歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

文字の大きさ
15 / 311

制裁の始まり

しおりを挟む
<side征哉>

「磯山先生、お時間をいただきありがとうございます」

「いや、構わないよ。それで早速本題だが、さっき征哉くんが送ってくれた資料、全て目を通させてもらったよ。これは私が担当した案件の中でも群を抜いて酷いな。本当にこんなことが?」

「はい。私も驚きました。実際に彼……ひかるくんの戸籍を確認しましたが、拾われた時に新たに作成された、彼を筆頭者とする戸籍のままでした。これをみても奴らと養子縁組をしていないのは明らかです。ひかるくんは自分の名前を『佐伯ひかる』と名乗っていましたが、これは施設を出る時に佐伯家に引き取られたため、これからは佐伯ひかると名乗るようにと言われたようです。ですが実際には、彼は当時の市長である平嶋氏の苗字をとって付けられた『平嶋ひかる』のままです」

「なるほど。それをみても、ひかるくんは彼らの養子になったと騙されていたことは間違いないな」

「はい。だから親の仕事を手伝うのに、給料は無しだと言われても文句は言えなかったようでこの3年タダ働きをさせられていた上に、休憩時間も休日も返上で働かされていたようです。これが手術の際に撮影したひかるくんの身体です。明らかに栄養失調が見られます」

「――っ、これは、また……酷いな」

今までいろんな案件に携わり、虐待された子どもたちを見ることもあった磯山先生が眉を顰めるほどひかるの状態は酷いものだった。

「はい。ここまで酷い仕打ちをしておきながら、今回彼が交通事故に遭い多額の示談金と慰謝料が手に入ると思って、彼と急いで養子縁組をしようと奴は企んでいるのです。とりあえず、ひかるくんは奴と接触しないようにすでに我が家に移送させました」

あの病院も決して危険ではないが、今回は奴をおびき出すのに使いたいからな。
そんな場所にひかるを置いて置けない。

「そうか。君の家にいれば、奴と会うこともない。それは絶好の場所だったな」

ようやく少し、磯山先生に笑顔が見られる。

「はい。母もひかるくんについていてくれていますし安心です」

「ならば、今のうちにさっさと終わらせるとするか。奴だけでなく、不当な引き渡しを目論んだその施設も根こそぎ暴いてやろう」

「はい! ありがとうございます!」

磯山先生が本気になったらもうこっちのものだ。

私たちはすぐに行動に取り掛かった。

すると、その時、胸の内ポケットに入れていたスマホが振動を伝えた。

有原くんからのメッセージだ。

<調査員からの報告が来ました。ターゲットは今、ホームセンターで道具を購入しています。おそらく、ひかるくんの病室に忍び込むための道具を揃えているものと思われます。先ほど誰かと電話で話をしていた様子も録画してしますのでお送りします>

流石に早いな。
彼の知り合いの調査員は実に優秀だ。

「先生、有原くんから情報提供がありました。動画を再生させます」

――おい、裏から手を回して、今からあいつと養子縁組できないのか? 状況が変わったんだよ! あいつが事故った相手が示談金で1億5000万くれるとか言い出したんだ。はぁ? 違うって、1億5000万!! ああ、すげぇだろ? だけど、今のままじゃ俺のものにはならねえんだよ。いや、そもそもお前が養子に入れずに働かせろって言ったからだろ? ああ、今までの奴らも同じだったけどさ。まさかあいつがこんな大金手に入れるなんて思わないだろう。最初、それに気づかなくて奴と養子縁組してないってぽろっと言っちまってさ、病院のやつにそれを録音されてんだよ。ああ、そうだろ。だから、今夜にでもその証拠を奪いに行ってくるよ。ああ。お前にも少しばかり金やるから、なんとか裏から手を回して、ひかると養子縁組できるように動いてくれ。頼むぞ

相手が何を言っているかまでは確認できないが、奴が不正を行おうとしていることは明らかだ。
しかも今夜、聖ラグエル病院に忍び込む予定まで喋ってくれたな。
素晴らしい調査内容だ。

「この電話の相手は……おそらく、施設の奴だな」

「はい。間違い無いですね。奴にはそんな権限はないとは思いますが、念の為、ひかるくんについては養子縁組の類ができないように制限をかけておきます」

「ああ。頼む。私は榊くんに連絡をしておくよ」

「はい。ありがとうございます」

榊さんは磯山先生と古くからの知り合いで、現在警察庁長官をなさっている。
磯山先生がついてくれるだけでも心強いというのに、榊さんまで味方になればもう怖いものはないな。

ひかるに対して全ての届出に制限をかけ終えた頃、磯山先生が戻ってこられた。

「今日の計画を奴に遂行させて、その場で現行犯逮捕することに決まったよ。今回は不法侵入と器物損壊、窃盗の三件での逮捕になるだろうが、それからひかるくんへの労働基準法違反、養子縁組を騙った詐欺罪、その他諸々入れれば、実刑は免れないな、それどころかかなり長い懲役刑になるだろう」

「三年もの間、ひかるくんをあんな目に遭わせていたんですからそれでも足りないくらいですよ。でも、これ以上ひかるくんのような子を産まないためにもあんな極悪非道の奴にはさっさといなくなってもらったほうが世の中のためになりますよ」

「ああ、そうだな。とりあえず、聖ラグエル病院に連絡を入れて私服警官を配備させると仰ってた。今から、一緒に行こう」

「はい。よろしくお願いします」

今日で全て片付けてやる。
ひかる、もう少しの辛抱だ。
全てが終わったら、そばについていてあげるからな。
しおりを挟む
感想 545

あなたにおすすめの小説

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました

小池 月
BL
 大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。  壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。  加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。  大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。  そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。 ☆BLです。全年齢対応作品です☆

処理中です...