ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

文字の大きさ
204 / 211
番外編

天使たちの爆弾

<side悠臣>

ほんのり頬を染めて頷いてくれた瞬間、私は心の中でやった! と大きく叫んだ。

今夜は気兼ねなく、遥と二人っきりの時間を過ごせる。
もちろん子どもたちと家族として過ごす時間は何よりも変え難く幸せな時間だが、私と遥はまだ思いが通じ合ったばかり。
付き合いたてのカップルのようなものだから、たまには二人っきりの時間を過ごしたい。
そう考えるのも仕方がないだろう。

遥の頬が赤い。だが、嫌がるそぶりは全くない、ということは遥もまた私との二人の夜を期待してくれているということだ。これは頑張らないとな。

「けーき、おいしー!」

琳の声が聞こえて、遥もケーキを食べ始める。
途端に目を丸くする。

「ん! これ、本当に美味しい」

「よかったー。これ、手作りなんだ」

「えー、すごい! スポンジふわっふわだし、生クリームの硬さも完璧だし、売り物だと思ったよ」

遥が褒めると直くんが照れ笑いを見せる。

「直くんが毎年ほとんどのお誕生日ケーキ作ってくれてるんだよ。最初から上手だったけど、今はプロみたいだもんね」

「そうそう。今年の私の誕生日も、メロンタルト作ってくれて……美味しかったわ」

緑川教授と磯山のお母さんも一緒になって褒め始めたから、直くんは喜びつつも少し恥ずかしそうだ。

「いつもみんなで分けて食べてるのに、昇ったら自分の誕生日ケーキは一人で食べちゃったのよ。本当、直くんのことになると独占欲強いんだから」

磯山のお母さんが揶揄いながら告げると、磯山は珍しく表情をあらわにした。

「いいだろ! 直が俺のためだけに作ってくれたケーキなんだから。他の時は許してやってるんだからな」

「はいはい。わかってるわよ。直くんのケーキが食べられて感謝してるわよ」

そんな親子の会話を垣間見て、磯山にもこんな子どものようなところがあるんだと私は少し驚いた。
高校時代から磯山のことは知っているが、大抵のことは難なくこなし、余裕な表情ばかり見せていたから、こんなふうに拗ねるなんて表情を見られるとは思ってなかった。

遥や子どもたちのおかげで、磯山との友人としての距離もかなり縮まった気がする。

「ねー、どくせんよく、ってなーにー?」

琳の無邪気な声が部屋に響く。

その言葉に、私も含めて周りにいた大人たちは全員固まってしまった。

これをなんと説明すればいいんだろう。

すると、琳を膝に乗せていた磯山のおじいさんが優しい笑顔を向けて琳に語りかけた。

「琳くんも、大好きな人やものがあるだろう? それを自分のものだけにしたい、離したくないって思う気持ちが独占欲というものだよ。わかるかな?」

「うん。りん、あおとくんがだいすきー! だからずっといっしょにいたいなー」

「ははっ。そうか、碧斗くんも同じ気持ちかな?」

磯山のおじいさんは笑顔で碧斗にも尋ねる。
碧斗は満面の笑みで琳の手を取った。

「あおともりんくんだいすきだよー! ずっといっしょにいよーね」

「うん!」

そんな二人の可愛い会話に、みんな笑顔が止まらなかった。

「はるかちゃんは、ぱぱがだいすきだよねー?」

「ぱぱもはるかちゃん。だいすきだよー! だって、きょうもおふとんでちゅってしてたもんねー!」

「そうそう、はるかちゃんをぎゅってしてねてるもん!」

その瞬間、部屋の空気がぴたりと止まった。

「……」

遥は固まり、私は反射的に咳払いをした。

「こ、こら。碧斗……それは……」

「えー? だって、ほんとだよー。ねー、はるかちゃん、ほんとだよねー」

碧斗も琳もキョトンとした顔で私を見上げる。
否定はできない。事実だから。

遥はみるみるうちに耳まで真っ赤になり、視線を彷徨わせながら小さく声を出した。

「ほ、ほんとだけど……その」

しどろもどろな遥に、琳が追い討ちをかける。

「ねー、ぱぱ。きょうも、いっしょにねるのー? どくせんよく、だねー!」

「っ!」

私は完全に言葉を失った。

助けを求めるように周囲を見ると、磯山の母さんは口元を押さえて肩を震わせ、緑川教授は満足そうに頷き、直くんは顔を赤くしながらも目を輝かせている。

「ははははっ」

一番最初に笑い声を上げたのは、磯山のおじいさんだった。

「元気で正直ないい子たちだ。隠し事がないのは幸せなことだよ。なぁ、賢将さん」

「ええ。西条家は幸せな家族ですね。仲がいいことは素晴らしいよ」

その言葉で張り詰めていた空気がふっと緩む。

「西条くんが遥ちゃんを大切にしてるって、ちゃんと子どもたちに伝わってるってことだよ」

緑川教授の言葉に私と遥は顔を見合わせて微笑みあう。
ものすごい爆弾を落としてきた琳と碧斗は、何事もなかったようにまたケーキを食べ始めた。

みんなに祝福されているような空気感が嬉しい。なんだかこの家族の一員になった気がした。
感想 548

あなたにおすすめの小説

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

別れたはずの元彼に口説かれています

水無月にいち
BL
 高三の佐倉天は一歳下の松橋和馬に一目惚れをして告白をする。お世話をするという条件の元、付き合えることになった。  なにかと世話を焼いていたが、和馬と距離が縮まらないことに焦っている。  キスを強請った以降和馬とギクシャクしてしまい、別れを告げる。  だが別れたのに和馬は何度も会いに来てーー?  「やっぱりアレがだめだった?」    アレってなに?  別れてから始まる二人の物語。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。

あなたの愛したご令嬢は俺なんです

久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」 没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……