歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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番外編

思わぬ発言

<side滝川>

櫻葉グループ入社記念のキーホルダーを気に入られたご子息にプレゼントをなさりたい会長と、特別なものだから何もしていない自分がもらえないと仰るご子息のご意向を汲んで、私は桜カフェの新メニューのコンペの参加を提案した。
これでご子息がお考えになったメニューが選ばれれば櫻葉グループの一員としてあのキーホルダーを贈っても、ご子息が受け取ってくださるのではないかと考えたのだ。

もちろんコンペは匿名で選ばれる。
ご子息がお考えになったものが選ばれるとは限らないが、もし選ばれなかったとしても櫻葉グループのために力を尽くしたという理由でお渡しになれるだろう。そんな意図もあった。

昼食とお昼寝をされたご子息が会長をお誘いになり、桜カフェに向かう。
社長の史紀さんも一緒だ。

私も休憩時間に桜カフェを利用することはあるが、今回はあくまでも仕事の一環。
しかも会長とご子息、そして社長のお供で向かう。

先に行って社員用の座席の確保をする。

カフェに行くと私の姿を見つけて、すぐに店長の和孝かずたかさんが駆け寄ってきてくれた。

映司えいじがこの時間に来るなんて珍しいな」

仕事モードなのに、言葉遣いだけが少し砕けていてどきっとする。

「まもなく会長とご子息と社長がお見えになります」

なんとか社長秘書として冷静に答えると、和孝さんは優しく微笑んだ。

「ああ、なるほど。そういうことか。今はあのエリアは誰もいないから大丈夫。このあとは誰も入れないようにしておくよ」

「お願いします」

それだけ告げて、すぐに会長方のもとに戻る。
そして彼らを席に案内して、もう一度和孝さんの元に向かった。

「ご子息に桜カフェの新メニューをお考えいただくことになっていますので、いくつかスイーツが出るかと……」

「わかった。すぐに出せるように用意しておこう」

和孝さんがチラリと視線を向けると会長から合図があったようだ。
急いで一緒に席にむかう。

ご子息は桜ティラミスを選ばれたようだ。

私は近くに立ってスイーツをお召し上がりになるのを待っているつもりだったが、会長から一緒にと誘われて緊張しつつ席に座った。

好きなものを頼みなさいと言われたけれど、私が選ぶものはいつも同じ。

桜わらび餅。
これが大好きで、他のものを選ぶ時も必ずこれはセットだ。

和孝さんが注文を聞き、すぐに全ての品が運ばれてくる。

まずは桜ティラミス。
そして社長の史紀さんが選んだ桜マカロンと桜プリン。
その後、私の前に桜わらび餅が置かれた。

会長の前には紅茶。
この桜カフェの紅茶はとびきり美味しくてどのスイーツに合うと評判だ。

ご子息が初めての桜ティラミスを召し上がる。
その表情だけで美味しいと言うのがよくわかる。

和孝さんはその表情を見て、嬉しそうにしていた。
それ以上に喜んでいたのは会長だった。
なんせあの桜ティラミスは会長夫人との思い出の品。

それをご子息が美味しそうに召し上がる。
これ以上嬉しいことはないだろう。

「さぁ、史紀と滝川くんも食べなさい」

会長に勧められて桜わらび餅に手を伸ばすが、ご子息の視線を感じる。
もしかしたらわらび餅が珍しいのかもしれない。

「おひとつ、いかがですか?」

「わぁ、いいんですか?」

「はい。どうぞ」

「嬉しい! あーん」

「えっ……」

当然のように口を開けられ、食べさせるようにねだられてびっくりする。

どうしていいかわからずに困っていると、会長がさっと助け舟を出してくれた。

「悪い。滝川くん。一花はいつも征哉くんに食べさせてもらっているから自然に出てしまったんだ。一花、私が食べさせよう。滝川くん、ひとついただくよ」

そういうと、会長は竹の楊枝でわらび餅をとり、ご子息の口に運んだ。

「んー!!」

目を丸くして喜ぶその姿に、きっと気に入っていただけたのだと思った。

さっきは驚いたが、ああやっていつも貴船会長と食事をなさっているのだ。

私も和孝さんに強請ってみようか……なんて、そんなことをつい考えてしまう。

「パパ、これすごく美味しいです!」

「そうだろう。一花が食べるならもうひとつ注文しようか」

「はい。あの、ちょっと考えたんですけど、このわらび餅をさっきの桜ティラミスの上に載せるのってどうですか? 絶対美味しいと思うんだけどなー」

ご子息のその言葉に、一瞬その場がしんと静まり返った。
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