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番外編
海堂征輝の甘やかで幸せな一日 <会社編 午前中>
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「おはようございます。社長」
「ああ、今日は高崎くんか。よろしく頼むよ」
「はい。お任せください」
今日の運転手は史希の護衛隊でもある、新入社員の高崎くん。
彼と野上くんが我が社に入社してくれたおかげで、安心して史希を会社に連れて行けるようになった。
本当に助かっている。
後部座席の扉を開けてくれる彼に見送られながら、史希を抱きかかえて車に乗り込む。
私たちが座ったのを確認して、扉を閉めるとすぐに運転席に走って行った。
ゆっくりと車が動き出すと、そこからは運転席からは後部座席にいる私たちの様子は確認できなくなる。
もちろん声も運転席には聞こえない。
私が持っているブザーを鳴らした時だけ、こちらと運転席の通話が可能になるのだ。
車の窓も中からは普通のガラスだが、外から中の様子は見えない仕組みになっていて誰にも私と史希の様子を見られることはない。
「征輝さん、今日もお仕事頑張りましょうね」
「ああ、今日は午前中に会議があるから史希も必ず私の隣にいるように。史希がいてくれないと私の仕事が捗らないのだからな」
「はい。大丈夫です。しっかりと秘書として征輝さんの役に立ちますから」
「ああ、史希……っ。ありがとう、頼りにしているよ。史希も気になることがあったら発言するのだぞ」
「えっ、でもそれは……」
「大丈夫だ。気にしなくていい。私が発言を許すのだからな」
「はい。頑張ります!」
実際のところ、史希とともに会議に出ると必ず史希の一言がかなり重要なところをついているのだ。
それも一度や二度ではない。そのおかげで我が社にとってかなりの利益を産んだこともある。
今の史希は秘書というよりは私の右腕のようなもの。公私共になくてはならない大切な存在なのだ。
「史希……今日も仕事を頑張れるように頼むよ」
「はい。大好きな征輝さん、愛してます」
史希からの愛の言葉を受けてからの、史希からのキス。
もう何度もキスをしていてもいつでも初々しい史希からのキスを受けると、今日も頑張ろうという気になる。
甘く柔らかな唇を堪能して、史希に首筋にキスマークをつけてもらうまでが車中での私の朝のルーティーン。
今日も小さなキスマークをつけてもらうとちょうど会社に到着した。
高崎くんに扉を開けてもらい、史希を連れて車を降りた。
「おはようございます、社長。安曇くんもおはようございます」
到着時刻を知らせているから、すぐに吉岡がやってくる。
吉岡から今日のスケジュールを聞きながら、社長室へ向かう。
「以上、今日のスケジュールとなっています」
「わかった」
確認を終えるとすぐに、
「征輝さん、どうぞ」
と史希がコーヒーを持ってきてくれる。
ちなみに社外の人間がいない場所では、史希にはいつも通り名前で呼ばせている。
そのほうが私のやる気にもつながることを吉岡もわかっているから決して咎めたりはしない。
「ああ、史希が淹れてくれるコーヒーは最高だな」
その言葉を合図にするように、吉岡はすぐに隣の秘書室に引っ込んでいった。
これから始まる会議資料に目を通した史希が、
「あ、征輝さん。ここ、少し数字がおかしくないですか?」
とすぐに指摘してくれる。
「んっ? ああ、そうだな。さすがだ。ありがとう」
やはり最後の確認は史希に任せるのが一番だ。
少し休憩をとって、史希と共に会議に向かう。
今日の会議は我が社と初めて取引を行う相手との会議だ。
当然のように史希を私の隣に座らせるが、相手は見るからに新入社員の史希を見て少しニヤついていた。
おそらく、これから自分たちの方が優位に進められると思ったのだろう。
だが、蓋を開けてみれば、史希からの怒涛の質問に全く答えられないばかりか、用意してきたであろうものも全て指摘を受け、なす術なく最後には担当者は俯くしかなかったようだ。
史希からの質問にもしっかりと答えられない担当者など必要ない。あの会社との取引は考えた方が良さそうだな。
会議を終え、社長室に戻る。
「あの、征輝さん……僕、余計なことを言ってしまったでしょうか?」
「いや、我が社にとって必要なことだけを言ってくれたのだから気にする必要はない。いつも史希には感謝しているよ。今日も頑張ってもらったから、ゆっくりと昼食でもとろうか。好きなところに連れて行くぞ。どこがいい?」
「僕、社員食堂がいいです!! 今日の日替わり、カキフライなんですよ。それ楽しみだったんです!!」
ああ、もう。
本当に史希は欲がない。
確かにうちの社食のカキフライは絶品だが、千円もしない。
もっと高級なものをねだれば良いのにと思うが、それが史希なのだ。
「じゃあ、行こうか」
「わーい!」
無邪気に笑う史希を連れて、社食に向かった。
「ああ、今日は高崎くんか。よろしく頼むよ」
「はい。お任せください」
今日の運転手は史希の護衛隊でもある、新入社員の高崎くん。
彼と野上くんが我が社に入社してくれたおかげで、安心して史希を会社に連れて行けるようになった。
本当に助かっている。
後部座席の扉を開けてくれる彼に見送られながら、史希を抱きかかえて車に乗り込む。
私たちが座ったのを確認して、扉を閉めるとすぐに運転席に走って行った。
ゆっくりと車が動き出すと、そこからは運転席からは後部座席にいる私たちの様子は確認できなくなる。
もちろん声も運転席には聞こえない。
私が持っているブザーを鳴らした時だけ、こちらと運転席の通話が可能になるのだ。
車の窓も中からは普通のガラスだが、外から中の様子は見えない仕組みになっていて誰にも私と史希の様子を見られることはない。
「征輝さん、今日もお仕事頑張りましょうね」
「ああ、今日は午前中に会議があるから史希も必ず私の隣にいるように。史希がいてくれないと私の仕事が捗らないのだからな」
「はい。大丈夫です。しっかりと秘書として征輝さんの役に立ちますから」
「ああ、史希……っ。ありがとう、頼りにしているよ。史希も気になることがあったら発言するのだぞ」
「えっ、でもそれは……」
「大丈夫だ。気にしなくていい。私が発言を許すのだからな」
「はい。頑張ります!」
実際のところ、史希とともに会議に出ると必ず史希の一言がかなり重要なところをついているのだ。
それも一度や二度ではない。そのおかげで我が社にとってかなりの利益を産んだこともある。
今の史希は秘書というよりは私の右腕のようなもの。公私共になくてはならない大切な存在なのだ。
「史希……今日も仕事を頑張れるように頼むよ」
「はい。大好きな征輝さん、愛してます」
史希からの愛の言葉を受けてからの、史希からのキス。
もう何度もキスをしていてもいつでも初々しい史希からのキスを受けると、今日も頑張ろうという気になる。
甘く柔らかな唇を堪能して、史希に首筋にキスマークをつけてもらうまでが車中での私の朝のルーティーン。
今日も小さなキスマークをつけてもらうとちょうど会社に到着した。
高崎くんに扉を開けてもらい、史希を連れて車を降りた。
「おはようございます、社長。安曇くんもおはようございます」
到着時刻を知らせているから、すぐに吉岡がやってくる。
吉岡から今日のスケジュールを聞きながら、社長室へ向かう。
「以上、今日のスケジュールとなっています」
「わかった」
確認を終えるとすぐに、
「征輝さん、どうぞ」
と史希がコーヒーを持ってきてくれる。
ちなみに社外の人間がいない場所では、史希にはいつも通り名前で呼ばせている。
そのほうが私のやる気にもつながることを吉岡もわかっているから決して咎めたりはしない。
「ああ、史希が淹れてくれるコーヒーは最高だな」
その言葉を合図にするように、吉岡はすぐに隣の秘書室に引っ込んでいった。
これから始まる会議資料に目を通した史希が、
「あ、征輝さん。ここ、少し数字がおかしくないですか?」
とすぐに指摘してくれる。
「んっ? ああ、そうだな。さすがだ。ありがとう」
やはり最後の確認は史希に任せるのが一番だ。
少し休憩をとって、史希と共に会議に向かう。
今日の会議は我が社と初めて取引を行う相手との会議だ。
当然のように史希を私の隣に座らせるが、相手は見るからに新入社員の史希を見て少しニヤついていた。
おそらく、これから自分たちの方が優位に進められると思ったのだろう。
だが、蓋を開けてみれば、史希からの怒涛の質問に全く答えられないばかりか、用意してきたであろうものも全て指摘を受け、なす術なく最後には担当者は俯くしかなかったようだ。
史希からの質問にもしっかりと答えられない担当者など必要ない。あの会社との取引は考えた方が良さそうだな。
会議を終え、社長室に戻る。
「あの、征輝さん……僕、余計なことを言ってしまったでしょうか?」
「いや、我が社にとって必要なことだけを言ってくれたのだから気にする必要はない。いつも史希には感謝しているよ。今日も頑張ってもらったから、ゆっくりと昼食でもとろうか。好きなところに連れて行くぞ。どこがいい?」
「僕、社員食堂がいいです!! 今日の日替わり、カキフライなんですよ。それ楽しみだったんです!!」
ああ、もう。
本当に史希は欲がない。
確かにうちの社食のカキフライは絶品だが、千円もしない。
もっと高級なものをねだれば良いのにと思うが、それが史希なのだ。
「じゃあ、行こうか」
「わーい!」
無邪気に笑う史希を連れて、社食に向かった。
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