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制裁の始まり
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<side征哉>
「磯山先生、お時間をいただきありがとうございます」
「いや、構わないよ。それで早速本題だが、さっき征哉くんが送ってくれた資料、全て目を通させてもらったよ。これは私が担当した案件の中でも群を抜いて酷いな。本当にこんなことが?」
「はい。私も驚きました。実際に彼……ひかるくんの戸籍を確認しましたが、拾われた時に新たに作成された、彼を筆頭者とする戸籍のままでした。これをみても奴らと養子縁組をしていないのは明らかです。ひかるくんは自分の名前を『佐伯ひかる』と名乗っていましたが、これは施設を出る時に佐伯家に引き取られたため、これからは佐伯ひかると名乗るようにと言われたようです。ですが実際には、彼は当時の市長である平嶋氏の苗字をとって付けられた『平嶋ひかる』のままです」
「なるほど。それをみても、ひかるくんは彼らの養子になったと騙されていたことは間違いないな」
「はい。だから親の仕事を手伝うのに、給料は無しだと言われても文句は言えなかったようでこの3年タダ働きをさせられていた上に、休憩時間も休日も返上で働かされていたようです。これが手術の際に撮影したひかるくんの身体です。明らかに栄養失調が見られます」
「――っ、これは、また……酷いな」
今までいろんな案件に携わり、虐待された子どもたちを見ることもあった磯山先生が眉を顰めるほどひかるの状態は酷いものだった。
「はい。ここまで酷い仕打ちをしておきながら、今回彼が交通事故に遭い多額の示談金と慰謝料が手に入ると思って、彼と急いで養子縁組をしようと奴は企んでいるのです。とりあえず、ひかるくんは奴と接触しないようにすでに我が家に移送させました」
あの病院も決して危険ではないが、今回は奴を誘き出すのに使いたいからな。
そんな場所にひかるを置いて置けない。
「そうか。君の家にいれば、奴と会うこともない。それは絶好の場所だったな」
ようやく少し、磯山先生に笑顔が見られる。
「はい。母もひかるくんについていてくれていますし安心です」
「ならば、今のうちにさっさと終わらせるとするか。奴だけでなく、不当な引き渡しを目論んだその施設も根こそぎ暴いてやろう」
「はい! ありがとうございます!」
磯山先生が本気になったらもうこっちのものだ。
私たちはすぐに行動に取り掛かった。
すると、その時、胸の内ポケットに入れていたスマホが振動を伝えた。
有原くんからのメッセージだ。
<調査員からの報告が来ました。ターゲットは今、ホームセンターで道具を購入しています。おそらく、ひかるくんの病室に忍び込むための道具を揃えているものと思われます。先ほど誰かと電話で話をしていた様子も録画してしますのでお送りします>
流石に早いな。
彼の知り合いの調査員は実に優秀だ。
「先生、有原くんから情報提供がありました。動画を再生させます」
――おい、裏から手を回して、今からあいつと養子縁組できないのか? 状況が変わったんだよ! あいつが事故った相手が示談金で1億5000万くれるとか言い出したんだ。はぁ? 違うって、1億5000万!! ああ、すげぇだろ? だけど、今のままじゃ俺のものにはならねえんだよ。いや、そもそもお前が養子に入れずに働かせろって言ったからだろ? ああ、今までの奴らも同じだったけどさ。まさかあいつがこんな大金手に入れるなんて思わないだろう。最初、それに気づかなくて奴と養子縁組してないってぽろっと言っちまってさ、病院のやつにそれを録音されてんだよ。ああ、そうだろ。だから、今夜にでもその証拠を奪いに行ってくるよ。ああ。お前にも少しばかり金やるから、なんとか裏から手を回して、ひかると養子縁組できるように動いてくれ。頼むぞ
相手が何を言っているかまでは確認できないが、奴が不正を行おうとしていることは明らかだ。
しかも今夜、聖ラグエル病院に忍び込む予定まで喋ってくれたな。
素晴らしい調査内容だ。
「この電話の相手は……おそらく、施設の奴だな」
「はい。間違い無いですね。奴にはそんな権限はないとは思いますが、念の為、ひかるくんについては養子縁組の類ができないように制限をかけておきます」
「ああ。頼む。私は榊くんに連絡をしておくよ」
「はい。ありがとうございます」
榊さんは磯山先生と古くからの知り合いで、現在警察庁長官をなさっている。
磯山先生がついてくれるだけでも心強いというのに、榊さんまで味方になればもう怖いものはないな。
ひかるに対して全ての届出に制限をかけ終えた頃、磯山先生が戻ってこられた。
「今日の計画を奴に遂行させて、その場で現行犯逮捕することに決まったよ。今回は不法侵入と器物損壊、窃盗の三件での逮捕になるだろうが、それからひかるくんへの労働基準法違反、養子縁組を騙った詐欺罪、その他諸々入れれば、実刑は免れないな、それどころかかなり長い懲役刑になるだろう」
「三年もの間、ひかるくんをあんな目に遭わせていたんですからそれでも足りないくらいですよ。でも、これ以上ひかるくんのような子を産まないためにもあんな極悪非道の奴にはさっさといなくなってもらったほうが世の中のためになりますよ」
「ああ、そうだな。とりあえず、聖ラグエル病院に連絡を入れて私服警官を配備させると仰ってた。今から、一緒に行こう」
「はい。よろしくお願いします」
今日で全て片付けてやる。
ひかる、もう少しの辛抱だ。
全てが終わったら、そばについていてあげるからな。
「磯山先生、お時間をいただきありがとうございます」
「いや、構わないよ。それで早速本題だが、さっき征哉くんが送ってくれた資料、全て目を通させてもらったよ。これは私が担当した案件の中でも群を抜いて酷いな。本当にこんなことが?」
「はい。私も驚きました。実際に彼……ひかるくんの戸籍を確認しましたが、拾われた時に新たに作成された、彼を筆頭者とする戸籍のままでした。これをみても奴らと養子縁組をしていないのは明らかです。ひかるくんは自分の名前を『佐伯ひかる』と名乗っていましたが、これは施設を出る時に佐伯家に引き取られたため、これからは佐伯ひかると名乗るようにと言われたようです。ですが実際には、彼は当時の市長である平嶋氏の苗字をとって付けられた『平嶋ひかる』のままです」
「なるほど。それをみても、ひかるくんは彼らの養子になったと騙されていたことは間違いないな」
「はい。だから親の仕事を手伝うのに、給料は無しだと言われても文句は言えなかったようでこの3年タダ働きをさせられていた上に、休憩時間も休日も返上で働かされていたようです。これが手術の際に撮影したひかるくんの身体です。明らかに栄養失調が見られます」
「――っ、これは、また……酷いな」
今までいろんな案件に携わり、虐待された子どもたちを見ることもあった磯山先生が眉を顰めるほどひかるの状態は酷いものだった。
「はい。ここまで酷い仕打ちをしておきながら、今回彼が交通事故に遭い多額の示談金と慰謝料が手に入ると思って、彼と急いで養子縁組をしようと奴は企んでいるのです。とりあえず、ひかるくんは奴と接触しないようにすでに我が家に移送させました」
あの病院も決して危険ではないが、今回は奴を誘き出すのに使いたいからな。
そんな場所にひかるを置いて置けない。
「そうか。君の家にいれば、奴と会うこともない。それは絶好の場所だったな」
ようやく少し、磯山先生に笑顔が見られる。
「はい。母もひかるくんについていてくれていますし安心です」
「ならば、今のうちにさっさと終わらせるとするか。奴だけでなく、不当な引き渡しを目論んだその施設も根こそぎ暴いてやろう」
「はい! ありがとうございます!」
磯山先生が本気になったらもうこっちのものだ。
私たちはすぐに行動に取り掛かった。
すると、その時、胸の内ポケットに入れていたスマホが振動を伝えた。
有原くんからのメッセージだ。
<調査員からの報告が来ました。ターゲットは今、ホームセンターで道具を購入しています。おそらく、ひかるくんの病室に忍び込むための道具を揃えているものと思われます。先ほど誰かと電話で話をしていた様子も録画してしますのでお送りします>
流石に早いな。
彼の知り合いの調査員は実に優秀だ。
「先生、有原くんから情報提供がありました。動画を再生させます」
――おい、裏から手を回して、今からあいつと養子縁組できないのか? 状況が変わったんだよ! あいつが事故った相手が示談金で1億5000万くれるとか言い出したんだ。はぁ? 違うって、1億5000万!! ああ、すげぇだろ? だけど、今のままじゃ俺のものにはならねえんだよ。いや、そもそもお前が養子に入れずに働かせろって言ったからだろ? ああ、今までの奴らも同じだったけどさ。まさかあいつがこんな大金手に入れるなんて思わないだろう。最初、それに気づかなくて奴と養子縁組してないってぽろっと言っちまってさ、病院のやつにそれを録音されてんだよ。ああ、そうだろ。だから、今夜にでもその証拠を奪いに行ってくるよ。ああ。お前にも少しばかり金やるから、なんとか裏から手を回して、ひかると養子縁組できるように動いてくれ。頼むぞ
相手が何を言っているかまでは確認できないが、奴が不正を行おうとしていることは明らかだ。
しかも今夜、聖ラグエル病院に忍び込む予定まで喋ってくれたな。
素晴らしい調査内容だ。
「この電話の相手は……おそらく、施設の奴だな」
「はい。間違い無いですね。奴にはそんな権限はないとは思いますが、念の為、ひかるくんについては養子縁組の類ができないように制限をかけておきます」
「ああ。頼む。私は榊くんに連絡をしておくよ」
「はい。ありがとうございます」
榊さんは磯山先生と古くからの知り合いで、現在警察庁長官をなさっている。
磯山先生がついてくれるだけでも心強いというのに、榊さんまで味方になればもう怖いものはないな。
ひかるに対して全ての届出に制限をかけ終えた頃、磯山先生が戻ってこられた。
「今日の計画を奴に遂行させて、その場で現行犯逮捕することに決まったよ。今回は不法侵入と器物損壊、窃盗の三件での逮捕になるだろうが、それからひかるくんへの労働基準法違反、養子縁組を騙った詐欺罪、その他諸々入れれば、実刑は免れないな、それどころかかなり長い懲役刑になるだろう」
「三年もの間、ひかるくんをあんな目に遭わせていたんですからそれでも足りないくらいですよ。でも、これ以上ひかるくんのような子を産まないためにもあんな極悪非道の奴にはさっさといなくなってもらったほうが世の中のためになりますよ」
「ああ、そうだな。とりあえず、聖ラグエル病院に連絡を入れて私服警官を配備させると仰ってた。今から、一緒に行こう」
「はい。よろしくお願いします」
今日で全て片付けてやる。
ひかる、もう少しの辛抱だ。
全てが終わったら、そばについていてあげるからな。
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