅってしてねてるもん!」
その瞬間、部屋の空気がぴたりと止まった。
「……」
遥は固まり、私は反射的に咳払いをした。
「こ、こら。碧斗……それは……」
「えー? だって、ほんとだよー。ねー、はるかちゃん、ほんとだよねー」
碧斗も琳もキョトンとした顔で私を見上げる。
否定はできない。事実だから。
遥はみるみるうちに耳まで真っ赤になり、視線を彷徨わせながら小さく声を出した。
「ほ、ほんとだけど……その」
しどろもどろな遥に、琳が追い討ちをかける。
「ねー、ぱぱ。きょうも、いっしょにねるのー? どくせんよく、だねー!」
「っ!」
私は完全に言葉を失った。
助けを求めるように周囲を見ると、磯山の母さんは口元を押さえて肩を震わせ、緑川教授は満足そうに頷き、直くんは顔を赤くしながらも目を輝かせている。
「ははははっ」
一番最初に笑い声を上げたのは、磯山のおじいさんだった。
「元気で正直ないい子たちだ。隠し事がないのは幸せなことだよ。なぁ、賢将さん」
「ええ。西条家は幸せな家族ですね。仲がいいことは素晴らしいよ」
その言葉で張り詰めていた空気がふっと緩む。
「西条くんが遥ちゃんを大切にしてるって、ちゃんと子どもたちに伝わってるってことだよ」
緑川教授の言葉に私と遥は顔を見合わせて微笑みあう。
ものすごい爆弾を落としてきた琳と碧斗は、何事もなかったようにまたケーキを食べ始めた。
みんなに祝福されているような空気感が嬉しい。なんだかこの家族の一員になった気がした。
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