歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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優しい温もり

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<side未知子>

小さな身体で懸命に生きているひかるくん。
こんな彼を見ていたら優しくしてあげたいと思うのは人として当然かもしれない。
けれど……。

たとえ私の命の恩人だとしても、彼の境遇があまりにも不憫なものでも、今までのあの子なら我が家に連れてくるなんてことは絶対になかった。

あの子はまだ気づいていないのかもしれないけれど、ひかるくんに特別な感情を抱いているわね、きっと。

あの子が20代の頃まではいつか結婚をして、可愛い孫を見せてくれるかしらと期待していた部分もあったけれど、主人が亡くなってより一層仕事に打ち込むようになってからはそんな期待はしないようにしたわ。

私には優しい子だけれど、好意を持って近づいてくる人を嫌悪している節がある。
幼い頃から貴船コンツェルンの次期総帥と言われていて、明らかにそれ目当てで近づいてくる人たちの中にいたら、そう思ってしまっても無理はないわね。

主人も私と出会うまでずっとそうだったと言っていたし、そういう運命なのかもしれない。

結婚して家族を作るのが必ずしも幸せというわけではないのだし。
征哉がたとえずっと一人でも幸せであればいい……そう思うようにしたの。

だからこそ、ひかるくんへの征哉の対応を見た時に目を疑ったわ。

たとえ、ひかるくんが征哉に恋愛の情を持たなくても、征哉が愛せる人ができただけでそれでいい。
それだけできっと幸せね。

「ひかるくん、ずっと私と征哉のそばにいてちょうだい。今まで辛い思いをした以上に幸せにするから……」

そっと頭を撫でると、ひかるくんが笑った気がした。
ふふっ。いい夢でも見ているのかしら。

ひかるくんがいてくれるだけで、私の心も温かくなるわ。

目を覚ましたら驚くわね。
だから、目を覚ますまでそばにいてあげよう。
もう傷つくこともないから、安心してね。

<sideひかる>

「う、ん……っ」

なんだか頭がぼーっとする。
僕……どうしたんだっけ?

目を覚ましても、天井しか見えない。

何度か瞬きをしていると、

「ひかるくん、目が覚めた?」

と優しい声が聞こえた。

その声のする方向に顔を向けると、優しい笑顔が見えた。

「あっ、貴船さん……」

「ふふっ。よかった、私のこと覚えていてくれたのね」

「あの、僕……」

「まだ少し薬の影響で頭がぼーっとしているかしら? ゆっくりと思い出してみて。目を瞑る前に何があったか、覚えてる?」

「えっと……」

優しく穏やかな声で話しかけられて安心する。
何があったんだっけ……そう考えたら、スーッと記憶が表れた。

「あっ、ここ征哉さんのお家ですか?」

「ふふっ。そう。思い出してくれてよかったわ。ここが今日からひかるくんのお部屋よ。欲しいものがあったらなんでも言ってね」

ここが僕の部屋……。
そう言われて、キョロキョロと辺りを見回すけれど、寝転がっているからあまりよく見えない。

「ああ、そうだった。ごめんなさいね。少し身体を起こすわね」

「えっ、でも――わっ!! 何?」

僕を抱き起こすなんて……と思っていたら、ウイーーンと小さな音が聞こえて、僕の身体が起き上がってくる。

「ふふっ。これを押したら起き上がったり、横になったりできるの。だから、私にもできるわ。ひかるくんも好きに使ってちょうだい」

「わぁー! すごい! こんなに便利なものがあるんですね」

このふかふかのベッドだけでもすごいと思ったのに、まさか自動で動くなんて……。
凄すぎる!

「わっ! 広いっ!!」

パッと目の前に目をやると、さっきまで僕がいた病院の個室よりもずっと広い部屋に驚いてしまった。

「あの、こんな広い部屋を僕が使うなんて勿体無いですよ」

「ふふっ。気にしないでいいわ。これからみんなで集まるようになるんだから」

「えっ? それってどういう意味ですか?」

「ここで、みんなで食事もするし夜は隣のベッドで征哉が寝るから、広くても気にならないと思うわ」

「ここで食事? 征哉さんが隣で?」

「ええ。せっかく一緒に暮らせるようになったのだもの。ひかるくんと一緒に食事したいわ。今まで征哉が仕事で遅い時は一人で食事をしていたの。一人で食べるのはやっぱり味気ないものね。だから私、ひかるくんが来てくれてとっても嬉しいの」

貴船さんのにこやかな笑顔を見ながら、征哉さんに貴船さんの話し相手になって欲しいと言われたのを思い出した。
そうか、こんな僕でも役に立てるんだ。
そう思ったらすごく嬉しくなった。

「はい。僕も嬉しいです。貴船さんといっぱいお話ししたいです」

「ふふっ。ありがとう。嬉しいわ。せっかくだから、一つだけお願いしてもいいかしら?」

「はい。僕にできることならなんでも言ってください!」

「一緒に暮らすようになったら、もう家族も同然でしょう? だから、私のことはお母さんか、名前で呼んで欲しいの」

「えっ……」

思いもかけない言葉に僕は驚いてしまった。
けれど、貴船さんはさらに続けて、

「だって、征哉だけ名前で呼ばれてずるいもの。私だけ『貴船さん』だなんて他人行儀だと思わない? だから、征哉と同じようにお母さんと呼んでくれるか、言いにくいなら、未知子と名前で呼んで欲しいの。ひかるくん、どうかしら?」

と笑顔で言ってくれる。

僕を、家族だと思ってくれるんだ……。
すごく嬉しい。

僕がずっと欲しいと思っていた家族の中に入れてもらえるなんて……。
――っ、涙が出そう。

「あ、あの……じゃあ、『お母さん』と、呼んでも、いいですか……?」

「ええ、もちろんよ!! ああ、ひかるくんのような可愛い息子ができて嬉しいわ!!」

「――っ!!! お、かあ、さん……っ!!」

ギュッと優しく抱きしめられて、僕は必死に我慢していたけれど涙が止められなかった。

ああ、これがお母さんの温もりなんだ……。
こんなにあったかいものだったんだな。
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