16 / 311
完璧な計画
しおりを挟む
< side未知子>
ーああ、母さん。今、ひかるは近くにいる?
ーええ。でも眠っているわ。
ーそうか、それなら今のうちに話をしておくよ。
ーどうしたの? 何か進展があったの?
ーああ。磯山先生と榊さんが協力してくれることになって、もう今日にでも決着がつきそうだ。だから、今日は少し帰宅が遅くなるかもしれない。
ーそう。ひかるくんが寂しがるかもしれないけど、仕方がないわ。決着するなら早い方がいいものね。大丈夫。ひかるくんのことは私に任せておいて。
ーひかるが寂しがるってどういうことだ?
ー部屋が広すぎるっていうから、夜は征哉が隣で寝るから大丈夫って言っておいたの。そうしたら、少し照れているみたいだったけれど表情は嬉しそうだったわ。きっと誰かと一緒に寝るのが初めてなのね。征哉が早く帰ってきたらいいなって、さっきも休む前も何度も話していたから。
そう教えてやると、電話口の征哉がハッと息を呑んだ気がした。
ー征哉? どうかした?
ーああ、いや。なんでもないよ。終わったら急いで帰ってくるから。起きたらそう伝えておいてくれ。
わかったわという私の返事を聞いたかどうかわからないうちにさっさと切ってしまう征哉の様子に思わず笑ってしまう。
あの子はきっと驚くようなスピードで全てを終わらせてくるはずね。
ふふっ。こんなにもひかるくんを特別に思っているくせに、まだ気づいていないなんて……。
本当に、あの子にとっては初めての感情なのかもしれないわね。
<side征哉>
ひかるが、私が帰ってくることを望んでいるばかりか、私が隣で寝ることを嫌がっていないなんて……。
そんなことを知ってしまったら、早く帰らないわけには行かないな。
ひかるが起きている間に帰れたらいいが、とりあえず今は目の前のことを終わらせるしかないか。
奴を尾行してくれている調査員からの報告によればまだ奴は自宅にいるようだ。
今日は臨時休業にしたらしいと言っていた。
まぁ、それもそうだろう。
スタッフがひかるしかいない中で営業して、やっと回せていたというのにひかるなしでは到底営業できるはずがない。
それに今は、店よりも示談金を受け取ることの方が奴にとっては重要だからな。
今は、どうやって忍び込むかを足りない頭で必死に考えていることだろう。
どれだけ愚かで杜撰な計画でも部屋には問題なくたどり着けるようにしてやるよ。
そこにはひかるはいないけどな。
「榊さん、今日は力を貸してくださってありがとうございます」
「いや、あんな奴を野放しにしていた私たちに捕まえる機会を与えてもらってありがたいと思っているよ。それで、被害者の子は大丈夫なのか?」
「はい。我が家で母がそばについていてくれていますから、問題ありません」
「ああ、未知子さんが一緒なら安心だな」
聖ラグエル病院内にある会議室を対策本部にして、榊さん主導の元、私服警官が配備される。
どうみても、入院患者や病院関係者にしか見えないからさすがだ。
さぁ、こっちの準備は万端だ。
いつでも罠にかかりに来い。
<side養父 佐伯茂雄 >
「じゃあ、行ってくるぞ」
「あんた! しっかりサインさせてくるんだよ!」
「ああ、わかってるって」
示談金と慰謝料が手に入ったら、あのババアはさっさと捨てて若くて可愛い嫁でももらうか。
あいつの兄貴がやっている施設から邪魔者を引き取る代わりに金をもらっていたから、あいつをそばに置いといてやったが、大金が入ればあいつなんかなんの価値もない。
俺の人生もこれからだな。
俺は勝利を確信しながら、聖ラグエル病院に向かった。
さすがに表から入るわけにはいかねぇからな。
こういうところにはいくつか裏口があるはずだ。
そっと裏にまわれば五箇所ある裏口の中で一番端の裏口の鍵が開いていた。
へへっ。思った通りだ。
ちょろいもんだよ。
ゆっくりと扉を開け、中を覗いてみたが誰もいる気配はない。
大病院といってもこんなもんだよな。
とりあえず特別室か。
階段かエレベーターでも……。
キョロキョロと辺りを見回していると、突き当たりの角にエレベーターが見えた。
よし! ツイてるな、俺。
特別室は……7階か。
三部屋あるみたいだが、どこかまではわからんな。
とりあえず部屋を見ていけばいいか。
そう思っていたが、7階について見てみると、真ん中と端の部屋には空室の札がかかっている。
なんだ、すぐに見つかったな。
楽勝だ。
そっと扉を開け、中に入ると大きなベッドが見える。
ちっ!
こんないい部屋で寝てやがる。
ひかるのくせに図々しい。
っと、その前にあの監視カメラ壊しとかねぇとな。
今の俺の姿が映ったら困る。
そっとカメラの死角に入り、ホームセンターで買ってきたスプレーをかけ画面が映らないようにしてやった。
本当はバキバキに壊したいところだが、ひかるが起きて騒ぎ出したらうるさいからな。
これだけスプレーかけとけば大丈夫だろう。
よし。
あとはひかるにサインを……あっ、これ!
ひかるのベッドに近づこうと思った俺の目に飛び込んできたのはテーブルに置かれた小さな機械。
これ、ボイスレコーダーじゃねぇか。
ハハッ。こんなところに置きっぱなしとは威勢のいいこといっていたわりにはあの医者も間抜けだな。
これもありがたくもらっとくぜ。
あとは、ひかるにサインを貰えばいい。
とりあえずポケットに忍ばせていたナイフを取り出し、ベッドに近づいた。
これで脅せばすぐに書くだろう。
どうせ相手は自分で動くこともでないガキだからな。
ベッドに近づき、
「おいっ! いい加減に起きろよ!! 俺の手を煩わせんな!」
そう叫びながら布団を剥ぎ取った瞬間、鋭い勢いで何かが飛んできたと思ったら一瞬のうちに手に持っていたナイフが弾き飛ばされた。
ーああ、母さん。今、ひかるは近くにいる?
ーええ。でも眠っているわ。
ーそうか、それなら今のうちに話をしておくよ。
ーどうしたの? 何か進展があったの?
ーああ。磯山先生と榊さんが協力してくれることになって、もう今日にでも決着がつきそうだ。だから、今日は少し帰宅が遅くなるかもしれない。
ーそう。ひかるくんが寂しがるかもしれないけど、仕方がないわ。決着するなら早い方がいいものね。大丈夫。ひかるくんのことは私に任せておいて。
ーひかるが寂しがるってどういうことだ?
ー部屋が広すぎるっていうから、夜は征哉が隣で寝るから大丈夫って言っておいたの。そうしたら、少し照れているみたいだったけれど表情は嬉しそうだったわ。きっと誰かと一緒に寝るのが初めてなのね。征哉が早く帰ってきたらいいなって、さっきも休む前も何度も話していたから。
そう教えてやると、電話口の征哉がハッと息を呑んだ気がした。
ー征哉? どうかした?
ーああ、いや。なんでもないよ。終わったら急いで帰ってくるから。起きたらそう伝えておいてくれ。
わかったわという私の返事を聞いたかどうかわからないうちにさっさと切ってしまう征哉の様子に思わず笑ってしまう。
あの子はきっと驚くようなスピードで全てを終わらせてくるはずね。
ふふっ。こんなにもひかるくんを特別に思っているくせに、まだ気づいていないなんて……。
本当に、あの子にとっては初めての感情なのかもしれないわね。
<side征哉>
ひかるが、私が帰ってくることを望んでいるばかりか、私が隣で寝ることを嫌がっていないなんて……。
そんなことを知ってしまったら、早く帰らないわけには行かないな。
ひかるが起きている間に帰れたらいいが、とりあえず今は目の前のことを終わらせるしかないか。
奴を尾行してくれている調査員からの報告によればまだ奴は自宅にいるようだ。
今日は臨時休業にしたらしいと言っていた。
まぁ、それもそうだろう。
スタッフがひかるしかいない中で営業して、やっと回せていたというのにひかるなしでは到底営業できるはずがない。
それに今は、店よりも示談金を受け取ることの方が奴にとっては重要だからな。
今は、どうやって忍び込むかを足りない頭で必死に考えていることだろう。
どれだけ愚かで杜撰な計画でも部屋には問題なくたどり着けるようにしてやるよ。
そこにはひかるはいないけどな。
「榊さん、今日は力を貸してくださってありがとうございます」
「いや、あんな奴を野放しにしていた私たちに捕まえる機会を与えてもらってありがたいと思っているよ。それで、被害者の子は大丈夫なのか?」
「はい。我が家で母がそばについていてくれていますから、問題ありません」
「ああ、未知子さんが一緒なら安心だな」
聖ラグエル病院内にある会議室を対策本部にして、榊さん主導の元、私服警官が配備される。
どうみても、入院患者や病院関係者にしか見えないからさすがだ。
さぁ、こっちの準備は万端だ。
いつでも罠にかかりに来い。
<side養父 佐伯茂雄 >
「じゃあ、行ってくるぞ」
「あんた! しっかりサインさせてくるんだよ!」
「ああ、わかってるって」
示談金と慰謝料が手に入ったら、あのババアはさっさと捨てて若くて可愛い嫁でももらうか。
あいつの兄貴がやっている施設から邪魔者を引き取る代わりに金をもらっていたから、あいつをそばに置いといてやったが、大金が入ればあいつなんかなんの価値もない。
俺の人生もこれからだな。
俺は勝利を確信しながら、聖ラグエル病院に向かった。
さすがに表から入るわけにはいかねぇからな。
こういうところにはいくつか裏口があるはずだ。
そっと裏にまわれば五箇所ある裏口の中で一番端の裏口の鍵が開いていた。
へへっ。思った通りだ。
ちょろいもんだよ。
ゆっくりと扉を開け、中を覗いてみたが誰もいる気配はない。
大病院といってもこんなもんだよな。
とりあえず特別室か。
階段かエレベーターでも……。
キョロキョロと辺りを見回していると、突き当たりの角にエレベーターが見えた。
よし! ツイてるな、俺。
特別室は……7階か。
三部屋あるみたいだが、どこかまではわからんな。
とりあえず部屋を見ていけばいいか。
そう思っていたが、7階について見てみると、真ん中と端の部屋には空室の札がかかっている。
なんだ、すぐに見つかったな。
楽勝だ。
そっと扉を開け、中に入ると大きなベッドが見える。
ちっ!
こんないい部屋で寝てやがる。
ひかるのくせに図々しい。
っと、その前にあの監視カメラ壊しとかねぇとな。
今の俺の姿が映ったら困る。
そっとカメラの死角に入り、ホームセンターで買ってきたスプレーをかけ画面が映らないようにしてやった。
本当はバキバキに壊したいところだが、ひかるが起きて騒ぎ出したらうるさいからな。
これだけスプレーかけとけば大丈夫だろう。
よし。
あとはひかるにサインを……あっ、これ!
ひかるのベッドに近づこうと思った俺の目に飛び込んできたのはテーブルに置かれた小さな機械。
これ、ボイスレコーダーじゃねぇか。
ハハッ。こんなところに置きっぱなしとは威勢のいいこといっていたわりにはあの医者も間抜けだな。
これもありがたくもらっとくぜ。
あとは、ひかるにサインを貰えばいい。
とりあえずポケットに忍ばせていたナイフを取り出し、ベッドに近づいた。
これで脅せばすぐに書くだろう。
どうせ相手は自分で動くこともでないガキだからな。
ベッドに近づき、
「おいっ! いい加減に起きろよ!! 俺の手を煩わせんな!」
そう叫びながら布団を剥ぎ取った瞬間、鋭い勢いで何かが飛んできたと思ったら一瞬のうちに手に持っていたナイフが弾き飛ばされた。
1,213
あなたにおすすめの小説
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる